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直違の紋に誓って

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実在した二本松少年隊の一人、武谷剛介を主人公とした小説です。 二本松藩がどのように戊辰戦争に巻き込まれ、藩の誇りを賭けて戦ったのか。そして、明治の「西南戦争」は戊辰戦争の敗者にと… もっと読む
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2022年9月の記事一覧

【直違の紋に誓って】~目次・主要登場人物

主要登場人物〈木村道場関係者〉 武谷剛介……主人公。二本松藩士、武谷半左衛門の次男。十四…

k_maru027
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【直違の紋に誓って】第一章 二本松の種子~三春狐(1)

 棚倉城が落ちたが、二本松はまだ白河を諦めてはいなかった。  七月一日、これより先大谷鳴…

k_maru027
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【直違の紋に誓って】第一章 二本松の種子~棚倉城落城(2)

 だが、少年たちの気を落とすような出来事はさらに続いた。  二十九日、西軍は早暁の霧に乗…

k_maru027
1年前
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【直違の紋に誓って】第一章 二本松の種子~蝉しぐれ

 六月半ばになったが、奥羽諸藩は未だ白河を取り戻せずにいた。半左衛門は相変わらず毎日登城…

k_maru027
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【直違の紋に誓って】第一章 二本松の種子~焼香

 翌朝、木村道場はいつものように門下生たちが集まっていた。予定では、今日も杉田村での演習…

k_maru027
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【直違の紋に誓って】第一章 二本松の種子~憎き雨(2)

 剛介が北条谷から帰宅する頃には、既に夕日が山の端にかかっていた。  講師陣が皆戦に出て…

k_maru027
1年前
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【直違の紋に誓って】第一章 二本松の種子~憎き雨(1)

 五日、東軍は白河を奪還するために笹川を出発して須賀川に進んだ。  西軍の猛攻の危機にさらされていたのは、二本松藩だけではない。白河城からわずかな距離にある棚倉藩も、危険が目前まで迫っていた。既に棚倉藩からは急使が来ていて、二本松藩に援軍を求めている。この要請に答える形で、七日には、三個小隊を棚倉へ分遣した。  十一日には、会津の総裁、辰野源左衛門が兵十個小隊を率いて、さらに翌十二日には仙台兵総裁増田歴治、軍事方泉田志摩が十個小隊を引き連れ、相次いで須賀川に到着した。  そし

【直違の紋に誓って】第一章 二本松の種子~白河攻防(2)

白河を西軍に奪われた衝撃は、二本松城下にも走った。  同日にはさらに半隊長成田助九郎、内…

k_maru027
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【直違の紋に誓って】第一章 二本松の種子~白河攻防(1)

 閏四月二十五日に東軍に敗北した西軍は、そのまま白河城を捨て置く訳にはいかなかった。直ち…

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【直違の紋に誓って】第一章 二本松の種子~兄、出陣す(2)

 二十一日、奥羽列藩は書を九条総督に提出した。  今般白河城へ御帰陣御転陣被爲成旨被仰出…

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1年前
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【直違の紋に誓って】第一章 二本松の種子~兄、出陣す(1)

 白河は、古来より奥州入り口の要衝であった。東軍・西軍双方ともそのことは重々承知していた…

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1年前
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【直違の紋に誓って】第一章 二本松の種子~風雲急を告ぐ(2)

 十二日、仙台藩主伊達慶邦、米沢藩主上杉斉憲が岩沼に到着して九条総督に謁見し、会津之嘆願…

k_maru027
1年前
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【直違の紋に誓って】第一章 二本松の種子~風雲急を告ぐ(1)

 新十郎らが会津を救わんと鳩首凝議していた間に、十九日には旧幕府軍が守る宇都宮城が陥落し…

k_maru027
1年前
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【直違の紋に誓って】第一章 二本松の種子~青田ヶ原

 剛介たちの撃ち方の腕前は、みるみるうちに上達した。全員がある程度の腕前になったと見ると、銃太郎は狭い城下ではなく、砲の撃ち方の実演も兼ねて、青田ヶ原の馬場に演習に行くことにした。青田ヶ原は、二本松城下から三里ほどのところにある、開けた台地である。  朝早く、門弟たちが北条谷の道場に集合すると、銃太郎は下男に言いつけて、既に四斤山砲を大八車に乗せて出発の準備をしていた。  今日は、鼓手の小沢幾弥も一緒である。 「よし、城下の者たちを驚かせてやろう」  すっかり木村道場の一同と