見出し画像

多胎児家庭の支援制度をつくるときのポイント


こんにちは、多胎育児のサポートを考える会の市倉です。


5月某日、東京都より各市区町村へ、「とうきょうママパパ応援事業」の実施要綱が通達されました。6月頭には、「東京都ベビーシッター利用支援制度」の要綱も通達されます。


都内では、3月の議会でたくさんの各区議が「とうきょうママパパ応援事業」について取り上げてくださり、行政担当者も「都からの詳細を待つ」との返答が多かったこの事業。ついにその「詳細」である実施要綱が都から区におろされましたので、各区で補正予算の審議が待たれるところです。

画像7


●「多胎児を妊娠・出産・子育てする家庭にとって本当に使いやすい制度」とは?

画像1


しかしながら、導入・制度化されても、その制度を利用する人にとって本当に使いやすい制度にならなければ、意味がありません。

例えば、多胎児家庭にとって本当にたすかるはずの「ファミリーサポート事業」。

こちらの事業は、多くの区で「きまった日程の決まった時間に説明会に行かなければならない」「事前の面談がサポーターの家で実施」というルールになっているため、外出が困難な家庭にとってはそもそも利用が開始できないという非常にモッタイナイものになっています。

都がかなりの力を入れてつくってくれたこの支援が、そんなモッタイナイ制度になってほしくない!!きちんと多胎児家庭にとって「使いやすい」制度になるよう、以下に制度設計時のポイントをまとめてみました。




◯移動支援(24,000円/年のタクシーチケット等の配布)

画像9


多胎児を妊娠・出産・子育てしている家庭に年間24,000円のタクシーチケット等を支給するこの制度。バスや電車での移動が困難な多胎児家庭にとって、大変助かる支援です。

出産後にタクシーを利用して通院や検診に、、というイメージがあるかもしれませんが、多胎児を妊娠した女性は、単胎児に比べお腹が大きくなるスピードが格段に早く、マイナートラブルも多いため、妊娠中にこのタクシーチケットがあると絶対に助かるはず。

画像2


なので、妊娠中から使えるように、母子手帳の交付時、もしくは妊婦面談時に渡せるのがベストでしょう。妊婦健診チケットと同じイメージで、改めての申請は不要&多胎児を妊娠したということを行政が把握した時点ですぐに渡せることが良いと思います。

もし産後に渡すという設計にするならば、出生届を役所に出すタイミングや新生児時訪問のときに持っていく、などの工夫が必要。とにかく、「自動的に」「役所にわざわざ訪問することなく」手に渡ることが必要です。金券と同等なものになるので郵送は難しいかな?と思いつつ、可能であれば郵送で自宅に届くのも有効と思います。


◯多胎児家庭サポーター(2,700円/時のシッター利用補助)

『家事・育児を支援する事業として、3歳未満の多胎児がいる世帯に、利用1時間につき2700円を補助する(年間利用上限は0歳児で240時間、1歳児で180時間、2歳児で120時間。)』というもの。いわゆるベビーシッター、家事シッターです。

こちらの制度についても、まず「こういう制度があって、あなたは使えるよ」ということを妊娠中に伝え、登録を可能にすることが大切です。

画像4


もし妊娠中に登録にいたらなくても、出生届提出時・新生児訪問で保健師等が家に訪問する際に、サービスの紹介や登録までその場で済ませることができなければ、外出が極めて困難になる多胎児家庭には使われない制度になってしまいます。

同じようなイメージの事業である「目黒区産前産後支援ヘルパー」は、電子申請が可能になっていますので、参考になります。

スクリーンショット (128)

また、(ここからは委託業者の範囲かもしれませんが)都度の利用時もスマホで申し込みが完結するようにするべきです。

電話して、利用日を伝えて、OKかどうか折返し電話を待つ・・・ってなったら、2人以上のおむつ替えして授乳して家事して睡眠不足で、、、という合間で申し込みできません。とにかく、スマホ一択。多胎児家庭には、これです。

◯多胎ピアサポート

多胎育児経験者や専門職、子育て支援団体への相談や、双子会などの交流会にかかる費用を215,000円/月補助する、というもの。

画像10

こちらに関しても上記「多胎児家庭サポーター」同様、妊娠中から情報を届け、申請を促すことが必要です。

また、外出が困難な多胎児家庭向けにオンラインでの交流会を企画したりするのも有効かと思います。

実際、このコロナ禍で行政実施の交流会は軒並み中止。そこで有志のママたちがzoom等を使ったオンライン交流会を開催し、同じ経験者同士で情報交換をしあっています。(オンライン双子会についての記事はこちら

画像5

なかなかITを使った業務に弱い行政ですが、民間の力を借りて交流会だけ委託するといった切り分けをしてもよいのかもしれません。

◯東京都ベビーシッター利用支援制度

こちらは上記3つの「とうきょうママパパ応援事業」とは別枠の、「ベビーシッターを1時間150円で月16時間まで利用できる」というもの。昨年度までは待機児童向けの制度でしたが、今年度から一時預かりでも利用できるようになり、在宅子育て層の強い味方となるはずです。(まだ要綱が都から区におりていませんが、現存の待機児童用の枠組とそんなに変わらないものになると予想されるので、先んじて記載します。)

制度の詳細はこちらから。

まず、申請時。既存の待機児童向けの制度だと、来庁もしくは郵送での手続きを少なくとも2回踏まないと利用開始に至りません。たぶん、多胎児家庭はここで気持ちが折れます。絶対利用開始できません。

(↓新宿区の例。2と4に来庁が必要と書かれており、気が遠くなる利用申請です・・・)

スクリーンショット (129)

この手続をオンラインで完結できることがベスト。もしそれが整わないのであれば、郵送で可としましょう。

今回のコロナ禍で「郵送での手続きOK」としている自治体も出てきている(府中市など)ので、通常時でも「多胎児など外出が困難な事情がある家庭に限り郵送での手続きも可」として、HPに明記しておくべきでしょう。(問い合わせたらOKだった、といいうパターンもありますが、明記がポイントです。多胎児家庭は問い合わせる気力、ないです)

そして、この手続きを産後にしなくても良いように、妊娠中から登録できる運用にすることがとても大切です。


★【まとめ】とにかく、「窓口に行けない人がいる」という認識へアップデートを!


長くなってしまいましたが、行政の人に言いたいのは、今までの「窓口に来て申請してください」という考えをもう捨てて下さい、ということ。

(↓昨年行ったアンケートで「自治体の人に伝えたいことはありますか?」という質問に対しての回答。「ママ達が双子、三つ子を連れて役所の窓口に行ったり行事に参加することがどれだけ大変かわかってください」「助けを求めてくるのを待たないでください。行けないんです」と悲痛なメッセージが残されました)

スクリーンショット (133)


これは多胎児に限らず多くの制度がそうですが、特に妊娠中期以降に外出が極端に困難になる多胎児家庭にとっては「ドコソコに行って紙で書いて申請して、、、」というステップがもう本当に無理なのです。そのせいで、せっかくの制度の利用が開始できず、支援の網からこぼれ落ちていきます。

行政のみなさん、お願いです。

妊娠中から情報を届け、登録を促し、申請を家からできるうように制度設計してください。それが、多胎児家庭の切なる願いです。


日々の活動報告は、Twitterにて行っております。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?