【双子ベビーカーをバスに乗せて】に寄せられる疑問に一気に答えていく
こんにちは、多胎育児のサポートを考える会/フローレンスの市倉です。
フローレンスでは約3年前から「双子ベビーカーをバスに乗せて」というソーシャルアクションを行っていて、2022年6月からは都内の全路線バスでの乗車ルール改正が叶いました。
今日は、この活動をしていると「これってどうなの?」と聞かれることが多い内容に、まとめてお答えしていきます。
〇そもそも双子ベビーカーでバスに乗ると、通路塞がるんじゃないの?
A.車内の専用スペースに置く事で、通路は塞がりません。
〇横幅をとるタイプより、縦型でスリムなものを使えば?
A.横型と縦型では使える時期がまったく違うので、生後半年以上、横型しか選択肢がありません。
縦型ベビーカーは、一方の座席が、腰の据わる半年以降しか使えないものが多いです。
小さく生まれ成長がゆっくりなことが多い多胎児で、移動の命綱となる双子べビーカーが「6か月以上も使えない」前提となるのは、それこそ外出を断念しなければなりません。選択肢がないことを、どうぞご理解ください。
〇一人抱っこ紐で、一人用ベビーカーを使えば?
A.出来なくはないですが、抱っこ紐を解く必要性(例えばベビーカーに乗っている方の子どもが激しく泣いたり、抱っこ時間が長く親の体力の限界が来たり、おむつを替える・ミルクやおやつを与える必要が出てきたとき)に、「抱っこしているほうの子どもの体をいったんどこかに置く」ということが出来ません。
親はバスの中だけでなくお出かけ全体の工程の中で、上に書いたような「うわ、詰んだわ、、」とならないために、2人乗りベビーカーを選択しています。
〇ベビーカーメーカーは、バスでの利用を推奨していないのでは?
A.どの移動器具でも推奨していません。ですがそのための補助器具を設置済です。
車いすも単身ベビーカーも、バスでの移動を想定して作られたのではなく、道で押される事を想定して作られています。
そういう移動器具をどうやったら安心に乗せられるかをバス事業者が考え、実証実験を重ねた結果、いまの「専用ベルトで固定」という方法になっています。
ちなみに、令和2年3月には、国土交通省が「乗合バス車内では二人乗りベビーカーを折りたたまずに使用できるよう取り扱うことを基本とします」という指針を出しています。
これは、「子育てにやさしい移動に関する協議会」が発表した指針ですが、この協議会には日本の最大手ベビーカーメーカーの「コンビ」の代表取締役社長も入られています。
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001372869.pdf
〇車いすが乗っていたら、移動してもらう必要がある?
A.都内を走る多くのノンステップバスでは車いすとベビーカー(一人乗り・二人乗り)が計2台までおける設計になっています。
先日行った意見交換会でも、「先に車いすユーザーが乗車していた場合」のデモンストレーションを行い、安全に乗車できることを確認済です。
自分が乗車しようとしたときにもし先に2台の車椅子もしくはベビーカーが乗っていたら、次のバスを待ちます。
〇タクシー使えばいいのでは?
A.ベビーカーを折りたたむ動作が入るため、乗り降りが非常に使い辛いです。
2019年に私達が行った「多胎児家庭の育児の困りごとに関するアンケート調査」では、多胎児家庭・とりわけ腰の座らない乳児を育てる家庭にとって、タクシーが非常に使い辛いということが分かりました。
折りたたんだ双子ベビーカーをトランクに搭載できるのはユニバーサルデザインのジャパンタクシーなど限られた車種のみなので、流しのタクシーは使いづらいです。そして予約のための配車アプリを使用しようとすると今度は車種指定ができない。。。というトラップ。
また、タクシーに乗り込むために、車内に腰の据わらない二人以上の赤ちゃんをゴロンとさせ、転がらないうちにベビーカーを折りたたんで乗せるというのは大人1人では至難の業。
多胎児家庭がタクシーを気軽に使うのには、まだまだ壁があるのです。
〇混雑する時間帯だと、正直、困惑する・・
A.多くの多胎児家庭は、なるべく運行に影響が出ないように、空いている時間帯に出かけるよう調整しています。
でも、「行かなきゃいけない用事のために公共交通機関に乗って出かける」事は、私達みんながしていることです。
仕事、友人との約束、、、その用事のために、バスに乗って移動しているのは、この疑問を持つ方も、ベビーカーユーザーも、変わらないのではないでしょうか。そしてこれまで述べてきたように、目的地までの安全な移動に必要な器具を選択し、使用しているのです。
足が不自由な方にとっての車いすや、大きな楽器を運ぶためのキャリア、海外旅行に行くかたの大きいトランクケースや同じように。双子ベビーカーだとそれが許されない、、というのは、おかしいと思います。
〇運行に影響が出るのでは?
A.運行スケジュールに影響が出る理由にはベビーカーの乗車に限らず、身体が不自由で乗り降りに時間がかかる、お財布を忘れる・チャージ残高不足などで運賃の支払いに手間取る、道路の混雑状況などさまざまな理由があります。
先日の意見交換会で東京都交通局のご担当者は「相互理解ということでバスのお客様にもご理解頂きながらやっていく必要がある」と話してくださいました。
公共交通機関は、お互いの持つ事情をお互い許容し合って乗ることができてこそ「公共交通」たりえるのだと思います。
以上、私やフローレンスに寄せられる疑問の数々に一気に答えてみました。
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ここまで書いてきて思うこと。
私たちは、明日事故に遭って、足が不自由になるかもしれない。そして遠くない将来、老いて動作が遅くなり、バスの乗降に時間がかかる身になります。
そう考えれば、公共交通機関に乗る・乗れないの問題は、誰もが当事者です。私も、あなたも。
将来「乗り降りに時間がかかるなら、バスに乗らないでくれ」と言われる社会か。
「ゆっくりで良いですよ」「必要なサポートありますか?」と配慮しあえる社会か。
どちらの社会に進むかは、今日の私たちの行動にかかっているのだと、心底思います。
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「双子ベビーカーのままバスに乗れるように」というフローレンスのソーシャルアクションは、当然ですが、フローレンスの収益になることはありません。でも、関わるスタッフ全員が「このままではいけない」「もっと素敵な世の中を次の世代に渡すんだ」という信念で取り組んでいます。
活動にかかる人件費などの多くは、フローレンスへの寄付が原資です。ふるさと納税でも寄付が可能ですので、応援いただけると嬉しいです。
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