消費税と簡易課税①
令和5年10月1日にインボイス制度が施行されます。それに伴って、簡易課税がにわかに注目を集めております。先日、公正取引委員会がインボイスに対するQ&Aを公表したとき、簡易課税という言葉をたくさん見たように思います。
そこで、4回程度に分けて、消費税の簡易課税について見ていきたいと思います。
簡易課税とは
消費税の納税額は、「【預かった消費税】-【支払った消費税】」で算出します。個別対応や一括比例配分、課税売上割合など様々な論点がありますが、その辺りの説明は省略します。
この「【預かった消費税】-【支払った消費税】」で算出される消費税の計算方法を「原則課税」と言ったりします。簡易課税の対義語として原則課税と言われているのではないかと思われますが、それはさておき。
ここでいう「預かった消費税」というのは収入にかかる消費税です。他方、「支払った消費税」は支出に係る消費税です。取引の中には、消費税が課税される収入支出、消費税が課されない収入支出がありますから、これらを正しく仕分け、差し引きして消費税額を算出します。差し引きした結果、プラスになれば納税、マイナスになれば還付です。
簡易課税とは、消費税額の算出の際に使用している「【預かった消費税】-【支払った消費税】」の計算方法を簡易にしたイメージです。すなわち、「支払った消費税」を算出する際に、支出を一つずつ課税されるか否かを仕分けるのではなく、「預かった消費税」に業種ごとの仕入率を乗じて計算するという計算方法です。ここでいう仕入率は法律で定められており、後ほど確認をいたします。
具体例
売上に係る消費税が1,000、支払に係る消費税が400、仕入率が60%とします。
① 原則課税
納税額は600(=1,000-400)になります。
② 簡易課税
納税額は500(=1,000-1,000×0.5)になります。
上記の場合では、簡易課税を選択すると、税額が100抑えられることになります。
みなし仕入率
説明や具体例に出てきた「仕入率」ですが、「みなし仕入率」と言われています。
このみなし仕入率は、下記のように事業区分を6つに分け、それぞれに設定されております。
① 第一種事業:卸売業 90%
② 第二種事業:小売業 80%
③ 第三種事業:製造業 70%
④ 第四種事業:第一種から第三種、第五種、第六種以外の事業 60%
⑤ 第五種事業:サービス業(不動産賃貸業を除く) 50%
⑥ 第六種事業:不動産賃貸業 40%
第三種事業から第五種事業は、日本標準産業分類をベースに決められています。上記の業種は大雑把に書いております。御自身が該当する業種は国税庁の下記のURLなどからご確認下さい。
次は、簡易課税の事業区分について、具体的に見ていきたいと思います。