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インボイスと個人情報③

公表申出書についてもう少し検討してみましょう。

おさらいを兼ねてインボイスの検索サイト(正式名称は「適格請求書発行時業者公表サイト)で公表される内容を確認します。

消費税法57条の2 4項
 第一項の登録は、適格請求書発行事業者登録簿に氏名又は名称登録番号その他の政令で定める事項を登載してするものとする。この場合において、税務署長は、政令で定めるところにより、当該適格請求書発行事業者登録簿に登載された事項を速やかに公表しなければならない。

氏名又は名称、登録番号、その他法令で定める事項の3つです。
その他法令で定める事項として委任を受けた施行令ではこのように定められています。

消費税法施行令 70条の5
 法第五十七条の二第四項に規定する政令で定める事項は、次に掲げる事項とする。
一 氏名又は名称及び登録番号
二 登録年月日
三 法人(人格のない社団等を除く。)にあつては、本店又は主たる事務所の所在地
四 法第五十七条の二第五項第一号に規定する特定国外事業者以外の国外事業者にあつては、国内において行う資産の譲渡等に係る事務所、事業所その他これらに準ずるものの所在地
2 法第五十七条の二第四項、第九項若しくは第十一項又は第五十七条の三第五項の規定による公表は、インターネットを利用して、利用者が容易に検索することができるように体系的に構成された情報を提供する方法により行うものとする。

整理をすると、
①氏名又は名称
②登録番号
③登録年月日
④法人の場合は本店所在地(又は主たる事務所)
としています。
つまり、法人は①~④、個人は①~③が公表されることになります。
個人事業主は住所が公表されないことはで書いております。

これらの情報は、事業者が国税庁に「適格請求書発行事業者の登録申請手続き」をすることで、「適格請求書発行事業者登録簿」に登載されます。そして、この登載情報がインボイスの検索サイトで公表されるのです。

そして、公表される情報を変更するときは「公表申出書」を提出することになります。

消費税法57条の2 8項
8 適格請求書発行事業者は、第四項に規定する適格請求書発行事業者登録簿に登載された事項に変更があつたときは、その旨を記載した届出書を、速やかに、その納税地を所轄する税務署長に提出しなければならない。

この「4項」に規定する事項は、繰り返しになりますが、①氏名又は名称
②登録番号、③登録年月日、④法人の場合は本店所在地(又は主たる事務所)この4つです。
次に、公表申出書のフォームは見てください。

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法律を眺めながら申出書を見てみると疑問点がいくつか出てきます。

① 法人の申出は不要?
公表申出書で行う手続きは大きく2つあって、「新たに公表する事項」と「変更の内容」です。そして、変更する事業者を見てみると、選択ととして「個人事業者」と「人格のない社団等」とされています。「法人」の変更の際はこの申出書の提出が必要だと思うのですが、不要とされています。
法人の登載事項は、法人番号の検索で出てくる情報と同じなので、変更登記をした際に情報が共有されるのではないかと思われます。とはいえ、法律などでそう説明されないと、法人はどうやって変更するのだろう?と思ってしまいますね…

② 芸名だけの掲載はできない?
氏名又は名称のいずれかが記載されるとしています。氏名でない場合の名称とは何を指すのでしょうか。法律上は明らかにされていません。名称とは芸名も使えるのか?と思われるかも知れません。
しかし、この申出書では、旧姓と外国人が住民登録した際に記載されている通称を想定しています。そして、氏名に代えて名称を公表する場合は申出書に住民票を添付することを求めています。すなわち、法的に認められてない名称だけを公表することは認めていないということです。好き勝手名乗れて本名を隠せてしまうと悪用される恐れがあると考えると妥当だなと思えます。

芸名は屋号という位置づけなのでしょう。屋号である以上、芸名と本名が記載されてしまうことになります。本名を明らかにされたくないという方は何らかの対応が必要かも知れません。インボイス施行まで1年半以上ありますから、取引先の対応、制度の変更など、注視して戴きたいと思います。


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