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マ・パティスリーと催事とブロンディールと。 -Another side of-

2019年2月20日、その熱狂は突如として現れ、数々の甘魂者とともにその周囲を巻き込み、駆け抜けるように過ぎ去り、そして元の場所へと還っていった。

甘い聖地、伊勢丹新宿本店「マ・パティスリー」へのブロンディールの催事出店だ。

週替わりのパティスリーというコンセプトの元、地下一階の一等地にバイヤー選りすぐりのパティスリーが毎週出店しているマ・パティスリー、通称マパテ。
様々な地域からアクセスのよい新宿三丁目という場所に、人気・新進気鋭のパティスリーを誘致し人々を甘い誘惑で呼び込むシステム、今では広く認知されユーザーとパティスリーを結ぶ架け橋のひとつとなっている。

そんなマパテに、ブロンディールの催事出店はここ数年続いており、人気の高さが伺えるとともに、事実、出店の度に新しいファンを着実に拡大し続けている。
何よりも担当バイヤーの方が、ブロンディールのファンなのでは?という気さえしている。
例えば、今回の2月のマパテのテーマが「スーパーオーソドックス」というもので、フランスの各地方で長年親しまれている伝統菓子にフォーカスを当て、地域に根ざす素朴な味わいを紹介するというもの。
これはロレーヌ地方にて研鑽を積んだ藤原シェフのブロンディールにピッタリで、普段お店で親しまれている様々な焼き菓子などがそのまま当てはまる。
まさにテーマに沿うブロンディールは2月のマパテ特集の中核を担うかのように、伊勢丹通信FOODIEにも大きく紹介され、伊勢丹食品系ユーザーの心を躍らせた。

話は逸れるが、クリスマスケーキも記憶に新しい。
2017年はカタログの巻末を大きく飾りその年のテーマに一番沿ったケーキが話題を呼び、2018年はメインビジュアル・メインテーマがまさにブロンディールそのものだった。いずれも予約開始から間もなくして完売したのが記憶に新しい。


そしてマパテの売り場づくりも変えている。(と思っている)
従来は生菓子つまりケーキがメインだった。でもここ1−2年は焼き菓子やパン、タルトなどにも構成を割くようになっている。
キャッチーさで言えば圧倒的にケーキなのだが、お店の本来持っている持ち味を活かした商品構成は、より本質的な意味での関係を作り出すことを可能にした。

集客出来る“強い”お店や拘りのある“芯”が貫かれたお店ということに加え、自身が惚れ込んだお店こそ世間に広く紹介したいという想いが働くのではと思っている。

もはやブロンディールはマパテの常連となりつつあった。常にそれがつづくとは限らない。今回からしばらくの間は催事への出店を休止するいう。
小規模なパティスリーにはマパテへの出店は負担になる。
目の届く範囲の菓子作り・店舗運営を臨む藤原シェフの決断。
日頃から石神井公園の店舗へと足を運んでいる私も、それを惜しむように通った。(催事期間7日間のうち4日間通った。実は急用が入り1日減ってしまった。)

ブロンディールはとにかく愛されている。

マパテという空間でもいつも人気者だった。
催事を心待ちにしていたブロンディール好きの皆さん、お父さんともすっかり馴染みで意気投合しているスタッフの皆さん、そして7日間を朝から晩まで、いつものあの笑顔と優しさと気さくなオーラで皆んなを虜にして走り抜けていたお父さん。そんな姿を見ていいなぁと思ったり、閉店間際になんとか駆けつけてはほぼ売り切れ状態のショーケースを見てこれ以上なく喜んだりしていた。

大盛況で終わった2019年早春のマパテ催事、本当におつかれさまでした。ありがとうございます。

最後に、記録として私がマ・パティスリーで購入した菓子たちを振り返りたい。

①タルトミラベル
②タルトグロゼイユ
③フレジェ
④ムラングシャンティ 
⑤タルトタタン
⑥ブルジョネ
⑦モンブランセゾニエール
⑧デリスピスターシュ
⑨サンマルク
⑩タルトグロゼイユ・アントルメ


特に印象深く残っているのが、⑩タルトグロゼイユのアントルメ仕様。
これが今回のテーマにもなっている「ロレーヌ地方」に沿った目玉商品なのだが、最後の最後まで買うかどうかを迷っていた。というのも、アントルメといってもパーティーを開催する訳でもなく、ひとりで食べるのだから胃のサイズと要相談だったりするわけで、プチガトーで充分なのではないかと。
時に運命を感じる出会いがあるとすればこの時だ。
ほぼ空っぽになったショーケースの中で目が合った。
グロゼイユの赤い粒々がつぶらな瞳でこちらを見つめてくるのだから、もう放っておくことは出来ない。
大きな袋を手にして大切に家路へと着いた。

タルトグロゼイユとの出逢いは何年も前になる。
ブロンディール本店で昔から居た。
鮮烈に赤くでも苺のような華やかさとは違い、静かにショーケースに居た。
ずっと選ぶ勇気がなかったが、ある日試してみた。
とてつもなく酸っぱいとは聞いていたものの、未知の存在だった赤すぐり。通常、フルーツのタルトといえば、苺やメロンや葡萄という認識で、つまりフルーツ自体の甘くてジューシーな美味しさをそのまま味わうもの、という認識だった。それがグロゼイユは艶を施されているものの、どこか幼少時代の野原を思わせる野生を感じる風貌で、味わいは未知のもの。

初めてタルトグロゼイユを口にした私はあまりの酸っぱさに、ウソだろう?と思い、追ってやってくる「渋み」に完全ノックアウトだった。
これがボトムのタルトダマンドと一緒に口へ運ぶと印象はガラリと変わった。
酸味と渋みは、甘さと芳ばしさとの間で和らぎ、素朴なおいしさとして口の中で一つの味わいを形成する。馴染みのない程よい刺激が逆にフランスのエスプリを感じさせ、フルーツタルトの新たな可能性を知るとともに、ロレーヌ地方で日常的に親しまれる郷土菓子として深く印象に焼き付くこととなった。
だからこそ、こうしてアントルメとして登場したことが感慨深くある。
プチガトーとしてのタルトグロゼイユが普段は中々スポットが当たらない、どちらかというと地味な役だとしたら、アントルメとして伊勢丹のショーケースを堂々と飾ったことは快挙だ。
それは、普段から流行に左右されることなく、ブレずに自身の信じる菓子を作り続け、「これがブロンディールだ」という信念で提供を止めないからこそだと言える。


今回のマ・パティスリーのテーマ「スーパーオーソドックス」は、まさにそんな藤原シェフの信念が店から波及し、人の心を動かし、催事という大舞台へと昇華された賜物なのだ。

to be continued...



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