夏や髪や

「審神者である私」が生きられるから、短歌でやっているんだろう……と最近はもぐもぐ考えています。

1.        うしろ髪そのたび棄てて人に世に距離置きながら桃食んでいる

2.        最高気温更新今年もするだろう きみも一緒に生きてもらうよ

3.        黒馬なら丁寧に尾の手入れして走り去っても許せるけどね

4.        ざりざりのうなじ恥ずかし 美しい肌はあなたにあるならいいや

5.        雲 とてもはやい ちぎれて ゆく川 か つぎがないことならわかってる

6.        馬とおまわりさんはこの奥にある門や青葉をくぐったんだな

7.        片方の髪を小指に巻かれたりもう片方をゆるく編まれたり

8.        梅は梅 いちめんの夏そばの花大学生のうちに見るべき?

9.        向日葵の声は「でも俺は好きだ」と。じゃあ太陽の数を変えよう

10.     精悍なばかりではない長い長い黒髪のきみの在りがたさ

11.     三つめのアイスの味で悩むなら答えにかなり近いと見える

12.     背の順は一番前になったことなくて空っぽの腰 これからも

13.     簒奪、興味ないです 劇場に田毎(たごと)の月がうつくしいから

14.     歴史という語は一滴の墨になりあなたの水はもうもどらない

15.     現身(うつしみ)は目をあわせずに言祝いで、惨め 睫毛にふれてかえした

16.     桜貝その手をとって眺めると透けてくる鉄どっちもだった

17.     傷に光 ぼうっと神社案内を通し群鳥(むらどり)の影みている

18.     地底湖につながっている目が好きで、記憶装置をひとつ増やした

19.     真夜中の納豆ごはんに抜刀とよぎらば我が尽命遠からじ

20.     充電器ふと砂流(すなが)しのさざ、さざ、 川の遊びの支度しようか