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読書遍歴

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自分が読んで、面白かった!ぜひ読んでほしい!という本をできる限りネタバレなしでご紹介しています。
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2023年7月の記事一覧

知られざる日本の恐竜文化 金子隆一著 祥伝社新書(2007年8月発行)

古書店で懐かしい名前を見つけてつい購入してしまいました。本書は「恐竜」について書かれているものではなく「恐竜ブームの虚像と実像」について様々な観点から(といっても主にオタク文化から)書かれています。 概略は次の通り。 今(2023年)から考えると16年ほど前の執筆なので、現状とは違うんだろうな、と思いつつ読み始めましたが、なんだか昨日執筆されたような印象をうける内容でした。変わっていないんですね。 執筆時点では「福井県立恐竜博物館」もオープンしていましたので、恐竜の新発見は

特撮の地球科学 古生物学者のスーパー科学考察 芝原暁彦、大内ライダー著 イースト・プレス(2021年4月発行)

映画などで描かれている内容を「事実」としてとらえ、それを様々なジャンルの科学の面から解説するという書物はそれこそ「山のように」存在します。 ブームのきっかけとなったのは「空想科学読本」シリーズだとは思いますが、それ以前にもサブカルチャー的書物の中でコラムとして記載されていたり(といってもその文章は柳田理科雄氏が書いていたりするのですが)、宇宙物理学専門の福江純氏が科学的見地でSF作品(主にアニメかな)を解説したりしていて、結構な歴史があります。 そんな中、「地球科学」という

人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか 中川毅著 講談社ブルーバックス(2017年2月発行)

本書はとあるオーディオブックのサイトで聴き放題に入っていたので何気なく聞いてみて「面白いじゃん」と思ったのであえて購入したものです。 本書は人類が生き延びてきた数万年の気候変動を福井県の湖の湖底に眠る資料が読み解き、気候変動のメカニズムを読み解いています。 新しい知見に満ちた傑作でした。 概略としては次の通り。 本書は全6章から構成されています。 プロローグ──「想定」の限界 ○年に一度という表現と気象災害における「想定外」という言葉について古気候学の博士らしい冷静な表現

ヒトはなぜ死ぬ運命にあるのか 生物の死 4つの仮説 更科功著 新潮選書(2022年5月発行)

本書は新聞の紹介欄で見つけて以来、しばらく探して購入しました。なかなか新潮選書が並んでいる書店が近くにないんですよね。 著者の著作の中には「生物の死」について触れているものもありますが、今回はまっこうから「生物の死」に取り組んだものになっています。 本書では「生物の基本形は不死」であるとしながら、多細胞生物になり体中に複雑な機構を有する我々ヒト(をはじめとする各種生物)が死ぬようになった理由の仮説を4つ紹介しています。 いつものことながら、「断定的に」これが正しいもしくは