『若者のすべて』だけじゃねぇのよ、フジファブリックは。
1.『虹』はライブが馬鹿カッコイイ。
「next artist is ...フジファブリック」
フェスでたまたま通りかかったステージから、たまたま目に飛び込んできた文字。
あー知ってる。あれでしょ、『若者のすべて』の人でしょ。
正直どんな顔の人が演奏しているのかも覚えていなかったけど曲は知っているというミーハーぶりだった。
耳を済ますとフジファブリックのポップな代表曲『虹』を演奏しているようだった。
あぁ、この曲も聴いたことがある。軽快なギターの音色と、あちらこちらに散らばる特徴的なキーボードの音色が好きだ。
心地よいベースの音に誘われるように、観客の輪に入る。間奏の虹がかかるようなメロディも好きだ。生で聴けてよかったなぁ。そんなことを思いながらリズムに身を委ねていた、その時だった。
「キーボード!金澤ダイスケ!」
ボーカルのがなり声を受け、ソロ合戦が始まる。
CD音源には無いよな、このパート。
呆気にとられているうちに、さついっきまで美しいメロディを響かせていたキーボードが、いつのまにか椅子に駆け上がり、もう片方の足で鍵盤を鳴らした。叫ぶような高音に、観客も声をあげる。
えーーーーー。まじか。
思わずそう呟いた口元は、にやけていた。
虹(2015 at 日比谷野音) - フジファブリック https://music.line.me/launch?target=track&item=mb0000000000685b51&subitem=mt0000000003de4a01&cc=JP&from=tw
めちゃめちゃ、かっこいいじゃん。
原曲を聴いたことのある人も、ぜひライブ音源を聴いてほしい。反則やん、ってくらい爆発するソロ合戦に胸が熱くなるから。
これが、なんとなくバラードやミドルテンポの曲を奏でる大人びたバンド、というイメージだったのが、"最高にアツくてロックなお兄さん達"というバンド像に変わった瞬間だった。
こんな話をすると、新入りだとかにわかだとか言われそうだが、構わない。とにかくこれは、少しでも現在のフジファブリックファンを増やすべく、「ここが衝撃を受けたぜフジファブリック!」を語るだけの文章である。私だ自身新規ファン極まりないが、彼らの音楽から感じた素直な気持ちを語らせてもらおう。
2.4人で紡いだ『MUSIC』
ボーカルであり偉大なフロントマン、志村正彦が亡くなったのは知っていた。だけど、アルバム「MUSIC」が彼の死後出されたものだとは知らなかった。だって、そこから志村さんの声がするから。彼は確かにそのアルバムの一曲目『MUSIC』を歌っているのだ。
彼の遺したデモ音源の歌声を、他のメンバー3人が曲にすると決めたから。
MUSIC - フジファブリック https://music.line.me/launch?target=track&item=mb000000000001ef03&subitem=mt0000000000134046&cc=JP&from=tw
アーティストとして、死してもなお作品が残るということほど、嬉しいことはないんじゃ無いかって思う。
彼が歌に込めている"普遍的な"想いが、こうして作品として、バンドメンバーの演奏とともに世界に羽ばたいている。しかも、志村さん本人の要望でフジファブリックの四人(正式メンバーにどらむはいない)のカルテット。シンプルな構成だけど、四人の紡いだ音に胸がじんわりと温かくなり、グルグルと何回も聴きたくなる、そんな曲だ。
このアルバムは彼の死後に出された一作目ということで、今も特設サイトにライナーノーツが残っている。是非見てほしい。あ、でも電車の中はやめた方がいいです、ぼろ泣きしても責任とれないです。私はこっそり泣いて、小学生に二度見されました。
3.曲は今も生きている『会いに』
正直、最初に私がライブを観ただけでは、元ギタリストが唄っているとは全く気がつかなかった。当時ゴリゴリのリードギターが、志村さんの死後、追加メンバーを入れずに自力で歌い上げることを決断したと知った時の驚きよ。
それでも違和感の無い理由は、技術的な問題だけではない。完全に、フロントマンの風格なのだ。堂々とした振る舞いで客を煽り、時に声を張り上げ、まっすぐな歌声を届けてくれた。
https://youtu.be/pQlDS7qap2U
彼の名前は山内総一郎。
今年の20周年ライブでは、自身の地元凱旋ライブとも言える大阪城ホールを宣言しバンドを引っ張ってきた。彼の声は、特徴的で優しさと危うさをはらんだ志村さんの歌声とは違う。けれど、温かみはあるのに透明で、まっすぐな総一郎さんの声も私は大好きだ。
そんな彼が、初めてメインボーカルを務めた映像が残っている。
曲名は『会いに』。アルバム「MUSIC」収録曲だが、こちらは志村さんのボーカルは遺されていなかった。
https://youtu.be/BckDDLQ9K4c
あくまで上手のギタリストの位置から声を届ける総一郎さん。代わりにフロントマイクは志村さんの場所として空けてある。現在の山内さんしか知らなかった私は衝撃的だった。
何よりも「フジファブリックの」曲を一生懸命、脆い歌声を絞り出して伝えようとしているようだ。彼がボーカリストとなるまでに、どんな努力があったのだろう。フロントマンとしてステージの真ん中に立つまでに、どんな葛藤があったのだろう。そんなことを思った。
何より、こうして志村さんの残した曲は、やはり、フジファブリックが演奏するからこそ活き活きと輝きを放つ。この映像では「君のいるところに会いに行くよ」という歌詞は志村さんに想いもはせているように思えるが、先日の20周年大阪城ライブでは、来年始まる全国ツアーに向けて「会いに行くよ」と歌ってくれるような気がした。
曲は、生きている。
現在のフジファブリックによって、呼吸をしている。そんな、気がする。
4.そして現在、『東京』を歌う。
そして何より。新曲を聴こう。
こうして、フジファブリックのDNAをぐつぐつと煮え返らしながらも、彼らの、僕らの挑戦は続いている。
この曲を聴いて、フェスに行こう。ライブに行こう。
また生演奏のアレンジがおもしろいんだ、これが。
どう面白いかって?それは、実際にライブに行ってからの、お楽しみ。
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