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超短編小説

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#ムーミン

完璧な三日坊主

 それは、ある年の元旦に、僕たちが都心にある由緒正しい神社で初詣をした後で、長い参道の砂利を踏み締めながら並んで歩いていたときのことだった。 「この世界に、完璧なものってあるのかな」  彼女が唐突に尋ねた。 「それは『完璧な』の定義によるんじゃないかな」  僕は、質問の意図を図りかねて、無難な答えを返した。 「…つまり、『完璧な』の意味をどうとらえるかで、答えが変わるってことね」  しばらく沈黙が続いた。長い参道を歩いているうちに僕は、社会人になった年に3か月だけ

コアラ日和

 僕が社会人1年目の頃。同い年のガールフレンドと、買ったばかりの中古のカローラに乗って鎌倉までドライブすることになった。 「私、コアラが好きなんだ。なんか、ボーッとしてて、フワフワあったかそうで……」  環状八号線から第三京浜に右折するときに、運転している僕の横顔に向かって彼女が言った。それまでが、どんな話の流れだったのか、もうすっかり忘れてしまったけれど。 「ああ、そうだね。コアラは安心して近寄れそうだもんね」  僕は、ハンドルを切りながら、前を見たままで応えた。