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司法書士から見た弁護士法人東京ミネルヴァ法律事務所破産手続開始決定について

過払金返還請求訴訟や、B型肝炎給付金請求訴訟などを手掛け、積極的な広告展開をしていた大手弁護士法人が破産手続開始決定を受けた。

登記屋である司法書士から見た今回の事件について書いてみようと思う。

東京地裁から破産手続開始決定を受ける前に、弁護士法人は総社員の同意により解散の登記がされていたという。

解散したら後は財産関係の清算手続きに入るはずなのだが、第一東京弁護士会から破産申立をされ、破産手続に入ってしまった。負債が莫大で、放置していたら法人の債権者に財産が公平に配分されないと考えた第一東京弁護士会が債権者(会費未納)として、財産保全のために申立をしたのだと思われる。いわゆる債権者申立。所属弁護士の監督権を持っている第一東京弁護士会が申立したとということか。実際破産管財人がついて、ミネルヴァの財産管理をしている。

弁護士会には弁護士自治といって所属弁護士の監督・懲戒権があるらしい。へ〜。すごいんだ弁護士会。

ちなみに司法書士の監督官庁は法務省(法務局)になる。昨今、司法書士に簡裁代理権を付与されてからは裁判業務に携わることもあり、単純に法務局の監督だけでいいの?と思うこともある。もちろん都道府県ごとに司法書士会というものはあるけれど、懲戒権などは持っていない。万が一司法書士法人が同じように暴走したら法務局は破産申立をしてくれるだろうか…会費未納という理由もないし、しないかもしれない。

弁護士法人は、合名会社の規定が多く準用され、ほぼ合名会社と言っていい。合名会社は株式会社のように、出資者と経営者は別れておらず、経営についての社員(従業員という意味ではない)が負う責任は大きい。具体的にいうと、合名会社の社員は法人の債務に無限責任を負う。ということは、弁護士法人の社員は法人の債務について無限責任を負うということになる。また、退社したからといってただちに債務を逃れられる訳ではなく、退社の登記から2年は法人の債務を負うことになっている。ミネルヴァの社員さんもまた然り。カワイソ…。

司法試験に受かって大手弁護士法人に就職しようとする新人弁護士さんが、就職には法人の社員になるのが条件ですと言われたら…断れないような気がする。

弁護士法人に就職するときはその法人の履歴事項全部証明書を取れと言われているらしい。履歴事項全部証明書には今は有効でない登記記録も記載される。つまり、社員の入れ替わりの記録が出てくる。社員の入れ替わりの激しいところはやめとけ…ということなのだと思う。興味があればミネルヴァの登記簿を取ってみることをオススメ。法務局で手数料を払えば誰でも見れる。


今現在聞こえて来た情報だけでも色々思うことがあるし、続報が出たらまた覚書にしようと思うほど衝撃的なニュースだった。

「まさかCMバンバン打ってる大手弁護士法人が」とか「負債が大きすぎる」などではない。「代表最後の良心が弁護士会への告白」「他の士業法人も人ごとではない」という衝撃だった。

中途半端になった依頼者との委任契約は誰かが引き継いでくれるのかな。それとも委任を終了して終わりなのか。全部投げて終わるのか…⁉︎

全国にいるであろう依頼者や債権者のこれからのことを思うと、なんとも言えない気持ちにさせられる。

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