見出し画像

パティスリー銀河系への旅 -エピソード1-

-プロローグ-

画像27

この広大な宇宙に銀河系があるように、パティスリーにもまた銀河系が広がっている。銀河系には個性豊かなコミュニティー(星団)が存在し、それぞれに固有の文化、歴史、得意分野があり、それら感じる事で、より深くパティスリーの世界を理解し楽しむことが出来るようになる。

此処で表現されている星団とは、武道などでいう流派のようなものである。
広い宇宙(地球)に各々銀河(各国)があり、銀河に各々星団(流派)があり、星たち(独立したパティスリー)が在る、いづれも個性溢れる超一流の星たち、中には独自の進化を遂げ己の美学に徹するという孤高のブレない星たちも存在する。
パティスリー銀河系に纏わる壮大なエピソードを紐解き味わえば人生に新たなる甘い歓びが待っている。
いざ、遥かなる甘い甘い甘い宇宙の旅路へ!

◾️クラシックは新しい古典伝統菓子星団
(オーボンヴュータン星団)

画像1

パティスリー銀河系最大の勢力。
まだ未開の地であった日本パティスリー銀河系に、本場パティスリー銀河系をも越えんとする圧倒的情景の念による圧倒的熱量と圧倒的職人魂により新たなる時代を切り拓き、祖として君臨するのが尾山台にある河田シェフ率いるオーボンヴュータン星である。
その道を志す戦士たちが各地よりこの星で研鑽を積みたいと集まる聖地、またパティスリーを愛してやまない星人が『時代を生きる味わい』を求め訪れては、口々に「あぁクラシック…」、などと古き良き時代=オーボンヴュータンを感じ想い馳せる聖地、というのはパティスリー全星人類にとって共通の認識だろう。
その特徴は、焼きの技術と伝統に重きを置いたクラシカルな菓子たち、そして華やかなケーキだけではなく、焼き菓子、砂糖菓子、ショコラ、パン、そしてフランスの食卓に並ぶパテやサラダ、煮込みなどからアルコール類まで、まさに日常を彩る全てが詰まっている。特に焼き菓子や砂糖菓子は素朴ながらも時代を超えて愛される滋味溢れるものばかり、訪れる者たちを魅力する。いわばフランス銀河系の文化を日本銀河系に居ながらにして味わえるのだ。
「クラシックは新しい」は一昼夜では成り立たない、長き歴史に敬意を払い、その成り立ち、地方への理解を深めた上にこそ広がってゆく、受け継がれてゆくと言える。
星団には星が広がっている。
光瞬くその星たちは甘美な幸せを生み出す星たち。厳しい修行を乗り越え、職人としての熱き魂と知恵そして技術を習得し、卒業した者たちは、修行の最終仕上げとして本場であるフランス銀河へ旅立つ。
そこで更なる実地訓練を行い、文化を身体で吸収することで、まさに歴史に裏打ちされた自信を引っ提げて日本銀河へと帰還、そして各星(生まれ故郷ないし地方)が生まれる事になる。こうして生まれた新たな星たち(パティスリー)は、各々地域へと根ざし、地域住人たちの日々の暮らしを照らす灯台のような存在として愛されている。

▶︎オーボンヴュータン星(東京都世田谷区 尾山台駅)

画像15

▶︎ロタンティック星(埼玉県さいたま市 南浦和駅)

画像5


▶︎レタンプリュス星(千葉県流山市 流山おおたかの森駅

画像6


▶︎レピキュリアン星(東京都武蔵野市 吉祥寺駅)

画像7


◾️素材以上に素材を口溶けムースモダン星団
(イデミスギノ星団)

画像2

オーボン星団と良い意味で対照的と評されるのが、第二勢力であるイデミスギノ星団。日本星ムース界に位置し、「素材以上に素材らしく」をキーワードに、ムースという究極の口溶け魔法を生み出し、それまでのフランス菓子=重い・甘すぎるを払拭。
驚くほどに軽く、官能的なまでに儚く、しかし味わいは豊かであり、目が醒めるように香りが広がる。その煌めくように尾を引く余韻は、まさに杉野シェフによる魔法。繊細なテクスチャーを擁するその魔法は、一部は星の外へと持ち帰る事を許されない妙技奥義レベルであり、その奥義を会得した星人たちが新たなモダンケーキの星を生み出し瞬いている。
今や京橋のイデミスギノ星だが、元々は神戸にイデミスギノ在りと君臨していた事から、関西〜京都にイデミ星出身の強力な星人たちが存在しているという。

▶︎イデミスギノ星(東京都中央区 京橋駅)

画像8


▶︎グランヴァニーユ星(京都府京都市中京区 烏丸御池駅)

画像14


▶︎パティスリーエス星(京都府京都市下京区 四条駅)

画像11


◾️真実の味わいキレッキレオトナ星団(イルプルーシュルラセーヌ星団)

画像3

第三勢力として弓田シェフ率いる「平成正義の会」がある。令和になったので名前に変化があるのか?はさておき、ドゥニ氏のレシピやオリジナルレシピは、素材の力を引き出し、適宜アルコールを使用することで味わいに奥行きとキレを宿す、そして特筆すべきは香り、香りが解き放たれ長く長く余韻する。
アーモンドの杏仁香、アニスなどのスパイス、フランボワーズなどの果実、とにかくどこかが薫る、薫りが導きアルコールは力強さの相乗効果を与えている。
さらには温度管理に徹底した美学が表れ、この温度にしてから食べて下さい、冷ため、ぬるめ、常温戻し、それぞれに指定がある。さらにフランス菓子としての複雑な味わいの調和を目指しており、総じて大人向け、大人のための味わい=真実の味わいと理解している。

▶︎イル・プルー・シュル・ラ・セーヌ星(東京都渋谷区 代官山駅)

画像21


▶︎茂右衛門星(東京都立川市 立川駅)

画像15


▶︎タンドレス星(京都府京都市左京区 一乗寺駅)

画像15


◾️ルレ・デセール会員一流の中の超一流星団
(甘い旅を約束する超一流星団)

画像19

パティシエ(ショコラティエ)により、「最高の菓子作り」のための意見交換を主な目的として1981年に設立された協会。名だたるシェフたちで構成されている。

▶︎エーグルドゥース星(東京都新宿区下落合 目白駅)

画像17


寺井シェフ率いる最強の帝国。特徴は超一流の技を駆使し築き上げられる菓子なのに、取っ付きにくさが一切なく、誰でも馴染みやすく、細部まで凝っているのに一切難しく感じさせず「素直に美味しい」へと持ってゆく能力。かと言って幅広く無難なステレオタイプかというと、そうではなく、マニアの心を掴んで離さない奥深さや古典菓子への敬意、暖かみのある菓子作りに終始している。この両翼によって力強くそれでいて優しいという素晴らしさを展開、2004年のオープン以来、広く深く支持され続けている。
その他、高価になりすぎない価格設定や、いつ何どき訪れてもショーケースにメインとなるケーキを絶やさない(残っている訳ではなく順次補充している)安心感、神梱包と呼びたい独自のケーキ梱包術を編み出しケーキを持ち帰りし易く取り出し易く資材も最小限で星にも星人にもケーキにも優しいという素晴らしさも加えておきたい。
帝国は完全なるチームであり、シェフ、パティシエ、パティシエール、そして接客販売を牽引するヴァンドゥースたちの連携に圧倒される、常にお星人様で溢れる店内を捌くチームワークは帝国ならではの凄みを感じること必至。

▶︎パリセヴェイユ星(東京都目黒区 自由が丘駅)

画像12

▶︎ユウジアジキ星( 神奈川県横浜市都筑区 北山田駅)

画像19


◾️丘の上へ上へ閑静な住宅街穏やか星団
(街中よりも安息の地でお菓子作りを星団)

画像13

名店は坂道(丘の中腹〜頂上)を登ってこそ辿り着ける。運動がてら歩いてゆくとただでさえ美味しいケーキがより一層美味しく食べられる。
この星々は丘の上という喧騒から切り離された場所にある為、心穏やかに過ごせるのも特徴である。

▶︎パティスリーグラム星(名古屋市千種区猫洞通 本山駅)

画像14

▶︎アンプチパケ星(神奈川県横浜市青葉区 江田駅)※ルレデセール星団でもある

画像23


▶︎ピュイサンス星(横浜市青葉区みたけ台 藤が丘駅)※オーボンヴュータン星団出身でもある

画像22


◾️孤高の骨太ブレない美学星団
(信じるものは自分、美学は美味しいを生み出す星)

画像23

▶︎ブロンディール星(東京都練馬区石神井町 石神井公園駅)
孤高の存在なので、星はひとつだけである。
特徴は決してブレる事のない美学による圧倒的な強さ。
強さとは優しさであり、優しさとは甘えではない。

画像25


自身の信念に基づき展開されるお菓子は媚びるという要素がなく、本当に作りたい物、伝えてゆきたい物を作り続け、それを理解してくれる星人(顧客)だけが来てくれれば良いとさえ言い切っている。そんなことを言われて惚れない訳がない。
一度惚れ込むと止まらないのも、この星の特徴と言える。
何故ならば、他の星では絶対に得られない唯一無二の味わいが身体をそうさせるからだ。藤原シェフの骨太でありつつもオリジナリティを感じる菓子は美学が詰め込まれている。美学とは、揺るぎない信念であり、センスである。
世の流行や世間に寄り添うのではない、骨太の美学。
そういったものは強い。

画像24


どこかに美学という道具がある訳では無い、ただそこに美学という何かがあるのだ。その何かが菓子の味わいを作り出し、そして形作る。
「目指す味わいの、結果としての菓子の形」
なるほど、店の扉を開け、店内に入り、包み込まれるように囲まれ、ひとつひとつのお菓子に目をやると、煌びやかというよりも個々に表情があって味わいを想像させる、そして「綺麗」というよりも「美味しそう」と感じられる。
時が経ってもずっと存在し続けるようなお菓子たち。
この揺るぎない何かに魅せられ、お気に入りを見つけ、胸を打たれたながら通う日々、いつの日からかこの星の住人、ブロンディール星人になっている自分がいた。
ブロンディール星とは移住したくてどうしようもなくなる、魅力的な星なのである。
今日もきっと静かに力強く輝いている。

画像25

-エピローグ-
甘い宇宙(パティスリー)は果てしなく広がっている。
平穏な日々がまた還ってきたその時は、心ゆくまで甘いお菓子を求め、宇宙を巡って頂きたい。地球にもその時がきっと訪れることを願って。

fin.

画像26








この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?