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僕がそんなにモテるわけ 第1話


30歳で童貞だと魔法使いになれるとか言ってるドラマがあったがそんなのは結局空想だ
今僕が目の前に起きているのが現実で…

バスに揺られても毎日同じ景色を眺めている僕に今日や明日いいことなんてあるのだろうか

急停車します、ご注意ください

バタッ!

急停車で女性が寄りかかってきた

〇〇:だ、だ、大丈夫ですか?


女性:ひっ!気持ち悪い…

これが日常であり僕にとっての普通だ

佐藤!!お前はいつまでチンタラしてんだ!?仕事してんのか!?おおん!?

僕の名前は佐藤〇〇
頭脳凡人、顔面偏差値は中の下、決していいとは言えないスタイル、ありきたりな名前、何をとっても世間で負け組に数えられる。
奇跡的に広告代理店のシステム開発部門にネットゲームと友達とも遊ばずに磨いたプログラミングを買われてなんとか入社出来た

〇〇:すみません…

今怒っているのがシステム部門のマネージャーである。僕に怒るのを生きがいにしているかのように毎日怒る

まぁマネージャーもうそこまででいいんじゃないですか?

こいつは川口幸也、営業部にいて同期
僕とは真逆の人間で全てを完璧に持っている男だ

幸也:とりあえず飯行くぞ?いいですよね?


マネ:お、おう…午後は仕事しろよ?わかったな?


〇〇:は、はい…ごめん…


幸也:全くどうしようもねぇマネージャー、行くぞ


〇〇:う、うん…


幸也:お前も言い返していいんだぞ?じゃないと一生収まらないぞあれは


〇〇:でも…そんなことでなにか起こしたくないし…


幸也:いいんだよ、もうお前は言っていい年齢だしそれに…


〇〇:あ、ちょっと待って


幸也:なんだよ笑またお得意のアイドルゲームかよ笑

僕の恋愛は携帯の中のアイドルだ
この子達は全員僕のことが好きだ
そして、物語の展開があるとはいえ裏切らない
そう…裏切られたくない


〇〇:お疲れ様でした…

小さい声でそそくさと帰る
なにかバレるようなことがあればまた怒られるし何時間言われ続けるかわからない

帰りのバスはいつも混んでいる
押し合いがある中でも目立たないようにしていたが…

この人痴漢です!私に下半身を押し付けてきます!

〇〇:え?

ーーー

〇〇:ありがとうございました…


警察:気をつけるんだよ?女性に言われたらおしまいだしやってないならそう言っていいんだよ?もういい大人なんだからね?


〇〇:はい、すみません…

最悪だ…冤罪とはいえ警察に取調べを受けた
もはや僕に生きてる価値なんてあるのか…

何をそんな落ち込んでるの?

〇〇:あ…久美…


久美:あはは笑なにもやってないのに警察に捕まってるの面白い笑おじさんもおばさんも迎えに来れないから来たよ?

この子は幼なじみの佐々木久美、僕が唯一昔から話せる女性だ

〇〇:ごめん…


久美:まぁよかったじゃん?本当にやってないんだからさ、むしろそんな度胸〇〇にあるわけないか笑


〇〇:うるさいよ…


久美:あははは笑

彼女は僕の前では明るかった
それが僕には時に苦痛で仕方なかった
どこでも中心になれる彼女が僕とは正反対の世界で生きていることに小さな悲しみと苦しみと生まれたことへの憎しみがあった

〇〇:ねぇ久美はさ…


久美:なに?


〇〇:どうして僕がこんな人なのに…


久美:こんな人なのに?


〇〇:いつも近くにいるの?


久美:幼なじみじゃん?それにこんな手のかかる人見たらほっとけないよ笑


〇〇:……


久美:〇〇にもいいところあるんだからさ?


〇〇:どんなところ?


久美:そうだな…うーん…えーっと…


〇〇:やっぱ無いんじゃん…


久美:ごめん嘘!嘘!


〇〇:ありがとう迎えに来てくれて…おやすみ…


久美:え、あ、おやすみ…

窓を開け空を眺めた
結局僕なんかこのまま情けない自分でいて、人生を諦めた方がいいんだ
僕は首元のネクタイをそのまま少しキツくし天井にある金具に引っ掛け…


ガタッ!バタバタ!
ドターン!


出来なかった…

〇〇:ウゥ…クソ!なんでこんな人生なんだ!

その人生変えたいか?

〇〇:え?

よっこらしょっと、はー!やっとここから入れたわ〜昨日から練習した成果は出たな!

〇〇:ふ、ふ、ふ、不審者!

は?

〇母:なにをでかい声出してるの?


〇〇:ふ、不審者がここにいる!


〇母:は?あんた頭おかしいの?誰もいないじゃない?


〇〇:は?え?だってここにヒゲ面長髪のおじさんが…


〇母:はー…早く寝な…


〇〇:うそ…

全く…お前にしか俺は見えないんだからなにを言っても通じるわけがないだろ?

〇〇:嘘だ…現実に考えても…バサッ…

なにを計算している、貸せ

〇〇:あ、ちょっと…

こんな計算したところでなにになる?お前の納得するような答えが出るわけないだろ?

〇〇:いや、それは…

自分が勝手に納得して自分が勝手に作り上げた世界が今のお前の立ち位置だ、それを計算して出来た世界だと思うか?

〇〇:…いえ

ならこんなもんやっても無駄だ
諦めろ今のお前を、そしてこれからお前は明日の自分を諦めるな

〇〇:どういうことですか…?


ガルフ:失礼、俺の名前はガルフ。これからはガルフと呼びなさい。いいか、地球上にお前ほどの悲壮感を持つやつというのは多くいるが、その中でも人生のそこまで落ちた瞬間を見つけた俺に感謝するんだな?


〇〇:ちょっと言ってる意味がわからないのですが…


ガルフ:お前はこれからどうしたい?死にたいか?


〇〇:この人生をやめれるなら…


ガルフ:わかった、なら殺してやろう。ただし3ヶ月後な?


〇〇:…は?


ガルフ:お前はどのみち今死ぬ予定だったんだ、俺に3ヶ月よこせ


〇〇:…今死にたいのでやっぱりいいです


ガルフ:待て!待て!待て!いいか!?これからお前に1000万円やる!


〇〇:え?本当に?


ガルフ:ああやる、ただし条件がある、これからお前の3ヶ月間モテ期をやる


〇〇:…モテ期?


ガルフ:お前はこれから3ヶ月間モテ期が訪れる


〇〇:んなわけ…


ガルフ:お前目の前に起きてる現実がわからんのか?もうすでに現実ではないことが起きてるんだぞ?今更そんなことを疑ってもしょうがないんじゃないのか?


〇〇:確かに…


ガルフ:ならば3ヶ月間を潔くよこせ、そしたらお前の人生を1000万円で変えてやる。


〇〇:いいんですか?


ガルフ:ただしその1000万の使い道は簡単だ、モテ期に出会った女性の関連することだけ使え。それ以外に使うと死にはしないが苦しむことになるぞ?


〇〇:またまた〜


ガルフ:冗談だと思うなら明日使ってみればいい、ま、体で経験してみるのも悪くないか笑


〇〇:…え?


ガルフ:また明日な…パチン

チュンチュン
気づいたら朝だった

〇〇:…いない…夢か

机の上に銀の箱が置いてあった
指紋認証に自分の指を恐る恐る触れると箱が空いた

〇〇:本当にお金がある…現実か…?

昨日言われたことを思い出した
モテ期に出会った女性の関連することだけ使え。それ以外に使うと死にはしないが苦しむことになるぞ?

〇〇:バレなきゃわからないよね笑

中から2万円を引き出し外に出た
ふと目に入ったステーキ屋がいい匂いを醸し出し、入店した
最高のサーロインステーキを目の前にパブロフの犬化した僕は肉にナイフを入れ一口運ぶと…


目の前が真っ暗になった

ピーポーピーポー🚑

ーーー

その日の夜

ガルフ:ガハハ笑だから言っただろ余計なことに使うなと笑


〇〇:死にかけました…


ガルフ:これで俺の言うことを信じるだろうな笑


〇〇:…言うこと聞きます


ガルフ:じゃあまず明日も休みだろ?まずは髪切って服を買ってこい、それとスーツもだな、お前の下半身のおいなりさんと同じくらいシワくちゃなもの着てたら品がない!


〇〇:めちゃくちゃに言いますね…


ガルフ:事実だろ?あとそのめちゃくちゃにダサいメガネ外してコンタクトにしろ。それだけでガラッと印象が変わるから


〇〇:あ、はい…


ガルフ:いいか?結局人は見た目からがスタートだ。見た目が変われば行動が変わる、行動が変われば人が変わる、人が変われば周りが変わるんだ


〇〇:……


ガルフ:お前に必要なのは自分から変わろうとする行動と勇気だ、一歩踏み出すのは小さいのか大きいのかはその人次第だが一歩進めば自分の世界が変わるからな


〇〇:はい…


ガルフ:明日がその第一歩だ、まずは寝ろ、そして明日の朝から動け、そこから未来が変わる

パチン🤌

チュンチュン…

ーーー

ガチャッ
いらっしゃいませ〜

〇〇:あの…イケてる髪型にしてくれますか?


美容師:イケてる髪型にしていいの?


〇〇:…はい!


美容師:よっしゃ!任せなさい!

チョキチョキ✂️

〇〇:コンタクト楽!


〇〇:服…買いすぎたかな?


80…86…

〇〇:スーツってこんなに採寸するんですね…

もちろんでございます〇〇様、この度はご予約ありがとうございました

〜〜
ガルフ:予約は全て終えてあるからな、明日中に全部やれ、スーツは2着は持って帰ってこい
〜〜

〇〇:あ、そうだ…2着ほど持って帰れるのあります?

もちろんでございます!残り3着はどれにしましょう?

〇〇:そうですね…

ーーー

ガチャッ
ドサッ!

〇〇:ふぅ…


ガルフ:大量に買い物したな


〇〇:うお!びっくりした!


ガルフ:まぁスーツが着慣れてない部分はあるがこれから合ってくるだろうな笑


〇〇:お金めちゃくちゃ使ったんですが…


ガルフ:まぁ100万ちょっとなら大したことないだろ


〇〇:いや…相当…


ガルフ:明日からちゃんとスーツ着てコンタクトして髪型も整えていけよ?じゃなかったら明日また救急車で運ばれるぞ?笑


〇〇:それはもう嫌なので…


ガルフ:明日からがお前の人生のリスタートだ、いいな?


〇〇:はい…


ガルフ:人の性格はそう簡単には変わらない。だが、大事なのは変わるためには弱い自分を受け入れてそこから踏み出せるかだ


〇〇:わかりました


ガルフ:楽しみだよ明日から、よく見てるとしよう

ーーー

〇〇:んん…モゾッ

タッタッタッタ…
ガチャッ…
バサッ!

久美:朝だ!お!き!ろ…え?誰?


〇〇:んん…あれ…久美…なんでいるの…?


久美:え…ちょっと…〇〇?


〇〇:え?なに?なんか変?


久美:髪切ったんだ…


〇〇:え?に、似合わない?


久美:…変ではないかな


〇〇:そうか…うん…そっかそっか…


久美:ねぇ…あのさ…


〇〇:やべぇ!遅刻する!久美起こしてくれてありがとう!あ!顔洗わないと!


久美:……

なんとかバスに乗り会社へ迎う
今日もこのバスに乗っている人は変わらない
そして僕自身の心は変わらない

〇〇:本当にモテるのかよ…

急停車します、ご注意ください

バタッ!
あれ?前と同じパターン?
女性が寄りかかってきた

〇〇:だ、だ、大丈夫ですか?

ふと覗くと前に倒れた女性だった

女性:え?あ、ありがとうございます❤️

え?反応がまるで違う?そんなになにか変わったか?
その時だった
僕のスーツの袖を指先で掴んだ細い指先、白く滑らかなその指を辿っていくと綺麗な女性だった
しかしその彼女の顔は強張っていた
なぜなのかわからず僕はどうすることも出来なかった時に思い出した

〜〜
お前に必要なのは自分から変わろうとする行動と勇気だ、一歩踏み出すのは小さいのか大きいのかはその人次第だが一歩進めば自分の世界が変わるからな
〜〜

そして勇気をだして携帯の画面に打ち込んだ

〇〇📱:大丈夫ですか?

彼女はその画面を見て打ち込んだ

📱:痴漢されてます、助けてください

よく振り返ると明らかに混雑してる車内にしてもおかしいくらいの密着度で男がくっついている
しかしこの車内だと目視で確認することが出来ない以上この人にやっていないと言われたらおしまいだ。なによりも彼女がこの状況を大きくすることを望んでいないかもしれない。
僕は思いついた

〇〇📱:僕とそこの場所変わりませんか?

彼女は顔を上げコクンと頷いた
狭い車内で上手く移動しその男の前には僕が移動した瞬間、あからさまに嫌そうな顔をした
なんとかそのままやり過ごしバスは終点に着いた

女性:ありがとうございました!


〇〇:いえいえ…こちらこそ…あんなことしか出来なくてごめんなさい…


女性:本当に助かりました…あの…もしよければ…


〇〇:あ!ヤバい会社に遅れる!じ、じゃあこれで失礼します!

パサッ

女性:あ、ちょっと…これ…

ーーー

〇〇:しまった…今日早く来ないとダメなのに遅れてしまった…怒られる…

エレベーターを降り扉が開くとマネージャーが居た

〇〇:ああ…おはようございます


マネ:……


〇〇:(あれ?気づいてない?)

その隣をすり抜けて自分の座席につく
すると隣のデスクの人が

あの〜どちら様ですか?

〇〇:え?あ、佐藤ですけど…

え!?さ、佐藤さん!?

〇〇:そ、そんな違います?

もう!そりゃあびっくりですよ!え?整形しました!?

〇〇:そんなわけは…

するとマネージャーが戻ってきた

マネ:佐藤!佐藤の野郎遅刻かぁ!?


〇〇:あの…


マネ:佐藤の机に退職届の書き方置いておけ!


〇〇:あの…


マネ:あいつはどこまでダメなんだ!!


〇〇:あの!


マネ:うお!びっくりした!えーっと…どちら様で?


〇〇:えーっと…佐藤です…


マネ:え?ん?あ?え?さ、佐藤???


〇〇:え…あ…はい…?


マネ:お前…なんか…シュッとしたな…


〇〇:あ、ありがとうございます?


マネ:ん、ま、まあいいや、仕事しろよ?


〇〇:あ、はい…


〇〇:(そんなにわからないのかな…)

怒られるどころかマネージャーがまず寄ってこないのが不思議だ…
見た目だけ変わるだけでもここまで変わるとは思わなかった

マネ:あ!どうされましたか!?広報部のマドンナがどうされましたか!?

もうやめてくださいよマネージャー笑ちょっと用事があって来ました

マネ:用件であれば私が承りますが?

あ!個人の用事なので!

スタスタという音が聞こえた
どうせ僕には関係ないと思っていたその時

佐藤さん!

〇〇:え?

先ほどはありがとうございました!あとこれ落とされましたよ?

〇〇:あ!それ!ありがとうございます、ってえ?同じ会社?


保乃:初めまして、広報部の田村保乃です!お礼がしたくて来てしまいました!

僕は変な親父のおかげで3ヶ月間の延長した人生は
奇想天外な日々を送ることになっていくことになる





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