献血くん

 献血に行く理由。僕には珍しくいくつもある。一つじゃ腰が上がらないし、痛みを我慢するほどの根拠にもならない。けれど、いくつもの理由を組み合わせて、なんとか、年に何度か足を運ぶ。

理由①「感謝される」
 最近はなぜ献血に行くの?と聞かれたら、「感謝されるから」と答える様にしている。その際努めて綺麗事に聞こえない様に利己的声を意識する。ただ感謝される。それは素晴らしい。嬉しい。
 ちょっと考えてみて欲しい。感謝される事は意外と難しい。良かれと思って、という言葉が示すのはその結果の迷惑だ。サービスはいつかスタンダードになる。感謝される事が確定している事なんてなかなかない。ただ、センターに足を運び、検査を受け、血を抜かれ、少し休憩して、帰る。その間に何度ありがとうと言われる事だろうか。生きてて良いのだ、と素直に思える。

理由②「ジュース飲み放題、アイス無料」
 誰もが考える、献血の魅力の王道はこれだろう。ジュース飲み放題、どころか飲んでくださいと指示される。お菓子が食べ放題のセンターもあるらしいね。そして、僕がよく行くセンターはお礼に17アイスが食べれる。ポイントを貯めれば色々貰えたりもする。控えめに言って楽園。

理由③「長居できる」
 あくまで常識の範囲だが、ある程度長居できる。都市部の駅では、無料で、座って、快適に、時間を潰せる場所はあまりない。その点、献血センターは便利だ。2、3時間ちょっと暇が出来たなって時に、カフェに入るよりファミレスに入るより献血に行く。僕の中では、献血センターとスタバは同じジャンルだ。

理由④「ずっと座ってられる」
 長居できる、と近いが少し違う。座ってられる、言い換えると座ってなければいけない。献血の本番の間は針金刺さっていて、ベッドでじっとしてなきゃなんない。成分献血なんかなら小一時間だ。そんな状況あんまりない。だから、ベッドにスマホを持ち込まなければ、読みたい本とか、考えたい事とか、それだけに集中できる。でも、集中しすぎると、血流が緩やかになって、しんどくなるからお気をつけて。

理由⑤「痛くて怖い」
 針は痛くて怖い。何度行っても針は痛くて怖い。慣れるし、もうどれくらい痛いかは想像出来るし、我慢できる事も分かってる。でも怖い。痛みが怖い時、少し上手に人生の悩みと向き合える。気がする。

何かを欲する時、真っ直ぐにプラスな事だけじゃないけれど、でも、心が少し曲がってるお陰で、我慢をかなり減らせたりして、僕は最高だと思う。僕は最高だと思うんだ。

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