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最終章【転落記】とあるキャリアウーマンの転落記

裁判が始まってから1ヶ月のときが経ちました。
私は、変わらず拘置所にて拘留の身として贖罪の念を持ちながら一日を過ごしていました。
合計4回の公判が終了し、残るは判決公判のみとなりました。

弁護士先生からは、実刑は避けられないと言われていたので実刑は覚悟しながら量刑がどうなるのかが気になりました。
しかし、私は人を殺めた身であるのでそのようなことを考えてはいけないということは重々理解していますが、心の中ではそれだけを気にしていました。

そして、ときが過ぎて判決公判の日がやってきました。
この日は雲ひとつない快晴で、拘置所の独房にある窓から微かに光が差していました。
ついに今日で私の罪が決まります。

前日の就寝の点呼で拘置所職員に声を掛けられて、「明日は朝一番で出発するので準備をしてください」と言われたので起きてすぐに裁判所へ出廷の準備をしました。

私は緊張からほとんど寝ることができませんでした。
ついに判決が下される。
小刻みに震えていたと思います。
さらに襲ってくる緊張。
いてもたってもいられない状態でした。

自分の体を起こし、部屋の隅に片付けた座布団に座る。

私は特に何かをすることもなく、何かを思案することもなく、ただただじっとそこに座っていました。

独房の扉には、赤い「出廷」という印が貼られているように見えました。

1〜2時間経った頃小さな音を立てて食器口が開いた。
そう思いながらおずおずと食器口に顔を近づけた私に、出廷用に用意していた白のブラウスと黒のスーツを食器口から差し入れてくれました。

手短に着替えてまた座布団に座り、身なりを少し整えると食器口から朝食が入れられ、受け取りながら味噌汁をひと口すすり、漬け物一枚を椀に乗せながら麦飯をひと口含む。

少しひやっとする冷水で顔を洗い、髪を整え護送の準備を整えました。

ついに時間となり、刑務官によって同房の扉が解錠され檻の外に出るように指示されました。

過去の公判と同様で、出廷でも靴の着用は許されませんでしたので、
拘置所で履いていた指定の突っかけのようなサンダルを履き、刑務官に促され、拘置所へ入所したときの待合室へ連れて行かれました。

待合室にあるベンチ座って手錠の確認と持ち物のチェック。
そしてボディチェックをくまなくして、私を裁判所へ護送するために私のために準備してくれた極小サイズの手錠を持つと、私は反射的に両手を前に刑務官に差し出しました。

刑務官は淡々と私の両手に手錠を施錠し、青い腰縄を手錠の真ん中に通してベルトにあるバックルで私を繋げました。

護送の準備を整え、ついに裁判所へ護送されるべく、一歩を踏み出しました。

廊下の先のエレベーターホールに向かい、エレベーターが来るまで壁を見て待機していると不意に刑務官に話をかけられました。

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