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著作権とnoteのコンプラについての私見

一部で話題となっているようなので、私も少し気になっていました。
別にnoteを擁護するわけではないのですが。

誰かの著作権について主張をすることはできるか

これですが、恐らく現行法上は無理です。
例えば、Aさんの著作物が本人の意図に反してXさんに無断で使用されたとしましょう。


Aさん→Xさんに対して、著作権侵害を訴えるのはOK。

ここからがミソですが、Aさんの主張ができるのは、

Aさん:自己の利益を直接侵害されているからです。
(民事訴訟法でいうところの原告適格
Xさん:Aさんの利益に対し直接的な損害を与えた人だからです。
(民事訴訟法でいうところの被告適格)

ですが、ここでAさんがnoteに著作物を発表して、同様のケースが発生し、甲さんがそれについて、「Aさんの権利が侵害されたから、noteはその責任を取れ」という主張をしたとしましょう。


Aさん→Xさんに対して著作権侵害を訴え、同時にnote社に対して、共同不法行為者としての責任を問う。

これはOKです。
理屈は、上記と同じで、Aさんは直接損害を受けたからです。(原告適格の要件を満たしている)

ですが、

甲さん→note社に対して「Aさんの権利を保護しろ」と訴えた

ここで考えてほしいのですが、Xさんやnote社は甲さんに対して、甲さんの何らかの権利を侵害したでしょうか?
第三者である甲さんに対して、Xさんやnote社は特に損害は与えていないのですよね。
(社会的な善悪は別とします)
したがって、甲さんは民事訴訟法上でいうところの「原告不適格」に相当すると推定されます。

noteが明確な回答を避けるのは、これが理由ではないかというのが、私の私見です。

当人が著作権違反を訴えていないのに、第三者が当人に成り代わって主張することは、現行法上は原告不適格として扱われ、提訴しても却下判決が下されるでしょう。
※弁護士などは「法定代理人」としてそれが許されている、特別な人なのです。法律的には当人と同一人物として扱います。

著作権侵害に対して怒る気持ちはよく分かるし、フリー素材に対してぞんざいに扱う利用者も多いのは私も承知しているけれど、第三者がそれに対して声高に著作権を主張するには、法律的には、かなり無理があるという現実も受け止めてもらえれば…。

むしろ、声高に主張して実例を次々に出すほうが、引き合いに出された他人の権利を侵害してしまうリスクが高いかもしれません。
※以前に引用したdobashi氏の件は、あれは薬機法なので刑事訴訟の領域であり、民事訴訟と若干ルールが違うのです。

著作権も頑張れば刑事訴訟に持っていく方法もあるようですが、恐らくこの場合も、「当人が著作権侵害に悩んで、ノイローゼになって正常な活動に支障をきたすほどの損害を受けた=傷害罪?」とか、そういうレベルの話でしょうね。
少なくても、第三者がそのレベルまで悩む…とは思えないし、因果関係の立証がかなり難しそうです。

「noteのコンプラ違反」は色々とあるでしょうし、それに対してある程度主張するのも自由かもしれませんが。
ただ、「第三者のための正義」は使い所を間違えると、さらに別の人の権利を侵害しかねませんから、取り扱いには注意したいところです。





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