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コラム vol.1 「生菓子・半生菓子・干菓子」

  「和菓子を未来に残していいですか?」

 こんにちは、岸和田風月堂で働く人 K子 です!この度、僭越ながら【和菓子を識る】というコラムを執筆することになりました。

 お時間のある時に一読いただけたら幸いです。

■ はじめに


 この記事では

  ・和菓子と洋菓子の違い
  ・和菓子は3つに分類できる

         について説明をしています。


■ 和菓子と洋菓子の違い

 「和菓子と洋菓子の違いってなんですか?」と問われた時、あなたならどう説明するでしょうか。
 昔から日本にある?見た目?使い方?と様々な理由が浮かぶと思いますが、一番の違いは原材料にあります。

 洋菓子といえば卵・バター・牛乳・ゼラチンなど動物性のものが多く、和菓子は豆類・米・麦・寒天と植物性のものを多く使います。ですので、どうしても洋菓子はカロリーと脂質が高く、和菓子は糖質が高くなります。

 そもそも『和菓子』という語は、明治時代に西洋から伝来した 洋菓子 に対してつけられた当時の造語でした。それより昔は、菓子は当然のように国内・郷土由来の菓子であったため区別する必要がなかったのですね。
 しかし近年はどら焼きに生クリーム、チョコレートに大福など洋の素材を積極的に組み合わせるものもあり、原材料だけを見ても和と洋の境目があいまいになっています。

 見た目に関しても大福といえば餅・求肥であんこや具を包むものでしたが、今や“オンザ大福”の形が観光地を起点として増えています。
 ショートケーキのような、いちごオンザ大福のスタイルが流行りのフルーツ大福がわかりやすい例かもしれません。

 時代の流れとともに様々な発展を遂げた和菓子は、その枠を超えて『和スイーツ』『和洋菓子』『洋和菓子』といった新ジャンルとして再形成されています。


■ 和菓子の分類について

 一般的に和菓子は製法(焼き物、揚げ物、蒸し物、押し物、練り物、あん物 etc) と、出来上がり直後の水分含有率で決まる保存性で3つに分類ができます。

  生菓子:水分含有率 30%以上
 半生菓子:水分含有率 10~30%
  干菓子:水分含有率 10%未満

 例えば流し物や練り物として製作される ようかん でも水分量が少ないものは半生菓子に、水分量が多いものは生菓子に分類されます。

 当店の 玉時雨 も蒸し菓子ですが、分類は和生菓子です。

 同じ“ 時雨 ”を作る和菓子屋でも、原材料や手順が違うことで半生菓子や干菓子に分類されたりもします。

名物 玉時雨と看板娘のお福さんです。

 ・生菓子

 代表的な菓子は、饅頭・練り切り(煉切)・餅・どら焼・ういろう・大福・団子 など。

 その日の朝に作り、その日中に売り切るよう仕立てた生菓子を朝生菓子(あさなまがし)、朝生(あさなま)と呼びます。

2023年 3月初めの和菓子ケースの場合…
うーん朝生。

 このように、草餅・大福・団子など聞きなじみのある生菓子のほとんどは朝生菓子です。


 四季折々の花鳥風月を菓子に織り込み造形した生菓子を主菓子(おもがし)、上生菓子(じょうなまがし)、上生(じょうなま)と呼びます。
 定番のデザインから、近年は革新的・独創的な和菓子も増えてきています。

 2022年10月12日には "菓銘をもつ生菓子(煉切・こなし)" が、文化庁の審査を経て「登録無形文化財」に登録されることが決まりました。

 菓銘は上生菓子の名前のこと。季語のようなものと覚えてもらえたらいいと思います。

季節のうつろいを表現するのが上生菓子の特徴です。
紅葉の名所として有名な竜田川です。

「千早ふる 神代もきかず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは」 在原業平朝臣
「嵐吹く 三室の山の もみぢ葉は 竜田の川の 錦なりけり」 能田法師
「竜田河 錦おりかく 神な月 しぐれの雨を たてぬきにして」 よみ人しらず

 背景を思い浮かべると、和菓子の中にまた違った面白さが見えてくるかもしれません。

 ・半生菓子

 代表的な菓子は、最中(もなか)・ようかん・石衣・カステラ・すはま・若鮎 など。

 半生菓子は生菓子と干菓子の中間にあたる菓子です。

泉州祭最中

 水分量10%〜30%と和菓子により賞味期限の幅が広くなるのですが、その反面自分好みのしっとりさを追求できるという魅力があります。

 カステラは洋菓子と思いきや、実はポルトガルから伝わった南蛮菓子が日本独自に発展した菓子であるため、和菓子にカテゴライズされています。

 ・干菓子

 代表的な菓子は、せんべい・かりんとう・あられ・おかき・あめ・落雁・金平糖・ボーロ・せんべいなど。

 水分量が少ない干菓子は日もちがするのが特徴で、進物用にもおすすめです。

四つ屋根だんじり(せんべい)

 生菓子に比べて一見地味とされることが多い干菓子には、純粋な美しさがあります。

吹き寄せ


 例えば吹き寄せは数種類の一口せんべいを盛り合わせた、さまざまな木の葉が風でひとところに吹き寄せられるさまに見立てた菓子です。

 干菓子は材料や製法の手段が限られており、だからこそそのものの味や歯触りの部分に職人の繊細なこだわり、技術がうかがえます。


■ さいごに

 前述したように作り手の数ほど種類が豊富といわれており、日々多様化している和菓子はきっちりと分類することが難しいとされています。
 日もちに関しても、現在は和菓子製造の機械化、保存料や添加物の普及により大きく変わっているところもあります。

 そんな和菓子を実際に食べながら、菓銘の意味や洋菓子との違いなどを考えてみるのも楽しいかもしれません。
 皆様のワガシスト(和菓子愛好家)への第一歩となりますように。

 次回は「和菓子の歴史」をお届けいたします!

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【参考文献】

青木直己『図説和菓子の今昔』
佐伯梅友『古今和歌集』
鈴木晋一、松本仲子 訳『近世菓子製法集大成 1』
鈴木晋一、松本仲子 訳『近世菓子製法集大成 2』
虎屋文庫『7号 特集「歴史資料と和菓子」』
中山圭子『和菓子ものがたり』

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 大阪府岸和田市にある「岸和田風月堂」では、多数の和菓子を製作して皆さまのご来店をお待ちしております。
 四季を彩る手づくり和菓子をぜひご賞味ください。

御菓子司 岸和田風月堂
大阪府岸和田市本町4-4 紀州街道沿い
営業時間:8:30〜18:30
 定休日:木曜日(祝日は営業します)

車でお越しのお客様はお近くのコインパーキングをご利用くださいますよう、お願いいたします。

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