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それは涙の出るクラッカーの紐

つらいことがあるとこの曲を思い出す。

できれば始めから聴いてほしい。

KAB.さんの「生活」。

「皮肉だけれど 何があっても 何一つ 無駄な物はない」

という歌詞がある。

この歌詞に何度も励まされ、何度も自分を納得させてきた。

今のこの状況は、無駄じゃない。

どんなことも無駄じゃないと。


あの日、化粧をしている最中に、鼻の穴の奥の方から白く突き出している毛、白い鼻毛を見つけた。

鏡に近づき、あごを上げ、鼻の穴を大きく広げ、確認する。

見間違いじゃない、確かに、いる。

ついにここまで来たか。

老いは純白のドレスに身を包み、突然現れる。

清純なフリをして、ぐっさりと心に老いを撃ち込んでくる。

いつもならこんな白い毛、漆黒の闇に閉じ込める液体を塗り込むところだか、今回は居場所が悪い。鼻の穴だ。

抜くしかあるまい。

鼻毛よ、白い鼻毛よ、身体にとって大切な役割をしてくれているのに申し訳ないが、ここは許せ。

ピンセットを手に鏡に向かう。

悲しみはない。

老いについては、現実を受け入れている。

あごを上げ、鼻の穴を大きく広げ、ピンセットをそっと差し込む。

狙いを定め、しっかりと挾み、

えいっ。


ったーーーーーーーーーーい!



鏡に映る目はうるうると真っ赤、涙は勝手に溢れてなかなか止まらず、鼻水も垂れてきた。

これも。

これも、無駄じゃないのかっ。

「こうして生活は流れていく たとえ後悔する出来事があったとしても」

いい曲だ。

大好きだよKAB.。

後悔はしていないよ。


この痛みがこれきりではなく、毛髪サイクルで繰り返されるであろうことに気付き、また涙が滲む。

この先私はどれだけピンセットを握りしめながら泣くのだろう。





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