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青春18きっぷの思い出
本当に少しだけ、ひとりきりで旅をしている。
明日までの青春18きっぷで滑り込んで電車に乗った。
電車に乗ることを目的にした旅。車窓を見ながらゆっくり過ごしたいと思った。
もうすぐ3つの県を跨ぐところ。
久しぶりに青春18きっぷを使ったら、思い出すことがあった。
我が家のこどもたちは、小学校卒業時は母と、中学卒業時はひとりで旅をするというしきたりがあった。有料特急は使わず、青春18きっぷで行けるところまで行くというルールがついた旅だった。
中学卒業時、上の兄は北海道へ、下の兄は広島と四国へ行った。ユースホステルに泊まって同部屋の外国人と話したとか、こんなおいしいものを食べたとか楽しそうに語る兄の話を聞いて、わたしも自分の順番をすごく楽しみにしていた。
1人でというところがかっこよくて、羨ましかった。
私は絶対に大阪に行くと決めていた。その頃よく聴いていたインディーズユニットの大阪のライブに行って、コブクロがストリートライブをしていた商店街を巡ることを楽しみにしていた。
いま私が25歳なので、中学を卒業したのがちょうど10年前。10年前の3月。大きな震災があり、わたしの一人旅は中止になった。
兄2人は本州を飛び越えて旅行をしたのに、わたしが行けないこと、頭ではわかっていてもすごく悲しくて悔しかった。
ただ、実際のところわたしが1人で宿泊を伴う旅行をすること、もともと母親は心配だったらしい。
諦めきれなかった私は、高校在学中も旅行に行きたいことを伝えた記憶がある。それが無理なら、1人でコブクロのライブに行きたいとも伝えた。
子供時代の記憶で兄2人と自分への扱いに不平等さを感じたことはあまりないが、
そのとき初めて、
「女の子だから、心配だから諦めて」と言われたことを覚えている。
あれは悔しかったな。なんで私が女だから旅行を諦めなきゃいけないんだよと思っていた。
もちろん私が女だから悪いわけではないし、母が悪いわけでもない。10代の女が1人で歩いていると危険な目に遭う確率が高い世の中が、そういうことをするひとが悪いのだ。
女に産まれたことで兄と区別された経験はほとんどない。同じように育てることを母は意識してくれていたと今思い返しても感じる。だからこそこの一件、よく覚えてる。
鈍行電車だけで遠くに旅をした兄2人がすごくすごくかっこよく見えて、悔しかった。
しかし、今の旅の途中で思う。
なかなか大変だ、この旅。
同じ姿勢で座っていると肩は凝るし、足は浮腫むし、腰も痛くなる。
ラジオを聴いたり、本を読んだり、昔のCDを聴いたり、景色を見たり。大人になって色んな文化を知った私には、1人で過ごす時間自体はそこまで苦痛じゃないけれど、兄たちはどう過ごしていたんだろうな。見知らぬ土地で家が恋しくなったりしたのかな。
あの頃の私は大阪までの6時間、電車に座っていられたのかな。
兄たちはもっと長い。尊敬する。どう過ごしていたか今度聞いてみよう。
もうすぐ目的地に着く。
今日の一曲
馬場俊英/明日に咲く花
橋を越える 電車の窓から眺めた川沿いの土手
早く咲く花 遅く咲く花
それぞれの色で輝くんだよ
ひとつだけのreason
風の中で揺れる想い 両手にはまだ何もないけど
歩きはじめた夢の蕾 君の中で膨らんでいるんだ
うまくできないことばかりの毎日でも
諦めないで 君は
岸辺で揺れていた 明日に咲く花
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