見出し画像

【Keio Fashion Creator×瀧定名古屋】繊維商社の実態をインタビュー Part1

今回は、昨年度に続き今年度も生地を提供していただいている瀧定名古屋様の3名にインタビューを行い、繊維商社の仕事を紐解いていく。

瀧定名古屋
150年以上の歴史を持つ繊維商社。
課別独立採算制のもと、様々な営業部門があり特色のある30近くのセクションによる専門分野に特化した提案、大胆な決断力、スピード力のある対応でテキスタイルやアパレル製品を扱う。

泉直宏/アパレル部56課
吉森美月/婦人服地部11課
川本仁一郎/紳士服地部10課

ー各課での成果物はどのような手順で生まれますか?

泉:

アパレル部は、生地を売ると同時に、どんな洋服を展開するのか形を決めるために企画担当者と一緒に商談に行き、ファーストサンプルとセカンドサンプル作って、量産して、お客様の店舗に納品するまで、全部一貫して携わっています。
服の素材から納品形態、畳み方、ハンガーのかけ方まで細かく教わるので、服のスペシャリストじゃないですけど、色々と勉強させてもらっていますね。 「10年経っても製品部は1人前になれない」って言われるくらい本当に覚えることも多くて、毎日トラブルが起こりえるような仕事をしています。

吉森:

生地部の11課は営業はもちろん、企画にも携わることが多く、 営業とデザイナーと課長で企画を組むことが多いです。海外や尾州の産地に行って商品をピックするところから、 売れる商品を課の会議で検討して、うちの商品として販売し、お客様にご提案し、サンプルを作って、量産に行くところまでが仕事の流れです。

川本:

生地部なので基本的には11課と一緒です。ただ10課の場合、今までデザイナーがいなかったので、企画は全部営業メインでやっていたのが1番の違いですかね。 自分自身で企画しているものもありますし、次の25AWに向けて国内外の産地に行ったりします。メーカー様が提案したものをピックアップすることもあれば、こっち主導で作ることもあるので、企画に携わる幅というか深さは1番あると、個人的には思います。

ー瀧定名古屋様の繊維商社としての強みは何だと思いますか?

吉森:

生地部の強みは商社でありながら商品を在庫としてリスクしているところですね。通常だと、生地を生産するためにはロットが必要で、小規模なブランドさんだと、どうしてもそこまでのロットをこなせないんですけど、商品によっては30色〜40色在庫をリスクしているので、小規模なブランドさんでも選択できる幅の広さが強みです。 婦人服地部では、 インフルエンサーのブランドに特化している新規先チームがあり、小さいところから大きいところまで、いろんなブランドさんに接触できるのは、瀧定名古屋の生地部の強みだと思います。

泉:

社内の別の課から生地を買うこともあります。他の生地屋さんだと「ごめんなさい、これは8反からしか染めません」とか、「1.5か月かかります」ってなるのが、吉森さんの課に相談すると「あります」ってすぐ出荷してもらえるので、本当にありがたいです。

ー売れそうな生地を予測してリスクする量を変えるんですか?

吉森:

そうですね。毎回会議で「この品番売れてきたから事前に在庫を積んでおいた方がいいんじゃないか」とか、逆にウールコートが今年売れてないのでそこは去年より少なめに発注しようとか調整をしています。

ーやはりトレンド把握がカギなんですね。トレンドリサーチはどのように行っていますか?

泉:

市場リサーチが1番かもしれないですね。どこのブランドが売れているか、ポップアップしているところを見に行くとか。僕は週の後半で東京出ていることが多いので、店頭周って売れ行き状況とか新ブランドとかは常にチェックしたり。ポップアップしているところに名刺を持って行って、商売に繋げてみたいなことは結構やっています。

吉森:

生地部は、コレクションとか結構見ています。デザイナーさんはコレクションからインスピレーションを受けてデザインを考えるので、コレクションチェックは欠かさないです。最近だとmiumiuからグレーのダンボールのパーカーみたいなアイテムが出ていたと思うんですけど、問い合わせが凄く来てて。うちで取り扱いがあるダンボールの素材が結構動いてたりするので、そういった発注に早急に対応できるように予測しながら商品をピックしています。
あとプルミエール・ビジョンっていう世界一の生地展が毎年2回パリで開催されるんですけど、 世界の生地メーカーが出展する展示会で、それぞれ独自のトレンドを研究して出しているので、傾向が見えるんですよ。そこから自分たちなりに分析して、それにハマる素材をリスクしています。

ートレンドという観点を含め、今一押しの素材はありますか?

川本:

『37.5』というシリーズを10課から展開していて、 調湿をメインとした素材です。暑くてジメジメしている時の不快感を解決するために糸に火山灰が練り込まれているんですけど、汗になる前の湿気を生地が吸って、それを外に出してくれるんです。だから衣服内は基本的にカラッとして快適なんですよ。

泉:

服の中の温度が37.5度が1番気持ちいい温度って言われていて、それを湿度コントロールで保てますっていう機能の素材ですね。

吉森:

11課ではポリ乳酸っていう素材に注目しています。
ポリエステル を目指した完全に新しい素材で、捨てられちゃうトウモロコシとかサトウキビの茎を加工して糸にして織ってるんですけど、ポリ乳酸自体に抗菌防臭の作用や肌に優しい弱酸性を保つ力がついていて加工が必要ない素材です。プルミエール・ビジョンでも、ポリ乳酸を開発する会社と瀧定名古屋が協働で別ブースからの販売もやっていて、海外のお客様を中心に今かなり広がっている商品になっています。水の使用量が綿と比べて少なく、Co2排出量もポリエステルと比べて削減できるので、サスティナホットな素材でもあります。

左奥から、川本様、吉森様、泉様

ーサステナブル関連で企業としてほかに何か活動されてますか?

川本:

10課では、今マーケティング戦略室でreプロジェクトを行っていて、リサイクルウールを展開しています。RE:NEWOOL リニュール®っていう商標の生地があるんですけど、製品回収したものをボロボロにして、混合して紡績して、糸にして、生地にしたものを売っています。サステナブルな取り組みなので、10課だけじゃなくて全社的なプロジェクトにしようっていう動きがあります。

ー触ってみてもいいですか?

泉:

普通にウールですよ。違いがわかんないですよ。

RE:NEWOOL リニュール®

川本:

回収した服を職人さんが、ウール混率80パーセント以上という規定に沿って、触って仕分けします。それをまた色ごとに分けるのですが、そこは本当に「職人技」というか。色も30色以上に分かれていて、白は白でも、生成りもありますし、ものすごい細かい作業をしています。

吉森:

11課も似たように衣類を回収して、色分けして生地化する活動をしていますね。

川本:

リサイクルって結構値段が上がることが多いんですけど、リサイクルウールのみ唯一値段が下がるっていう不思議な現象が起きています。

泉:

結構手頃で使わせてもらっていますね。お客さんもエコの素材を求める声はここ2年ですごく増えたので、サスティナブルはもうアパレル業界で当たり前ぐらいにはなってますね。

ーキャリアパスや成長の機会について瀧定名古屋さんの特徴を教えてください。

泉:

人それぞれ、違うんですけど、僕がぱっと今、7年経って思ったのは、 若手の時から裁量が大きいです。もうそれこそ2人は4年目でもう課の主軸としてやっていますし、1年研修して何もしてないっていう会社ではないので、すぐに即戦力として働けるところに成長の機会があります。ただ、製品部はすぐにお客さんの前出ても、こっちは素人なんで全然わかんない。そういう時は先輩についてきてもらったり、企画の人に頼んだりとかして、話しながら知識を増やして働いていくので、5年経てばある程度のところには1人で行けるようになります。

吉森:

私も裁量があるところだと思います。本当に若手の時から裁量は大きくて 。結果として商品立ち上がりまではいかなかったものの、1年目の時から柄とか組ませてもらいましたね。
今4年経って、自分でラメのストライプ柄において色味や糸を組む段階から作って。それは展示会で新作発表する時でも評判良かったので、今商品として販売させてもらっています。
普通の会社だったら、4年目ではなかなか開発に携われない。瀧定名古屋の特徴が『課別独立採算制』といって課長が会社の社長みたいなけっさいけん がある。なので課長がオッケーさえすれば1年目からなんでもやらせてもらえます。

泉:

だから課ごとに別会社と思ってもらった方が!

吉森:

確かに、全然違いますよ。

泉:

11課から生地を買ってるし、10課からも生地買ってるし。だから同じ社内といえど ちゃんとそれぞれ課で売って利益得て、お金のやり取りをしてます。

吉森:

お客さんのとこで10課の生地と11課の生地がバッティングして、どっちがいいかとかなることもあって。
この生地いくらで仕入れてるとか、そういう詳細は暗黙のルールで明かさないというか、ある意味別会社感があるという、独立してやっています。

泉:

製品課も製品課で、違う課と一緒に1個の商品の枠でバッティングにも結構なりやすいので探りは入れます。「ちょっとあそこどう?」「俺来週行くけど。」みたいな感じで課ではバチバチ。
それぞれの個の集合体が瀧定名古屋なんで、それも1個の強みかもしれないですね。僕は1年目から4年目まではメンズのコート部隊にいたんですけど、コロナが流行ってからブランド営業やれって言われてブランドの営業をやってた時期もあったので、本当になんでもやりたいっていったらできると思います。

川本:

なんでもやれるのが成長の機会につながるのかなっていうのは思っていて。それこそ10課だったら一部製品で商売していることもありますし。僕個人で言うと、それこそ37.5の糸で靴下作ろうとしていたりとか、ファッション業界って日常着もあればユニフォームもありますし、本当に自分が何やりたいかだけでガラッと変わるかなと思います。

泉:

製品課もある中で、生地課も生地課でそうやって動いたりもするので、本当に動き方が全然違うって思ってもらえれば。

ー瀧定名古屋の社員として日々の業務で重視していることは?

泉:

仕事全般になるんですけど。レスポンスを早くすることを心掛けています。
あとは僕キャラが結構いじられるんで、人を売り込もうと頑張っています。社内でも社外でも、 泉だから買ったんだよとか泉だから注文くれるんだよっていうのを言われるためにやっているかもしれないです。

川本:

当たり前のことをいかに当たり前にできるかを1番意識しています。これは瀧定名古屋というより、社会人としてだと思うんですけど 意外と難しかったりするんですよ。やることいっぱいあるし。そこをいかに ちゃんと早く的を得た答えを返せるのか。
それができればちゃんと結果として出るとは思うので、ずっと真摯に向き合わなければあかんなと思っていますね。

泉:

あと、土日遊ぶことですかね 。お客さんと商談行って、多分仕事の話2割ぐらいしかしてなくて、8割は体験談とか。そういうネタを土日に作ってお客さんと仲良くなるのが結構重要かなと思っています。瀧定名古屋では『よく遊ぶ人はよく売れる』っていう格言みたいなのがあって、僕は結構信じてやっています。


2024.09.30
KEN IMAMURA(INTERVIEWER)


【Keio Fashion Creator 関連リンク】

 ● IG : @keio_fashioncreator

 ● Twitter : @keio _fc

 ● HP : keiofashioncreator.com

【瀧定名古屋株式会社 関連リンク】




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?