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第6期V名人戦自戦記 電子れいず-葛山わさび (V-S鯨組第5試合)

こんにちは。将棋系Vtuber 葛山わさびです。

普段はYoutubeやTwitterで将棋の話をしている…とも言い切れないぐらい配信頻度が落ちています。がんばれ!

今回はVtuberのVtuberによるVtuberの一番を決める将棋棋戦、V名人戦にて指した将棋の振り返りです。
やっと将棋の文章が来たよ!

お相手は電子れいずにゃん、中継香坂まくり、聞き手心七のなの手厚い布陣、ということで配信としての詳細は中継配信やらを見てください!
うなじ開示待ってますげふんげふん

ここでは取り急ぎの将棋の内容に関する振り返りにとどめます。
れいずにゃんは戦型の球種がかなり多いので予想には苦しみました。
一応予想は立てていましたが詳細に詰めた定跡、対策は用意できていなかったので、ほぼ出たとこ勝負というか日頃の蓄積を信じて普通にやるスタンスでした。

はい先手中飛車!これは予想の2番手でしたが1番手とはかなり僅差。
①角換わり早繰り銀
②先手中飛車
③相掛かり

の3択と思っていて、①③はれいずにゃんと通信将棋で指したことあり、②はV棋戦の棋譜ではやってるところを見たことないのですが、中継席にのなちゃん(れいずにゃんによく将棋を教わっている。中飛車を指す。めっちゃかわいい)がいること、まくりV名人の解説も対抗形のほうが冴えるだろう…という読みで、①②はほぼ横並びの予想。的中といってもいいね!

とはいえ、先手中飛車もいろいろあるし、わたしの先手中飛車対策は△43金型の穴熊でほぼ固定されている(固定しやすいように手順を作っている)ので、狙い撃ちは可能。用意があるならどこかで初見の手が来るので、そこで正しい方針を出せるか?が問われるところでした。

知らん手来たな…

最序盤でなにかしら工夫をしてくると思っていたし、するならこの▲55歩保留だとは思っていました。イメージはあったけど、具体的な手順までは予想できていなかったし、なんなら▲36歩の時点でw-book_white(葛山わさびが継ぎ足し育てている後手番定跡)は抜けています。
▲55歩保留は定跡手順に取り込むのがいろいろと大変なので、脇道に逸れるとこんなもんです。ここからはハイパー自力が試される展開!
▲37桂の意味としては、無策に△43金から潜ろうとすると▲25桂がヒットするかもよ、という。

これは東1局18000放銃、終戦です

いくらなんでもこうはならんけども、△33角上がる展開でしっくりくる駒組みが見えなかった…
明らかに相手の研究が入っているコースで、さすがにこれを喰らいにいくのはアホだな~と思ったし、▲55銀ぶつけが残る状態で組み合うのはのちのち評価値が溶けやすい印象を経験から持っていたので、▲36歩を見た瞬間に穴熊はほぼ切り捨てました。

▲48金と▲55歩を両方指されると仕掛けの権利を失う

▲36歩▲37桂を駒組みとして咎めに行くならこれかなと。後手ノーマル振り飛車からこの手の駒組みには斜め棒銀で居飛車が優位を取れる(右桂を跳ねるメリットを消せる)ので、それを応用しつつ仕掛けの権利を保ってどうか、って感じですね。
好機に△65銀or桂の仕掛けが成立すればリードできるイメージがあったのですが、その周辺の条件がいまいちわからず…形で指していた手自体はそれなりだったのですが、背景の読みが貧弱でしたね。

その弊害が出たのが△94歩~△44歩。
ここでは△86歩▲同歩△65銀の仕掛けが成立しており、後手がはっきり(駒組みの途中で溶ける可能性のない、戦況として確立された)優位を取れた公算が大きいです。

桂を取りに行く手より△86飛や△88角のほうが厳しいので桂は死なない=後手よし
こういうので一回後手を引いても安定してる、という主張のために金無双にしたはずなんですが…

今見るとなんで行かなかったか理解に苦しむところですが、対局中は△65桂の成立条件や▲58/78金を指させて持久戦に持ち込んだ駒組みの先のことばかり考えていました。5筋位取り中飛車の残像が残っていてたいへんよくない傾向です。
時間を使って(これはいいけど)かなり的外れな手を読んでいて実際によくない手を選んでいるので、ここでの思考は折檻ものですね。
そもそも先手から5筋での仕掛けがある状態で組み合うのは不満という前提で金無双を選んでいるのでここで仕掛けを掘り下げていないのは初見で42金上を指してくれた数手前の葛山わさびへの裏切り、その序盤センスを踏みにじる冒涜です
ここで行かないなら△42金上以下の方針を選んだ意味が全くないし、事実△43金右の時点でわたしの序盤を形作るdlshogi(配布版)の評価値は互角まで溶けています。組み合ったら不満って言ったやろがい!

形勢は互角で耐えてるけど、葛山の思想上先手中飛車相手に互角の開戦になってるのは失敗

ということで5筋からの仕掛けを許してしまい、不満だな~と思いながら(実際不満)なんとかバランスを保とうとしているところ。
手癖で△65金とぶつけてしまったのですが、これは負けたら敗着でした。
普段指している△43金型穴熊対高美濃のマッチアップならこれで評価値は400ほど出るのですが、互いの玉型、5筋のいじり方などの条件が悪すぎます。この判断の甘さは斬首もの。

▲54歩を伸ばされて事の重大さを悟りましたが、もう修正がききません。
本譜の順も、△58歩を入れずに角を見捨てて攻め込まれた順も後手が勝てない将棋。評価値上はまだ+200程度ですが、こちらが間違えたらすぐ広がるし間違えなくても徐々に広がる+200です。

こういう角得vsと金の取引は玉型差で爆破されている
△65~77金なんかやらんほうがええのです

▲54歩の時点でこういった展開を回避するすべがないので、△65金は悪手、△53金から駒組みが正着だった…ということになります。
ただ、わたしの能力では60秒でそこの判断をすると5割以上は間違えていたポイントと思うので、ここの記述をもって修正とします。
こういう展開は実力がいくらあっても中飛車がはっきり間違えなければまくりようがないので、評価値上居飛車が有利という前提で始まったものを互角に溶かすのはかなり罪が重いのです。そういう観点で先手中飛車はつえーし、やはり仕掛けなかった自分が悪い!

以降は将棋が一度はっきりと終わっているのであまり根を詰めて検討してもしょうがないというか、勝負で勝ちにいきました。
ありがたいことに葛山の将棋はロジカルに積み重ねるところが強いと言っていただいたり、参考にしてもらうこともしばしばあるのですが、失敗することもあるし失敗したら論理じゃ勝てねえ将棋になる、そういうこともあるというのは肝に銘じておいていただきたい。
そんな時にこそ、プレイヤーとしてのわたしの真価が問われているのかもしれませんね。

負けと知りつつ指していた感じですが、何度か際どい手を通して逆転に成功した後は腕力にまかせたトライで勝利。86手目で入玉、114手で終局はなかなかない記録ですね。

憤怒の玉上がりの掛け声「ふんぬ!!!!」
単に▲44角で負けなのはわかっていたけど他に勝負になりえる手がない
▲52飛成以下は△63玉から入玉狙い、筋力ですべてを解決しにいくスタンス


何手か通さなきゃいけないところが通ってこれで入玉できそうな感じに
いかに相手に盤上/思考の圧をかけるかも勝負のファクター


トライ成功の図
入玉した手数では葛山史上最短かも



Vtuberとしてデビューしてからはお行儀のいいというか、論理的に整然と将棋を勝とうとする思想を前面に押し出していて、もちろんそれが一番いいとは思っているのですが、それだけじゃ勝てない将棋はどこかで必ず出てきます。そういう意味で、わたしが勝負師の顔をはじめて見せた対局ともいえるかもしれません。

これまでV棋戦などで将棋を負けるときはわりと淡白に「あ~負けだな~~」というテンションで指していて、実際そう見えていた気がするのですが、今回はそうでもないというか、だいぶ違うなという印象を与えられたのではないでしょうか。

この文は対局直後のキマった脳で書いていますが、V名人を今期獲るつもりだというのは素面でも堂々と言える目標です。いろいろ背景、ここに至るまでに考えたことはあるのですが、それが自分にとっても、V棋戦はじめ将棋を指すVtuberたちの活動にとっても良いことになると信じているし、そうするために日々過ごしています。モチベーションはかなり高い!
踏ん張りが実ってこの苦しい将棋もなんとか拾えたのには、そういった要因もないとは言い切れないですね。

これまで/これから対局する同リーグの方々、香坂まくりV名人などに恨みなどはまったくないしむしろ好きな人ばかりなのですが、そういうわけで獲らしていただく所存ですし、成算はそこそこにあります。
次の対局はたぶん10月半ばになると思います、がんばります。

最後になりますが、良かったらチャンネル登録やらしていただけるとわたしが喜ぶのでよろしくお願いします。代わりと言ってはなんですがみなさんが楽しくなるようなコンテンツをお出ししていきたいですね。

本当の最後に!
対局相手の電子れいずさん、中継配信を担当いただいた香坂まくりさん、心七のなさんはじめV名人戦関係者、視聴者の皆さんに感謝申し上げます。
ありがとうございました。
ではまたいずれ!


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