甘夏における柑橘ピールの苦味の変化について

経緯

前回、冷凍した柑橘ピールからアルコールに溶出する苦味成分の種類について、リモノイド属またはナリンギンであると絞り込むことができましたが、それらはどちらも加熱によって軽減するらしいことが分かりました。

季節モノである柑橘のピールを冷凍して保管しておけることはメリットであるため、様々な方法で処理した柑橘ピールと、そのピールから抽出したエキスの変化を探ることを目標とした検証を行いました。

用意したサンプル

今回、入手性の高さから甘夏ピールを使用しました。検証のために用意したサンプルは下の通りです。

  1. 生のピール

  2. 冷凍したピール

  3. 5分間茹でたピール

  4. 5分間茹でた後に冷凍したピール

  5. 冷凍した後5分間茹でたピール

  6. 冷凍した後10分間茹でたピール

検証

 それぞれのサンプルを少量のアルコールに浸し、時間経過にて官能検査を行 います。

結果

苦味と香りをそれぞれ5段階評価として採点し、それぞれ5に近づくほど苦く、香りも強いと評価します。

1)生のピール

苦味:3
香り:3
評価:みずみずしさはあるが、香りに物足りなさを感じる。

2)冷凍したピール

苦味:5
香り:2
柑橘の香りというよりも、雑草のような青臭い香りがした。加水をするとやや甘い香りが目立つようになった。

3)5分間茹でたピール

苦味:3
香り:4
甘さを感じるほど香りが豊かになった。苦味は生の状態とさほど変わらないと感じたが、味覚の満足感はこちらのほうが上だった。

4)5分間茹でた後に冷凍したピール

苦味:4
香り:4
香りは豊かで甘い風味もあるが、直前に冷凍されていたためなのか単純に加熱したものと比べて苦味が強いと感じた。

5)冷凍した後5分間茹でたピール

苦味:2
香り:4
苦味が抑えられ、相対的に甘い香りも強く感じた。いわゆる「オレンジの香り」ような印象が強い。

6)冷凍した後10分間茹でたピール

苦味:1
香り:3
茹で時間を伸ばしたことで、味覚や香りに寄与する成分が抜けてしまったような印象。「出涸らし」感を感じた

結論

風味としては5が最も優れていると感じ、逆に2は避けたいと感じるほどに臭みを強く感じました。加熱によって苦味が軽減するのは間違いなさそうで、冷凍したものについても、その後に加熱を行うことでオレンジの良い香りを引き出すことができるようです。

所感

当然といえば当然ですが、10分茹でると逆に出涸らしのようになってしまうのが意外でした。予想ではもう少し残ってくれると思っていました。

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