見出し画像

「編曲」の話

編曲には2種類がある。

・アレンジ(Arrange)
・トランスクリプション(Transcription)

アレンジとは、メロディやリズム、和声など曲の構成を変えず、違う編成に直す作業をいう。
オーケストラの作品などを吹奏楽に直したりすることだ。

トランスクリプションとは、メロディなどは拝借するが、リズムや和声、展開を含む構成を自由に創作することを指す。

ところが、日本語では、いや朝鮮語でも、このアレンジとトランスクリプションを同じく「編曲」と呼ぶ。
英語で表す際にも「アレンジ」とひとまとめにして呼ぶことが多い。
「トランスクリプション」という言葉があまり普及していないのだ。

確かに、巷にはトランスクリプションよりもアレンジの方が圧倒的に多い。
トランスクリプションは作曲とほぼ同義語であり、専門の分野に部類される。
メロディを借りて器楽曲を創作する、ということなのだ。

ここに困難がある。

演奏会のチラシやプログラムなどには、曲名に作家の名前を明記するのが礼儀となっている。
その場合、適切な言葉が「編曲」しかなく、「トランスクリプション」などと書いても「わかる人にしかわからない」ということになる。
そのため、一般的な用語である「編曲」という言葉を使うのであるが、ある親しい大先生に、いつもお叱りの言葉を受ける。

「編曲と書かず、作曲と書きなさい!」

トランスクリプションの苦労も味わっている私には、その気持ちは大変わかるのであるが、いかんせん世間一般的にはそう書かないのだ。

トランスクリプションも、他の作家のメロディを拝借した時点で作曲家がいらっしゃるわけだ。

先日出版された拙作、『"イムジン河"の主題による幻想的小品』には、『イムジン河』という歌のメロディを創作された、高宗漢という作曲家がいらっしゃるのである。
それを差し置いて「金殷真 作曲」とは、まさか書けない。

いつかこの問題がアジアで議論され、適切な用語によって棲み分けらる日が来るのだろうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?