気の緩んだ人が多くて困ります
緊急事態宣言が一部を除いて解除されたということで、前々から気の緩んでいる人たちが勢いづいていて、残念だなと思っています。
コロナによる死者は世界で30万人を超えています。中国で騒ぎが始まってからわずか半年ほどで、たいへんな人数になりました。
しかも治療らしい治療やワクチンがないままの状態がもし続けば、同じ波が毎年来るかもしれないのです。
アビガンは効かないことも、ベクルリー(レムデシビル)だって大したことないことも、わかる人にはわかっています。「この難局を乗り切る」という思考そのものが気の緩みです。集団免疫なんてなんの確証もありません。
コロナで毎年30万人が死ぬという想像は悪夢のようですが、絶対にないとは言えません。
日本全国の死者数は2004年に102万人、2018年に136万人でした。別に2018年が死者の多い年だったわけではなく、日本はこの15年ほどで毎年30万人多く死ぬようになったということです。
日本が15年かけて通過した変化に、世界は半年ほどで追いつこうとしています。分母が70倍くらいあるとはいえ、たいへんなことです。
世界で言うと毎年6000万人ほどが亡くなっていますが、30万人というのはその0.5%をも占めることになります。
https://www.japan-who.or.jp/act/factsheet/310.pdf
がん・心筋梗塞・脳卒中…と無数にある死因のうち、単一の病気が0.5%を占めるというのはたいへんなことです。
ほかの死因と比べてみましょう。
2018年には世界で2億人がマラリアに感染し、40万人がマラリアで死亡しました。
40万人というのはたいへんな人数です。マラリアが欧米の高所得国では少ないからといって、決して軽く見ることはできません。コロナがこのまま定着し、マラリアと同じくらいの犠牲者をこれからも出し続けるとしたら、考えるだに恐ろしいことです。
このエントリを書いている時点で死者が多いのはアメリカやヨーロッパの国々ですが、今後インドや東南アジア、ナイジェリアなどの人口稠密地域でも爆発的な流行が広がるかどうかによって被害の規模はさらにまったく違ったものになるでしょう。
これでも事態の恐ろしさが伝わらない人もいるかもしれません。ほかの例をとってみましょう。
コロナ以前から、肺炎は非常に重要な死因です。世界的には近年減る傾向にあるとはいえ、毎年200万人以上とも言われる人々が肺炎で亡くなっています。最も主要な要因は低栄養、大気汚染、喫煙とされています。
https://ourworldindata.org/pneumonia
コロナで30万人が犠牲になったことは、数年分の減少幅を打ち消すことに相当します。もしコロナが定着して毎年30万人が亡くなるとすれば、せっかくの肺炎死減少傾向は数年後戻りしたことになります。言いようもなく嘆かわしいことです。
日本以外の国の話をしてもピンと来ないかもしれません。
日本でもすでに700人あまりがコロナで亡くなりました。いたましいことです。
ただでさえ毎年1万人ほどがインフルエンザで亡くなっているうえに、もしコロナが毎年1000人近くをも上乗せすることになれば、インフルエンザの犠牲が1割増しになったことに相当します。
1割増しというのがどれほど重いことなのか、消費税10%に苦しんでいる私たちには身近なこととして実感できるのではないでしょうか。
そしてもちろん、この程度では済まないかもしれません。
欧米で犠牲者の多い国はなぜか、人口に対してコロナによる死者の数が似たような範囲に落ち着く傾向にあるのですが、そのまま日本に当てはめると5万人から8万人という計算になります。もしこうなったらとんでもないことです。
最近の日本では毎年2万人ほど死亡数が増えていますので、時間が3年から4年ほど前倒しになったことになります。これはすごいことです。
しかも全世界的に、コロナの被害に最も弱いのは高齢者です。
ただでさえ数多くの持病を抱え、介護サービスは満ち足りているとは言い難く、家族に気を遣って生活し、悩みが尽きない高齢者に、コロナの脅威は集中的に襲ってきます。
どう考えても、放っておいていい状況ではありません。
コロナは恐ろしい病気です。しかし、緊急事態だの気の緩みだのという議論のすべてが、その恐ろしさを直視しない次元でなされているように感じます。
さらにそれ以前に、コロナより恐ろしい無数の問題を、私達は日々無視して生き、コロナによっていっそうかたくなに無視しています。
「コロナが大変だから対策をしろ」と言ってる人は、気が緩んでいるのではないでしょうか。
世界の数字を見て心が痛むなら、サハラ以南の国に現金でも送ってはどうでしょうか。
日本の高齢者だけ守りたいなら、介護施設に現金でも送ってはどうでしょうか。
自分だけ助かりたい? それなら勤務先が倒産しないように、みんなが出歩いて消費してくれるようなキャンペーンを考えてはどうでしょうか。
コロナを言い訳に、高齢化と貧困という難しい問題から目を逸らしたままでいる人々には、「気の緩み」がたいへんな悲劇につながることを理解してほしい。
「パンデミックだ大変だ―」なんて気の緩んだことをいつまでも言うのはやめて、しっかり現実に向き合ってほしいと思います。
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