妄想:熱狂が熱狂を生む

今年は、選挙の年。世界中で選挙が行われるのですが・・・

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熱狂に応えて波を大きくする候補が勝つ。それが、今年の選挙の法則。有権者は、熱狂に熱狂し、我を忘れる時間を求める。最大級のエンターテイメントである。「大きい波に乗っている。自身は素晴らしい。」、そう思える瞬間を求めている。

日常のエンターテイメントが不足している。だから、より大きなイベントに身を置くことで自身も大きくなった錯覚を味わいたいのだ。かりそめの共感が心地いい。物足りない日常から脱却できる瞬間だ。

大きい波は利益を伴う。何度となく押し寄せる熱狂の波の頂点で売り抜ける。小さな沈み込みには手を出さない。前回よりも大きな波は必ずやってくる。熱狂の大波を煽れば利益が出る。この大風は利益を膨らませて、なお、荒れ狂う。

良心的な者たちは大波に揺られながら暗闇へ沈んでいく。自身の重さが災いとなる。「責任の重さ」で熱狂を乗り切れないのだ。大風に背を押されても前にはなかなか進めない。浮かないし、動けない。

ただ、沈んでしまえば表面の荒れ狂う世界より静かでいられる。ほとんど動かず静かに沈みつつ、息が続く限り表層の世界の狂乱を客観的に観察することができる。

もう息が続かない。あきらめかけたその時、群青の深みに閃光がとどく。上の世界が二三度瞬いたと思ったら、ほどなく凪いで行った。何が起こったのか。最後の力を振り絞って浮上する。

漸く顔を上げて呼吸ができた。そして、海原を見渡すと、そこかしこに塵芥がぷかぷかと層をなして浮いていた。あの利益を生んだ大風もぴたりとやんでいる。熱狂の残滓が浮いているだけだ。何とも言えぬ悪臭がある。栄華を極めた後の腐臭である。

腐臭に悩まされながら、大きく息を吸い込んで、再び、沈降する。なんどか、繰り返すうちに、穏やかだが毅然とした風が吹き、残滓を徐々に払っていく。腐臭もなくなり、最後の浮上で、落ち着きを取り戻した。そして、あの熱狂を深く考えた。

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日本では、元日から大きな災害が発生しました。二日は航空事故が発生しました。命を落とされた人々に心より哀悼の意を表します。

今年は、大きく動く年になる予感がします。いままでの価値観も真偽も逆転する可能性がある、そう、妄想しています。戦争を必要悪と認めたり、闇雲な情動が社会を変えようとしたり、落ち着きのない空気が流れるのかもしれません。偽物が大量に出回れば、それが真になる。嘘を繰り返せば本当になる。そんなことが身近に起こる予感がするのです。良心を抱きながら客観的な観察をする多くの人々は、どんな動きをするのでしょうか。そこが、見通せない。

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