通級指導半年を振り返って。
こんにちは。栗原白帆です。通級指導が始まって半年経過しました。
現在の状況を書き留めておきます。
今年度通級を受講する生徒は4名。以下はその簡単な生徒情報です。
A 感情のコントロールが難しく、気持ちが高ぶると大声をあげたり物にあ
たってしまう。昨年度から支援員が個別について対応中。手帳未取得。
B 療育手帳取得済み。学習障害で漢字の読み書きが苦手。手先の不器用さ
もある。コミュニケーションに問題はないが、少し思い込みが強い面があ
る。
C 場面緘黙(家庭では会話しているようだが、学校ではほとんど声を出さ
ない)。知的に問題はないが、声が出ず、表情も乏しいため家族以外との
コミュニケーションが難しい。
D 手帳未取得であるが、自閉傾向が強く、他者とのコミュニケーションに
困難がある。知的ボーダー。
本校の通級は、特別支援校から派遣されている教員がT1としてすべての通級クラスのカリキュラムを組み、本校から4人が選出されてA~Dそれぞれの通級指導にT2としてつくというスタイルです。
私はCのT2として通級授業に入ることになりました。
授業の流れ
授業は毎回ほぼ同じ構成で行われます。
① 毎回のプリント(今日の気持ち、体調、1週間のできごと)を書く
② それぞれの生徒に合った課題を行う。
③ ふりかえり
ざっくりまとめると上記のような流れになります。
現在本校に来てくださっている方は知的特別支援から派遣されている方で授業に「見通しを持たせる」ことを心掛けているというのが第一印象です。
毎回ホワイトボードに今日の授業内容があらかじめ書かれていて、いま自分は何をしていて、次に何をするのかが一目で分かるようになっています。
①では生徒がプリントを書き終わった後、一緒に内容を確認します。
「今日の気持ちはどうですか?体調はどうですか?」と質問し、生徒は1から5の数字で答えていきます。調子がよければ「5」悪ければ「1」に近い数字です。
その後1週間のできごとにを発表してもらい、教員からの質問に答えてから授業に入っていきます。
私は他の生徒の授業の様子も参観させてもらいましたが、どの授業も導入は同じプリント、同じ流れで行っていました。
4月から始まった通級ですが、G.W.明けくらいまでは4人ともほぼ同じ授業内容を実施していたようです。
時間をかけてじっくりと自分と向き合う時間です。
客観的な自己紹介(名前、年齢、家族構成、住所、登校手段など)から始まり、徐々に自分の内面に向き合っていきます。
好きなもの、嫌いなもの、そして苦手なこと、困っていること、嫌なこと、嫌なことがあったときどのように対処しているか、ストレス発散の方法、できないと思うこと、できたらいいと思うこと、といった感じです。
T1の先生は生徒がなにを書いても「そうなんだね」としか言いません。
はたで見ている私は「そこをもっと掘り下げて、なぜそう思うのか、どうしてそう感じるのか聞いた方がいいのでは?」と思うことも多々ありましたが、口出しはしません。
この作業を通じて生徒自身に「今自分が困っていると感じていること」を書かせてみると、私たちの見解と一致している場合もあるし、ずれている場合もありました。
でもそれでいいようです。
否定も肯定もせず「そうなんだね」で聞いていく。
これが通級の基本姿勢なのかもしれない、と垣間見た瞬間でした。
通級はカウンセリングではない。
本校では通級指導は1年しか受けることができません。これはできるだけ多くの生徒に通級指導の機会を設けるためです。通級指導にあたる教員の数は限られており、一人の生徒が2年以上通級を受けてしまうと新規の生徒の受け入れを減らさざるを得ません。そのため原則1年。毎年メンバーを変えるというのが基本です。
たった1年しかないなかで、それぞれの生徒の苦手感に対して「なぜ」「どうして」「どうしたら」と掘り下げていたら、先に進めないのです。
通級では生徒の苦手や困り感に対して場面をパターン化し、そういう場面ではどのように対応したらいいかということを伝える。できるだけ多くのパターンを想定し、この場合はこう、この場合はこう、といったようにコミュニケーションの手持ちカードを増やしていくという印象です。
通級はカウンセリングではないのです。なぜできないか、は通級で考えるべき課題ではないというのが基本姿勢のようです。
なぜ怒りをコントロールできないのか、なぜ学校で声を出すことができないのか、ではなく、彼らが生活の中で現実に困っている場面をできるだけ多く想定し、今後そういった場面に出くわしたときにどうすればいいかを学習していく。カードを増やし、応用できるようにしていく、具体的にロールプレイを交えながら体感して覚えるということを繰り返しているように思います。
自分の課題を認めることはすごく難しい。
誰だって自分のネガティブな部分を認めるには、かなりの精神鍛錬が必要です。耳に痛い話は聞きたくないわけです。それなのに、私たちは通級を受ける生徒はすでに自分の課題を受容できていると勝手に思い込んでいました。
ところが内容が自分のネガティブな部分に向き合い始めると、驚くほど拒否反応を見せる生徒がいました。Aの生徒です。
私たちからすれば、Aの困りごとは「感情のコントロールができず、他害に及んでしまう」ということです。だから「感情のコントロールができるようになる」ことが彼の課題だろうと話していました。。これについて私たちは勝手に、Aもそう思っているだろう、と思っていました。だから通級をうけるんだろう、と。
しかしAは内容が自己の苦手感を確認する方向に向き始めると「わかりません」と言って机にうつ伏せ、それ以上授業を受けることを拒否しました。Aはプリントの内容が徐々に自己と向き合う内容になっていることに気づき、それを避けたわけです。
こういった反応に対して私たちはつい、ここできちんと受容・認知させなければこの先の指導に入れない、と思いがちです。ですが今回本校に派遣されてきた特別支援の方は「そうですか。はい。ではこれはいったんここでやめて、つぎの内容に入りましょう」という感じで深追いしません。本人が「いやだ」ということに対して「なぜ」「どうして」は問題にしない、というスタンスです。この対応は私にとってとても新鮮なものでした。
以上が本校の通級指導の基本スタンスです。伝わったでしょうか。
では次に個別の課題として具体的にどんな場面が想定されているのか。
次回は私が担当しているCの授業内容を例に挙げてお伝えしたいと思います。
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