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【Kim06】(2) 読書介入は文章理解力を高めるか判然とせず,そもそも読書介入で読書行動が十分に変化していない……

ふぅ,しばらく【国語世論24】の割り込み記事が続いてしまいましたが,元に戻りましょう。前回の続きです。

【Kim06】論文では,実験グループにも統制グループにも「黙読時の理解方略の指導」と「ペア読み」の指導を学期中に行い,加えて,実験グループの生徒だけは,夏休み中に上記の指導を実践するための環境づくりが行われた,ということでしたね。

実験グループと統制グループの違いがここだけなので,これで事後テストの成績が実験グループ>統制グループとなっていれば,読書介入によって成績が高まったと結論することができるけど,こんなわずかな違いで本当に結果が出るかなぁ……ということでした。


読書介入が上手くいかない……

まずは,読書介入によって,生徒に行動に変化があったのかどうかです。

そもそも,読書介入をしたところで,夏休み中の過ごし方に変化がなければ,言語力にも影響があるはずがないのです。

読書についての夏休み中の過ごし方については,

◎家で楽しみのための読書をした頻度はどのくらいですか?
◎寝る前に本や物語を読んだ頻度はどのくらいですか?
◎本を読んだ頻度はどのくらいですか?
◎両親が家で本を読むのを手伝ってくれた頻度はどのくらいですか?
◎誰かの前で声を出して本を読んだ頻度はどのくらいですか?

という5項目に対して,(a)全くない,またはほとんどない,(b) 月に1~2回,(c) 週に1~2回,(d) ほぼ毎日,の4択で回答した結果の平均スコアで評価します。

ところが,このスコアについて,実験グループと統制グループで統計学的に有意な差はありませんでした。あわわ。

スコアそのものを見ると,実験グループのほうが統制グループよりも高いし,人種差(白人,黒人では差が大きいが,アジア人では差がない,など)もあるので,とりあえず「読書介入によって夏休み中の過ごし方に変化はあった」ものとして論文は進められています。

すでにこの時点で波乱含みです。

読書介入は文章理解力を高める……かも

まずは文章理解力についてです……が,結果は玉虫色でした。

確かに実験グループのほうが統制グループよりも事後テストにおける文章理解力が高いのですが,その差は統計学的に「有意傾向」と言われる,「意味のある差があるかどうか,微妙なところです」というものでした。

(専門家向けにp値を出せば,p = 0.59でした。)

つまり,文章理解力への介入効果があるかどうか,判然としなかったのです。

一方で,先ほどもあった人種の影響もありました。黒人では介入効果は有意であり,ヒスパニック系では有意傾向,白人とアジア系では有意ではありませんでした。

また,子ども向けの本が家庭に50冊未満の家庭と,読みの流暢性課題の成績が中央値以下の生徒たちでは,介入効果が有意でした。

読みの流暢性への介入効果については,どの観点で分析しても有意な結果は得られませんでした。

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続きます。

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