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【研究進捗】ベーシックインカムによる働き方改革の実現可能性


6/1 5月の研究進捗

・租税回避行為への対策(OECD・G20「BEPS包摂的枠組み」がとりまとめた対処案)

(出所)岡 直樹(2020)タックスヘイブンと闘いと国際租税法
―新課税権とグローバルミニマム税―

Googleは高収益の契約を遠隔地であるアイルランドの子会社に締結させることで、多額の売上をアイルランドで計上していたが、結果的にGoogleは当局の追求を受けてフランスでの納税義務を認め、計1175億円を支払うことで和解した。この事例に沿って上記の対処案を整理すると以下の通りである。

①フランスの顧客に対する売上高に応じて定式的に計算された金額が拠点の有無に関わらずフランスで課税できる所得として配分される。(納税義務者はアイルランド法人)

②アイルランド法人の税負担率が国際的に合意されたグローバルミニマム税の水準より低い場合、Googleの母国であるアメリカでミニマム税の水準まで追加課税できる。(納税義務者はアメリカの親会社)

③仮にフランス法人からアイルランド法人に利益移転が行われていた場合、フランスにおいて外国法人であるアイルランド法人の所得について実質的な課税を行うこともできる。

②のグローバルミニマム税については、2021年にOECDで導入が決定され、2024年4月1日以降開始の事業年度から適用が開始される予定である。(OECDモデルケースでは税率15%)

・租税回避行為への対策でどれだけの財源が見込めるか
 ガブリエル・ズックマン著書の「失われた国家の富」のなかで世界全体の家計の金融資産は9500兆円で、そのうち租税回避地に少なくとも8%である760兆円、そして、その8割にあたる611兆円が税務申告されていないと申告されている。このうちの611兆円のうち何%が本来日本に納税されるべき金額なのかが不明であるため、今後の研究でここの具体的数値を出していく必要がある。

 ・労働の価値
65歳以上の高齢者の就業率のデータから多くの日本の高齢者が老後も働き続けている現状があるが、働く理由として「生活費を得たい」「生活の糧を得る」と回答する人が多い状況から、歳をとっても働きたいというわけではなく就労に追い込まれているという方が近い。その原因として、通俗道徳と「勤労=生存」が重くのしかかっており、勤労をせずに誰かに頼ることは恥ずかしいと受け取られていると考えられる。ベーシックインカムが実現しない理由の1つが、「労働=生存」と通俗道徳となっており、これを否定するわけではないが、人間を就労に追い込むための脅迫的な観念として作用しているのであれば労働の価値・生存の価値を下げることになりかねないため、「労働=所得=生存」ではなく「労働=?=生存」という形で?に入るものを追求する必要がある。

【展望】
 租税回避行為への対策によってどの程度の財源が確保できるかは今後具体的に算出していきたい。しかし、算出したとしても財源は満たされないと考えられるため、先月の展望同様に他の調達方法を探す若しくは代替案を考える必要があると考えている。
 職業選択の要素に収入が大きく関わっていることに加えて、65歳以上の高齢者が就労に追い込まれていると考えられるデータが得られた。このことから、生活保護のような制度があっても、他人からの目・評価が制度の利用の障害となっていることがわかった。他人の目を気にしなくてもいいという点からもベーシックインカムは有効であり、働かずにお金を得ること(生活保護やベーシックインカム)が悪というような世間体の考え方にどうアプローチすることができるかについて今後考えていきたいと思った。

5/11 4月の研究進捗


1.     財源
必要総額:約100兆円
歳出削減・富裕税導入を行っても50〜60兆円不足
→租税回避行為への対策を検討
日本では昭和36年税制調査会資料「国税通則法制定答申」で実質主義を国税通則法に規定するべきか否かを国内問題として検討した経緯があるが、導入には至っていない。GAARについてはすでに導入している国も多く、日本は少数派であると言える。日本には一般的に租税回避の否認規定となるGAAR(包括的否認規定)は存在せず、税法における特定の税目或いは適用範囲における特定目的型租税回避否認規定が存在する租税回避に対する対抗策としての制定法は以下の通りである。
「個別否認規定」
(法人税法)役員給与等(同法34条)等
(租税特別措置法)国外関連者との取引に係る課税の特例(同法66条の4)等
「特定目的型租税回避否認規定」
同族会社の行為又は計算の否認(同法132条)、組織再編成に係る行為又は計算の否認(同法132 条の2)、連結法人に係る行為又は計算の否認(同法 132条の3)、外国法人の恒久的施設帰属所得に係る行為又は計算の否認(同法147条の2)

4月に読んだ文献では租税回避行為への対策によって具体的にどれくらいの財源が確保できるか把握することができなかったため、5月はそこを明らかにしていきたい。また、研究を進めていく中で実現可能性が極めて低いことが明らかとなっているため、代替案を考えるなど、方向性を転換していく必要があると考えている。

2.     働き方改革
日本における「熱意あふれる社員」の割合→約6%(139カ国中132カ国)
現在の仕事に強い不安やストレスを感じている人の割合→約53.3%
など、現状把握は済んでいる。

・4月に読んだ文献で得た働きがいの定義
「単なる職務満足という狭義の捉え方ではなく,働くことの楽しさや働くことの充実感という仕事そのものから得られる満足感と仕事をすることによって得られる報酬に対する満足感を意味する」
「働き甲斐とは,その人の仕事生活の中で,職務満足感の重要な構 成要因である能力の十分な発揮や成長,達成感,充実感などを感じることができ,そして,それが自己の人生の肯定に繋がること」
「働くことにより生活の安定や社会との結びつきを実現するだけでなく、仕事や所属組織が自分の適性や価値観に合っており、仕事や組織を通じて能力を十分に発揮できかつ人間として成長でき、併せて働くことに達成感や充実感が生じ、仕事や所属組織自体に誇りを持ち、仕事や所属組織に満足している主観的状態」

これらの定義を参考に5月中に「やりがい」という言葉の定義付けを行いたい。
また、何を持って働き方改革が達成されたとするか、研究のゴールについても定めたいと考えている。(働き方改革という言葉が曖昧)


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