自分を傷つけるのにカッターはいらない

自傷癖というとカッターナイフを使って体を傷つけるのを想像する人も多いのではないだろうか。リストカット(および体を切る行為)はなにかよく覚えてないが、なにか分泌されるような話も聞くしそういう感覚が味わえるのかもしれない。

でももちろんそれだけじゃない。死にたくて傷つけるのでないのなら、自分を傷つける方法なんていくらでもある。

私にもやめられない癖がある。

私の病気が発覚したのは手の甲から肘まで、爪を立てたあとだらけになったから。回数は減ったけれど、それはいまでもやめられない。

もちろんその程度のこと、少ししたらすぐに消える程度のとるにならない傷だけれど、それでも私の手にはいくつかの爪のあとがいまでも残っている。それがなくとも私の腕と手の甲は何となく汚ならしい。それは自分を傷つけてきた結果だと思う。

そういう行為を始めたすぐの頃はよく髪の毛も抜いた。それも自傷の一つだとあとから知った。

私がいま自分を傷つけるのは、一時的に高負荷でかかるストレスへの対処と、衝動的に自分をすごく傷つけたいときだ。他の人はどうなのだろう。

いまの私のバリエーションは、腕や足に爪を立てること、コンクリートの壁に頭や腕を打ち付けること、頬をはたくこと、頭や体をグーで殴ること、自分に噛みつくこと。そんなところだろうか。

あまりに一過性の行為で、担当医には割りと話忘れる。きっと話すべきなのだと思うけれど、そうする必要がないときは忘れがちだ。

それから私は死にたいけれどその行為で死ぬ気はないので、力加減はセーブするし、怖いから刃物は使わない。私がリストカットに手を出さなかったのはただ怖かっただけだ。

ただ傷跡が残ったり、アザになったりすると、やってしまったと思う反面、安心する。

突然こんなことを書いているのはその衝動が昨晩やって来たからだ。私はその事で彼を悲しませた。彼にまだ少しはらもたっている。だから鬱憤ばらしと、記録として書き記しておきたいと思う。

思えば昼間からイライラしていた。彼のスケジュールの遅れにイライラして、妹とその子供達が帰ったあとの乱れた部屋にイライラして、洗濯が一回で終わらないことにイライラして、やたらに多い洗い物にイライラした。話しかけても響かない時々返事も帰ってこない母にイライラした。そして夜部屋にかえって、この上なく汚い自分の部屋にイライラした。片付けはちゃんとすればできるのに、ちゃんとできないから、イライラする。そこで私のスイッチが入った。

そうやって、彼といつものシングルベッドに入ってなにも言わずに電気を消した。私を心配して彼は私を気遣ったけれど、私に触れる手がわずらわしかった。

私はコンクリートの壁にぴったり寄り添って寝ていて、私は自分の腕を壁に打ち付ける。何度かやると彼が制して私の手をしっかり握る。握られた隙間をぬって自分に爪を立てる。静かに涙をこぼす。嫌いにならないでほしいとこぼす。それなのに全部嫌になって彼を振りほどくと、彼は私に背中を向けた。

私は悲しくなって部屋を出る。一人になりたい訳じゃない。悲しかった。私を一人にしないでほしい。助けてほしい。そんなことできないことがわかっていても。

一人でいるのも辛くなってまたベッドに戻る。私は彼を泣かせる。どうしていいかわからないと彼は言う。どうしていいかわかるなら、ワタシは自分を傷つけない。でもそんなこと彼に言っても仕方ないから、私もどうしていいかわからないと返す。

どうしてほしいのか私は知っている。彼に私を傷つけることをするか、それか抱いてほしかった。でも傷つけることをしてほしいなんてそんなこと口が裂けても言わない。そんなひどいことできない。わたしは彼に甘えきっている。

私は彼を突き放すけれど、そのうち大抵は本当はそばにいてほしい。でも何割かは本当に放っておいてほしくて、彼はまだそれがわからない。きっとずっとわからない。判別はすごく難しいと思う。1番悪かったとき、いつも彼はそばにいて私を安心させようとして、私は徹底して拒んだ。だからきっと私が拒むときは、そっとしておくと決めたのだと思う。彼は悪くないとわかっている。

彼はいま彼自身の人生でいっぱいいっぱいだ。彼は外国人で、日本に三年目、就職が決まったばかりで不安にまみれている。国にも遊びに帰れない。もともといっぱいいっぱいになりやすい彼はいま大変なのだ。それでも私を支えようと腹を決めてくれている。

私は彼を泣かせた。私は自分の衝動をわきにおいて彼の乱れた呼吸をを落ち着かせる。そのかんに衝動は膨れ上がる。それでも彼を悲しませるのは申し訳ないくて謝る。心からの謝罪だ。

でも本当はムカついてもいる。お前どころではないと思っている。いま、泣いているのは私だったはずだ。私の些細な行動で私の要求を読み取ってほしいと思っている。わかっている、ただのわがままなのだ。

私は何度も謝った。彼が落ち着くとそれで言い合いになった。

彼はとてもいい人だ。まともな人と一緒にいるのがいいと時々本気で思う。昨日の私はそれを口にした。しばらく言い合って彼は言う。疲れたと。

もっともだ。当たり前だ。

それに冷静に考えれば、私の荒れたようすだけに疲れたと言ったのではなく、自分のことなんかも含めて彼は疲れていっぱいいっぱいなのだ。

でもその一言は欲しくなかった、絶対に。

疲れてるなら捨ててほしい。別れたくないけれど仕方ない。心はそんなことしないといってほしい。頭は、彼の心労になるなら別れた方がいいと思っている。

しばらく言い合って私たちは寝た。彼は私に一緒にいたいと言ってくれてよかったけれど、これを繰り返していつかは捨てられるなら、いま捨ててほしいと思う。

朝起きると彼は努めて普通にして、よく考えたら大したことじゃないと言う。たいしたことじゃない、私には。でも本当は彼には違うと思う。

それでもわたしは彼にまた甘えてしまう。彼を傷つけないですむようになりたい。

それを考えて私はまた自分に爪を立てるのだ。

私はこれを読み返さず投稿する。これは愚痴みたいなもの。どこかに吐き出したかっただけ。悪しからず。

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