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神戸のイラスト教室がすごかった

 久しぶりに大阪市の西天満にあるフレンチ洋食【キッチンコトコト】へ食事に出かけたら、
いつの間にか店内がおしゃれな絵でいっぱいに飾られていた。

壁の絵。ほかにもカウンター、入口などに!


 おしゃれなマダムに力強そうなシェフ(オーナーか??)、店先でご飯をもらうワンコの絵。
美味しいけれどスタッフが男性陣なので、どこか角ばっていた店内の雰囲気が柔らかくなっていた。お会計時に「絵はどうされたのですか?」と聞いたらシェフ、メニューをとり出して

「このグラタンを発案した食いしん坊アートディレクターの、吉本さんが描いてくれたんです。」

【壁の絵の人】と書かれた紹介文を読んでみた。アートディレクションが主な仕事だが
カルチャースクールでも教えているではないか。早速取材の申し込みをしてみた。

時間いっぱいに課題の評価や解説をする吉本さん
生徒さんはイラスト教室と絵本教室合わせ20名ほど

 しゃべり続けてもうかれこれ1時間ほどになるが、吉本さんは水を一滴も飲んでいない。

「イラストレーションの線描を上達したいなら、ドローイングの練習をもっとしてください。以前もお伝えしたアンリ・マティスの線画はとても参考になります。現代イラストレーターの見本なら、安西水丸さん。村上春樹著作装画でもお馴染みの線描が味わい深く、唯一無二に静物画はとても参考になります。」

 隔週土曜日、神戸市内の某所にて行われているイラスト教室。
18時から19時30分の1時間半の中でホワイトボードの前に立つ講師の吉本義巳さんは、
生徒が各々に絵を完成させている間に提出課題の作品評価をどんどんと進めていく。
ある生徒が朝の連続テレビ小説『舞いあがれ』のワンシーンを描いて提出していた。

「いいですねぇ。秋月さん(登場人物)の表情とその心を活かした色使いが上手です。
投稿は?インスタでされたのですか、そうですか。朝ドラの絵を投稿するなら、インスタよりTwitterにしましょう。社会的なことへの反応がいいのは断然Twitter、リツイートされて一躍話題になることもありますから。」

 タイポグラフィ付きのイラストを提出した生徒には、実際にそれを持ち込んだときにアートディレクターや編集者がどんな反応をするのか。文章力もあるか、イラストライターとして使えるか見ている、など具体的なコメントをしており、かなり実践的だ。

 カルチャースクールのイラスト教室って時間がきたら画材を取り出して、和気あいあいとした空気の中で色を塗ったりしていくものだと思っていたのだが…。
これはもはや大学の講義ではないか。授業料に見合わないのではないかと心配になり、思わず聞いてみたら意外な答えが返ってきた。

「学びたい気持ちが同じなら、教える内容に区別はしません。」

と、きっぱり。これが好評のようで既に20人の生徒がついている。
短い授業の中に、絵を描くときのコツ以外に美術書を購入するときのポイントやその土地土地の民芸品の解説などもあり、美に関する話題はどこまでも豊富だ。動物図鑑は有名美大の日本画科や洋画科出身の画家が描いていたなんて、今日初めて知った。

 何だろう、と気になっていたホワイトボードの前にある紙袋。これには授業前に寄った古書店で見つけた貴重なネタがたくさんつまっているようで“定価で買ったら倍くらいしますよ”と、嬉しそうに生徒に見せたのは、小さなニューヨーカーのカトゥーン画集。目については買ってしまうからアトリエも仕事場も本だらけなのだとか。

カトゥーン画集をはじめ、画集の紹介中


 京都に一昨年、町屋のアトリエとデザインスタジオを完成させた。そこで仕事に追われながら時間を見つけては欠かさず絵を描いている、とのこと。
町屋の方の一階には、アンティーク家具と受け継いだ骨董を並べた応接間。二階の広い和室には季節の屏風や行事に合わせた軸が飾られ、豊かな日本の四季を感じられる。
デザインスタジオはまたがらりとイメージが変わり、スタッフとの作業や取引先との打ち合わせがしやすいよう天井の一部を抜いた開放的な空間にしてある。モダンとナチュラルさのバランスが良く、さりげなく置かれた陶器やオブジェ、アメリカンキャラクターフィギュアが楽しく、窓際にある生き生きとした緑たちが目に優しい。
さすが、芸術の都である京都のアートディレクターはモダンデザインにも、古き良き日本美術にも精通している。

アトリエ一階の応接間
舶来品や洋画がたくさん
アトリエ二階の和室
四季を楽しむ設え
アイデアが次々に出そうな空間
珍しいオブジェなども



「お気に入りの空間では作品づくりもはかどります。」

 イーゼルのおかれた作業部屋にはたくさんの作品が並べられていた。今年中に開催予定の個展の作品群、とのことだった。

アトリエの作業室にあるコラージュたち
垢抜けた色づかいが海外のインスタグラマーから高評価


「コロナ禍も終わってきたことですし、そろそろこのコラージュなどの展覧会をやろうと思います。」


【吉本 義巳さんについて】
designstudio paperweight株式会社 代表取締役
クリエイティブディレクター・アートディレクター・ライター
グラフィックデザイナー・イラストレーター
京都の美術大学を卒業後、大手広告代理店や百貨店でのデザイン経験を活かしデザイン全般の業務に携わる。

また、地元京都の美術大学・芸術大学・各種専門学校・神戸のカルチャースクールでも教鞭を執る。
 吉本さんの作品は、インスタでもご覧頂けます!
https://instagram.com/paperweight_director?igshid=YmMyMTA2M2Y=

【そのほか】
西天満キッチンコトコト https://tabelog.com/osaka/A2701/A270103/27011766/
お店の皆さまがとても暖かい☺️
地元食材を取り入れた人気ビストロです!

神戸カルチャーKCC http://k-cc.jp/
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