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異形コレクションLIII ギフト 井上雅彦監修 光文社文庫(2022年4月発行)

復刊後、順調に販売されています。今回で53冊目となりテーマは「ギフト」でした。
前回の「狩りの季節」と比べるとイメージの広げ方が多彩で正直に言うと読みにくい話も多かったです。ただ、それこそ「異形コレクション」という気もしますね。様々なスタイルを持つ作家さんと出会えるのが楽しみの一つでもありますから。

それでは、収録順に「一言感想」を

贈り物(深緑野分)
内戦がテーマですが、あまりにも時勢にマッチしすぎてそれが怖かったです。

肉芽の子(津久井五月)
まるで赤ん坊の手足のような芽をもつ「パナ」という人工植物を巡る物語。想像したら気持ち悪くなった。

もう一つの檻(飛鳥部勝則)
ミステリ作家らしい展開とそこにからめた「雪女伝説」が作者らしいアブノーマルな雰囲気を出しています。

鬼 または終わりの始まりの物語(澤村伊智)
改めて言うまでもないけど、何書かせても面白いなぁ。ただ登場人物に「編集者」が多いような気がするのはなぜだろう

二坪に満たない土(木犀あこ)
30代ぐらいの女性が主人公かと思って読み始めたら実際には60代女性だった。今の60代は若いなぁ。

ラズベリー色の天幕(井上雅彦)
「ショートショートのオムニバス」と本人が書いているので、そう思って読み始めたのだが、結構意外な展開だった。

Cursed Doll(最東対地)
すみません。最初の数行であきらめました。自分にはあいません。

アトムの子(平山夢明)
類似タイトルの有名SF作品へのオマージュのようだが、SFっぽいけれどもやっぱり「平山夢明」だった。これもちょっと個人的に合わない作品。

可不可(黒史郎)
怪談作家としてしか知らなかったけれども、こんな不条理な展開をすらすらと読ませてくれるところはすごい、と作者の力量を再認識させられた作品

痛妃婚姻譚(斜線堂有紀)
この作者のこういう世界観は大好き。兵士などの「痛み」を代わりに請け負う代わりに豪奢な生活をしている「痛妃(いたひ)」とその身の回りの世話をする「絢爛師」との美しくも悲しい恋物語。

死にたがり王子と人魚姫(空木春宵)
いや、これは最新テクノロジーを駆使したSFだわ。テクノロジーは最新なのに、発送は前世紀SF。というか、最近の深夜アニメにありそうな世界。おもしろいぞぉ。

男娼チヒロ(竹本健治)
すみません。最初の数行であきらめました。自分にはあいません。

封じられた明日(上田早夕合)
怪異との対決ものとして、とても正統派な作品。ほかの作品をさがして絶対に読もう!と思わせられました。

おまえの輝く髪を(篠田真由美)
初期の建築探偵はおもしろかったけどなぁ

L’Heure Bleue(黒木あるじ)
実話系怪談の語り部として有名なだけあって、朗読してもすんなりと情景が浮かんでくるような作品。ロマンチックとホラーとがうまくかみ合っている。

今回の収穫(新たな出会い)は2名でしたね。これがあるから、このシリーズはやめられない。ただ本棚がいっぱいにはなりますが。


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