【短編小説】今夜は鍋。 その①
今夜は鍋だ。
晩御飯が鍋と聞いて、残念に思う人もいるだろう。
そう。私もその一人だ。
しかし、決して嫌いなわけではない。
我が家では鍋の日は、壮絶なバトルが始まるのだ。
父・母・姉・兄、そして私の5人家族だ。
父親はプロ野球候補のバリバリの元スポーツ選手。
母親は鍋の日はひたすら食材を運ぶ係となる。
姉は関西でベスト4のテニスプレーヤー。
兄は高校日本代表候補のラグビー選手。
そして、私は肩書のないラグビー選手。
さあ1ターン目が始まる。
母親が昆布でだしを取っていた。