妄想:食べられる基軸通貨

202X年、腐食しない有機金属化合物に人間の栄養素となる様々な有機物を添加させ、微細な繊維に加工し織り込んで紙のように生成できる科学技術が発表された。(仮称:可食紙)

一方、基軸通貨の定義である「通貨発行国が国家が消滅したり壊滅的打撃を受けない」「発行国はいつでも望む財と交換できることを保証」「通貨価値が安定していること」が揺らぎ始めていた。アメリカ合衆国の内部分裂により、通貨の評価が世界で不安定になり、信用不安が増加していった。同時に、一党独裁で党最高権力者支配の国は政治の安定とともに経済が持ち直し、世界はこの国との貿易で成り立つようになる。(仮称:C国)

C国科学技術院は、可食紙に興味を持ち世界貿易の中で貧困にあえぐ途上国へ試験的供給を行った。供給された途上国では、可食紙を交換する動きが出始め、飢えをしのぐために可食紙を分け合う風習が醸成されていた。

C国地方でも可食紙を配布し、人々はどのように可食紙と向き合うのか実験を行った。途上国とは少し違うが保存食として流通し、足りない食料の代わりに交換し合う習慣が定着した。

貨幣として流通する可能性を見出したC国は、可食紙の金属部位に情報を入出力できる機能を備えて、添加する有機物の種類や量に応じて価値設定をおこない、途上国へ配布を始めた。

途上国では、食料として流通し貨幣としての役割も担った。隣国での普及はその隣国に波及し、C国の可食紙幣の発行数は指数的に伸びていった。途上国を原産地として貿易している国々も、可食紙による決済を余儀なくされ、世界貿易での基軸通貨の流れを作っていった。

ブレトンウッズ協定以来の基軸通貨であるドルは価値を下げていき、この危機に目覚めたアメリカ合衆国は可食紙とドルの交換を禁止する政策を行う。もともと、アメリカ合衆国のスタートアップが可食紙の発見を行っていたため、C国を特許侵害で訴えようとするが、可食紙の可能性を世界に広めたいスタートアップ創業者は「特許申請を取り下げオープンソースとする」旨の宣言を行った。

世界から歓迎された可食紙は、どの国でも発行できるようになり、世界での発行数管理や可食紙の金属・有機物含有量などの検量を行う組織をつくり、基軸通貨として世界で共有できる仕組みと仕掛けを構築した。

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今日は、勤労感謝の日。わたしは、働いてお金がもらえるこの文化の下に生まれて幸運だと思っています。仕事環境や報酬料についは、諸々思うところありますけれど(笑)。

以前の記事にも書きましたが、どうも、基軸通貨が気になって仕方がない。なにがどうとも言えないのですが・・・。だから、妄想に妄想を重ねたら、"
可食紙で基軸通貨" なんてものに出くわしてしまいました。

まぁ、ニンゲンは「たべられてなんぼ」の生き物ですから、大昔の物々交換で穀物が貨幣として流通していたのに起因するのも致し方ありますまい(拙い妄想の単なる言い訳です)。

働いて報酬もらって食料を買い込んで日々何とか生きている。感謝すると同時に、明日食べていけるのか、やっぱり、どこかで不安である今日この頃です。

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