見出し画像

隔たり

喫茶店に入ってアイスティーのSサイズを頼む。会社帰りに読書をする人や資格取得の勉強をする人、待ち合わせの時間を潰す人などでほぼ席が埋まっている。

誰かしらコミュニティに所属しているものの、この空間は何のコミュニティ性もなく、席の間に設置されたアクリルボードが隔たりを具現化している。

店を後にする人と、入店する人が交差する。飲み終えたドリンクを返却台に置き、店員が回収する。トレイを持った客が席に座り、スマートフォンを覗き込む。

自動ドアから吹く風に紙ナプキンが舞い床を這う。誰にも注目されない造花が壁に整列している。誰にも注目されない個人が、ここではそれが目的であるかのように同じ姿勢で佇む。

マスクをして自動ドアを出ると、エアコンで温められた肌が少し冷える。歩道を行き交う人も皆、隔たりの象徴かのように顔の下半分が覆われている。

創作意欲の支えになります!