アラビア語学習のために➁:学習の進め方と小道具
前回の記事はコチラ
この記事を読んで得られる情報
アラビア語の辞書は何を選べばよいか。
アラビア語の講読はどのように学べばよいのか。
前回の記事で紹介したアラビア語学習の進め方概略を振り返りましょう。
文字と音の習得
初級文法の習得+入門的語彙の獲得
動詞の活用の習熟+基本的語彙の獲得
語根引き辞書の引き方の習得
母音記号の付いた文章の講読
母音記号のない文章の講読
本記事では4について述べていきたいと思います。想定している読者としては、初級文法を一通り終えている人(=入門書を1冊終えた程度)です。もちろん少し先の学習の見通しをよくするためにご覧いただくのもよいと思います。
4.語根引き辞書の引き方の習得=辞書の紹介
このセクションでは辞書について紹介していきます。語学学習に辞書は必須ですが、アラビア語は少し厄介な事情もあります。文法学習からスムーズに文章講読に移れるよう、辞書についてあらかじめ情報を得ておきましょう。もちろん、文章講読を始めたからといって文法学習は終わりません。文法学習と文章講読は互いに相互関係にあります。
語根?
アラビア語は、ある語を形成している主たる音があります。たとえば
كتب
(kataba)
であればk(ك)とt(ت)とb(ب)
واجد
(wājid)であればw(و)とj(ج)とd(د)
といった具合です。この組み合わせは語根と呼ばれています(語根のそれぞれの文字は第〇語根とか第〇根素とか呼ばれています)。
さらに、たとえば
مكتبة
(maktaba)の語根は
كتب
と同じk(ك)とt(ت)とb(ب)です。
最初のm(م)は語根に含まれません。
辞書の種類
アラビア語には大きく分けて、「アルファベット引き」の辞書と「語根引き」の辞書があります。アルファベット引きであれば、単語の一番最初の文字で引けばよいので、文法をそれほど理解してない入門レベルの学習者でも辞書を引くことができます。
كتب
(kataba)であればk(ك)
واجد
(wājid)であればw(و)
مكتبة
(maktaba)であればm(م)で引きます。
一方「語根引き」の場合は、引きたい単語を構成する語根の根素のアルファベットで単語を引きます。
كتب
(kataba)であればk(ك)とt(ت)とb(ب)
واجد
(wājib)であればw(و)とj(ج)とd(د)
مكتبة
(maktaba)であれば……كتبと同じk(ك)とt(ت)とb(ب)で引かなければなりません。
つまり、語根引きの辞書ではk-t-bの語根の単語がまとまって掲載されているのです。なのでアラビア語の最重要概念のひとつである語根を意識しながら単語を調べることになるので、アラビア語理解の向上という観点では、語根引きの辞書による検索はぜひともやっておきたいものなのです。
しかし、単語を引くときはそもそも「語根」を構成する根素を抽出しなければなりません。それができるようになるには、少なくとも動詞(派生形)、分詞(受動・能動)、名詞の変化(双数・規則複数・不規則複数)については理解しておきたいですし、より確実に引けるようになるためには比較最上級、弱動詞、各種辞詞への理解も必要になってきます。
これがなかなか大変で、講読を始めたばかりだと辞書を引いてばっかりで、気が付いたら数時間で数行しか進んでいない、なんてこともあります。
最初はアルファベット引きの辞書を使ってみよう。
初級文法の学習中はアルファベット引きの辞書を使ってみましょう。竹田『アラビア語とことんトレーニング』(2013年)であれば、登場した単語は索引で調べられますが、辞書を使って調べることもやってみてください。おすすめ(というかほぼ一択)は本田孝一『パスポート初級アラビア語辞典』白水社(1997年)です。
前回の記事でも述べたように、こちらは単語帳としても使える(使うべき)ものなので、語根引き辞書に移行してからも長く使えるものです。ぜひ手元に置いておいてください。
オンライン辞書
アラビア語のオンライン辞書としては、前の記事でも紹介したアラジンがおすすめです。というか、アラ→日はほぼこれ一択です。
多くの場合は「単語完全一致検索」を用いて調べることになると思います。ただ、そういった場合でも必ず語根を確認するクセを付けておきましょう。
覚えておきたい単語などはまとめておいて後で確認できるようにしておくと良いと思います。
語根引きの紙辞書
多くのアラビア語学習者に愛用されてきた(あるいは憎まれてきた?)のは、間違いなくHans Wehrの辞書です。
ただ、版元倒産により入手が難しくなっていることもあり、先程のアラジンの存在なども加味すると、もはや必携と呼べるものではないのかもしれません。もし古本屋で見かけたら、ラッキーだと思って買っておきましょう。5年くらい前に神保町の古本屋で見かけたことがあります。第3版と第4版が流通(?)していますが、できるだけ第4版を手に入れておきたいところ。
当該辞書はインデックスが付いていないので、市販のインデックスシールを貼って使いやすいようにしておきましょう。
この辞書はアラ-英なので、引いた語は適当な和訳を直接書き込むなどの工夫をしておくといいと思います。英語が苦手な方は無理をして使う必要はないと思います。語釈の英語を調べるのに時間がかかり本末転倒になります。
この辞書の特徴(というか欠点)として、一番流通している意味が冒頭に乗っているわけではないことがあります。ですので、調べた語の語釈は冒頭だけでなく、できるだけ最後まで読むようにしましょう。語釈全体を読みながら、その語の大まかな意味の領域を考えるのが、この辞書を使いこなすコツだと思います。
この辞書は派生形について「Ⅲ」とか「Ⅶ」とか「Ⅹ」としか書いていないので、派生形の基本となる形については学習済みであることが前提となっています。前の記事で紹介した竹田『アラビア語とことんトレーニング』でいうと、47課まで進まないとうまく使えないと思います。
他にも辞書はいろいろあるのですが、今回の記事の趣旨に沿っていないものであったり、使ったことがないのでレビューできないものなので、紹介しません。アラ-アラの辞書についてはどこかで稿を改めて紹介したいものです。
結論
・初級文法の学習中は本田孝一『パスポート初級アラビア語辞典』白水社(1997年)を使ってみよう。ただ単語学習は使用している文法書に出てくる語を覚えればよい。
・オンライン辞書はアラジン一択。語根を確認する習慣を付ければ、アラビア語の理解を妨げない。
・Hans Wehrの辞書は今日では必須とは言えないが、手に入るなら手にしておきたい。使いこなすための工夫が必要。
それでは次回の記事で。
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