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奇譚蒐集録~弔い少女の鎮魂歌 清水朔著 新潮文庫NEX(2018年11月発行)

沖縄に伝わる葬送儀式をベースにした民俗学ミステリです。装画でみるとホラー系かとも思いますが、内容は結構ミステリしていてこんな感じ。

大正二年、帝大講師・南辺田廣章(みなべだこうしょう)と書生・山内真汐(やまうちましお)は南洋の孤島に上陸した。この島に伝わる“黄泉(よみ)がえり”伝承と、奇怪な葬送儀礼を調査するために。亡骸の四肢の骨を抜く過酷な葬礼を担う「御骨子(ミクチヌグヮ)」と呼ばれる少女たちは皆、体に呪いの痣(あざ)が現れ、十八歳になると忽然と姿を消す。その中でただひとり、痣が無い少女がいた。その名はアザカ。島と少女に秘められた謎を暴く民俗学ミステリ。

文庫裏表紙

主人公であると思われる「南辺田廣章」は、探求心が強く、舞台となった時代にはあまりそぐわない平等思想を持った好青年。ドラマ化されたときには、今はやりの俳優さんが演じてくれそうな人物です。

物語としては、物語が進んでいく中で順番に「呪いの痣」や忽然と姿を消す少女たちについての論理的な結論が提示されていくため、ミステリといえども「謎多き物語」という感じはしません。ただ、語り口がうまいのか、キャラ造形の妙なのか、ミステリーともホラーともつかない雰囲気を楽しめます。

帯には作家の恩田陸氏が推薦をよせています。曰く「民俗学好き、ホラー好き(プラス美少年好き)なあなたを満足させる新シリーズ」とのことですが、美少年要素がプラス、というほどではありません。ちょっと"ふりかけ"られた程度かな。個人的にはちょうどいいですが。

今までの「民俗学」といえば、なんか怪異や怪物の登場があるか、伝承の真実をさぐる、みたいなのが多いと思うのですが、これは舞台こそ異世界な感じがするものの現実に立脚した物語としてとても楽しめました。

続編もあるようです。読むのが楽しみですね。


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