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ジンクス 2

『告白水平線』

そんな看板の立てられた、ある海岸があった。
夕方、水平線に太陽が沈む神秘的な光景は、永遠の愛を誓うにはもってこいだった。
景観の美しさだけでなく、「海に向かって叫べば告白が成功する」なんてジンクスもあった。そのためか、そこは老若男女問わず様々な人が訪れるだけでなく、デートスポットとしても人気があった。

私もつい先日、学生時代の友達とそこを訪れたばかりだった。縁結びの神社を巡るようなつもりで、未来のパートナーのためにやって来たのだ。

もちろんジンクスのことも知っていた。というより、もはやそれは私たちにとってメインイベントだった。浜辺には、1人分ほどの小さなステージが、短い階段の先に用意されていた。私はそこに上って、ありったけの気持ちを込めて叫んだ。
まだ見ぬ相手との、明るい未来を描きながら。




それから5年後、私は結婚した。ある日、夫は言った。
「なんだか出会う前にも、君の声を聞いたことがあるような気がするよ。」

夫は、南アメリカの人だった。

#毎週ショートショートnote

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