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予言の島 澤村伊智著 角川ホラー文庫(2021年6月発行)

これはね、とても紹介しづらい作品です。何書いてもネタバレになって、未読の方に迷惑になるんですね。作品の概要としてはこんな感じ。

瀬戸内海の霧久井島は、かつて一世を風靡した霊能者・宇津木幽子が最後の予言を残した場所。二十年後《霊魂六つが冥府へ堕つる》という。天宮淳は、幼馴染たちと興味本位で島を訪れるが、旅館は「ヒキタの怨霊が下りてくる」という意味不明な理由でキャンセルされていた。そして翌朝、滞在客の一人が遺体で見つかる。しかしこれは、悲劇の序章に過ぎなかった……。
すべての謎が解けた時、あなたは必ず絶叫する。傑作ホラーミステリ!

文庫裏表紙

はい、間違いなく絶叫します。そしてもう一度内容を確認したくなります。しかし、伏線が全編にわたっているため、結局すべてを読み返すことになります。
そう、まぎれもない本格ミステリです。

ただ、この作者にありがちな「人間が一番怖い」という点では、まさしくホラーです。

ミステリとホラーの融合、というのは作者のデビュー時から言われていますが、ミステリの概念とホラーの概念をここまで完膚なきまでに打ち壊し、そのうえで、完璧に融合させてしまった作品を他には知りません。

融合さが完璧なため、ラストシーンになった時に「は?」となって、思考停止状態に追い込まれました。状況を把握するまでに結構時間がかかったのを覚えています。

そういう意味ではとても難しい物語でもあります。この作者に対して「爽やかな読後感」を求めることが間違っていることは重々に承知していますが、それでもやっぱりなんだか「ずん」と重いものが心に残る作品でした。傑作です。


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