これからの「日常」について。ビューティフル・ドリーマーからPERFECT DAYSへ。
1984年に『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』(押井監督作)が公開された。日常ドタバタコメディーの登場人物が、閉じられた世界の虚構性に気づき「繰り返しの日常」から脱出を試みる内容だ。
それから約40年。ミニマルな生活の中で1つ1つの事物に向き合い、丁寧な日常を繰り返す主人公を描いた『PERFECT DAYS』(ヴィム・ヴェンダース監督)が公開された。
どちらの作品も「繰り返しの日常」を取り上げているが、ビューティフル・ドリーマーでは「閉じられた世界で繰り返される日常からの脱出」を目指すのに対して、PERFECT DAYSでは「日常を繰り返すことで自分の世界を確保する」意思が見られる。
「日常」を取り巻く環境が大きく変化しているのだろう。
動員の革命は、日常まで侵食してSNS疲れ(非日常疲れ)を引き起こす。経済の観点においても、一億総中流社会で共有できていた「当たり前の日常」を維持するのは難しくなりつつある。
色々な理由があるとは思うが、かつて誰もが享受できていた「繰り返しの日常」は、切迫した世の中で毎日を味わい尽くす嗜好品に姿を変えてきている。
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