HPVワクチン理解度調査(厚労省)の結果まとめとメディア論調比較

2019/8/30の厚生科学審議会でHPVワクチンの理解度について厚労省が行った調査の結果が報告されました。資料はこちら↓
https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000541822.pdf

これについて各メディアが報じていたので、1つずつ紹介するより比較した方が俯瞰できるかなと思って、比較してみました。
その前に、肝心の調査結果のまとめから。

結果

・要点のピックアップ
→個人的な感想

のレイアウトで書いています。

① リーフレットの活用状況

調査対象:全1741自治体

調査時期:2018年10-11月(2018年8月時点の状況を回答)

・70.9%(1235)の自治体がリーフレットを全く活用していない。(配布・設置・web掲載いずれも)

→理由を知りたい。理由は調査項目にないので不明。。

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・5.6%(97)の自治体が個別に情報提供

個別に情報提供している自治体で接種率がどうか知りたい。『97』と聞くと多く感じるけど、実際には全自治体の5.6%

② 国民の意識調査

調査対象:調査会社に登録している一般国民

→調査会社に登録している時点で、それなりに意識高い層であるバイアスは否めない。

・予防接種を受けるときに意見を参考にするのは、1位「かかりつけ医」、2位「母親」

→実は、2位の「母親」と同じくらいの割合の人が「誰の意見も参考にしない」
つまり、通知がきたものとか、毎年のインフルエンザの予防接種など、うつものだと思って特に深く考えずにうっている人がそれなりにいるのかもしれない。

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・10代の女子は「母親」が1位で75%

→圧倒的に母親の意向の影響力が大きい

・10代女子の母のうち、HPVワクチンの意義・効果を聞いたことがあるor知っているのは84%。

10代女子の母のうち16%は知らない、というのはけっこう由々しき事態。

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・HPVワクチン接種後に起こりうる症状について、10代女子の母のうち22%は「知らない」

→副反応疑い症状について知らなくても、うちにいくわけではない、つまり、おそらくそもそもHPVワクチンのことを知らない保護者が相当数いる

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・HPVワクチン接種後に起こりうる症状について、10代女子のうち58%は「聞いたことがあるor知っている」

10代女子にもかなり知られているってことは、やっぱりその不安を払拭してあげないといけない

・HPVワクチンの意義・効果・接種後に起こりうる症状についてどこから情報がほしいか、10代女子の母の中での1位は「メディア(テレビ新聞雑誌)」、10代女子の1位は「学校」。

やはりメディアの影響力は大きい。学校での教育も大事だけど、結局、母親の意向が強く影響することになるのだから、その母親への影響力が大きいメディアの役割は絶大

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・HPVワクチンを「接種したいと思わない」のは9%、あとは、決めかねている、検討したい、など。

→うたない、と決めている人は少数派だけど、結局、迷っている多くの人がうちにいかないままになっている

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③ 『リーフレットのわかりやすさ調査』

調査対象:定期接種対象年齢親子へのグループインタビュー(10組)

親の認知経路:新聞、テレビ
接種対象者の認知経路:母親、学校の授業

→やっぱりメディアの影響力は大きい

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■意見から抜粋

・各家庭で判断してください、という印象、母親の責任をすごく感じる
→自己責任で、という印象だと、だったら検診をちゃんと受けとけばいいかな、と思ってしまいかねない。

・ワクチンうってもがんになる可能性があるなら、定期的に検診に行った方がいい。

異形成のfollowや治療が軽視されている。コンジローマのことが伝わっていない。

・資料だけでは決められない。

→刷り込まれた不安を払拭するには、今のリーフレットだけでは不十分。リーフレットの改善で解決するのか、もしくは、信頼しているかかりつけ医や学校からの説明が必要なのかもしれない。

厚労省のまとめ

・接種対象家庭にちゃんと情報を届けるべき
・リーフレットをより分かりやすく改訂するべき

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メディア論調比較

■ どちらかというと前向き、決して否定的ではない印象

● 産経新聞 『「意義・効果しらない」約4割 勧奨中止の影響拡大か』

情報得られる環境づくりが必要

https://www.sankei.com/life/news/190830/lif1908300033-n1.html

● 毎日新聞 『対象の4割が接種ためらう 情報不足で』
https://mainichi.jp/articles/20190831/k00/00m/040/047000c

● 朝日新聞 『接種「決めかねる」4割』
厚労省「情報が伝わっていないことは残念だ。周知の方法を考えないと。」
https://www.asahi.com/articles/ASM8Z5FDSM8ZULBJ004.html?ref=rss

● 中日新聞 『97自治体が独自通知』
中部地方で個別通知している自治体を調べて掲載
最後に、健康被害についての裁判が続いている旨の記載もあるが、全体として、「将来の不利益とならないよう情報提供の必要がある」「情報提供は予防接種行政の最も重要なこと」といった前向きな意見を掲載。
https://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2019083102000062.html

→厚労省の報告では、個別通知している自治体名については公表されておらず、私もそれを知りたいなと思っていたので、そこを独自に調査して掲載しているあたり、メディアとしてすばらしいと思う。

● m3 『リーフレット 7割の市町村が利用せず』
結果を詳細に掲載
https://www.m3.com/open/iryoIshin/article/697114/

● 日経メディカル 『個別の情報提供 約6%の自治体が実施』

結果を詳細に掲載

https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/201908/562087.html

■ 否定的な印象

● NHK 『4割余「接種決めかねている」』
・有効性(減らせる死亡数のみ)と副反応疑い報告の人数紹介
・HPVワクチンと副反応との因果関係は否定できない
・厚労省は副反応の一部しか紹介してない、ほかのリスクも周知すべき、と原告団が訴えた
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190831/k10012057921000.html?fbclid=IwAR0vl1ZNnZLc5io9JpdW7rsQxEqfjpQhIHG8YmGQIj8TCYh2NIVkpDaX-ew


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