夢幾夜 壱夜目
こんな夢を見た。
秋の暮れの風。澄んだ黄昏の橙色が、そこらここらにまぶし付けられていく。
私は、よく馴染んだ近所の寺の前に立っていた。
昔はよく、そこの駐車場で空がこんな色になるまで遊んだものだった。
懐かしいことだ。
そんな年寄りじみたことを思いながら、件の駐車場へと目を向ける。
そこは。
真っ赤だった。
刹那、曼珠沙華が咲き誇ったかのように見えたそれは、橙色の風に吹かれる度にカラカラと笑い声をあげる。
駐車場を埋め尽くす、赤いかざぐるま。
様々に模様を施され、形も大きさも様々だと言うのに、どれもこれも赤。
眩暈がした。
橙と、赤の世界。
かざぐるまと、風の音。
微かに香る、稲と、枯れ葉の匂い。
眩暈がした。
白い襦袢の妖艶な女が、笑ったような気がした。
濡れ羽色の髪をまとわりつかせて。
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