切抜5「春の襲来」

(「切抜」シリーズは、今胸の内にあるモヤモヤを言葉に乗せてまとめる、いわば心の整理をするための雑記帳というもので読んでいただければと思います)

眠れない夜。

日中少し汗ばんだであろう頭を洗わずに、それ以外の部分を洗い流し、適度に歯茎をほぐしながらボーッと歯を磨き上げた。いつものように仕上げのマウスピースの装着まで行ない、つい先日導入したばかりの寝具「トゥルースリーパー」の布団に体を埋める。

近頃、気温の上がり下がりが遊園地のジェットコースターさながらの激しさを見せている。正直、もう春物の衣類で過ごしても問題がないのならそれでいいじゃないか。とも思うが、天気はそうしてくれないでいる。時々無慈悲なまでに気温が下がったり、予告なしに急に雨が降ったりと。まぁ、それが従来の「春」の在り方と言えば、そうかもしれない。

先日の一件より、ほんの少しだけ気持ちが落ち着いたと思う。まだ傷口が痛み疼くことも少なくはないが、その時と比べ落ち着いて過ごせる時間の方が随分長くなったと思う。ただ冷静に、自分の手であの大切な時間と思い出を捨てたことは正解だったのか、と、それだけ今でも真っ直ぐに悩んでいることは間違いない。10帖の部屋にまだ残っている彼の私物を時折抱きしめながら、私の中に座している未練たちをどう昇華するのが最適なのかとずっと考えている。

最近、平日の仕事の時間が黙々と目まぐるしい速さで過ぎていくのを感じている。入社した4か月前と今とでは、段違いに時間の進む速さが違う。しかし、ぼーっとしてても、電卓やパソコンのキーボードを素早く入力する時間を長々とやっていても、進む時間は著しく平等で、そこに何かしらの満足感や達成感を感じている訳では無い。私はこの空っぽの時間たちが無下にされていくことが、どうも寂しく感じてならない。
そのせいか分からないが、その代わり、仕事を終えて帰った後に食べるご飯に少し拘るようになった。今までは何も食べないか、食えればそれでいい、というスタンスでいたが、この疲れに見合った美味いご飯はなんだろう?とか、空腹を好きな食べ物で満たしたいなど、それらを考えることがになった。例えば、この疲れに見合ったご飯はなんだろう?、この空腹を好きな食べ物で満たしてやりたいなど、これらを考えることが日々の日課になっている。
今の自分を満たしてくれるのは、「食」だ。

そんな「食」というささやかな幸福を見つけてから少し経った。気分転換に近所のスーパー銭湯に久々に岩盤浴に行った。いそいそと岩盤浴着に着替え、岩盤浴のタオルマットを抱えて出ようとした時、ふと脱衣場に置いてあるタニタの体重計に目がいった。(太ってるだろうな…)と思いつつ、自分の現状が急に知りたくなった。ほんの少しの冒険心で私は体重計に足を置いた。
結果は案の定だった。衣服の重さを差し引いていてもその数字は今の生活を突きつけてきた。

体重計からそっと降りて、満足気に脱衣場を出た。
「痩せよう。」

そう素直に思った。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?