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戯画

公園で団子のように転がりながら遊ぶ子供たち、川辺でびしょ濡れになる若者の集団、おどけてそれらを動画に収める高校生たち。

そんな人々を横目に電車に乗りこんだ男は、スマホの画面を眺めた。とあるニュースサイトで目についたのは、こんな見出しだった。

「20XX年、今年の流行語大賞は【鳥獣戯画ノリ】に決定」

聞けば、自然の中で楽しむ遊びが若者の間で再流行しているらしい。確かに、泥や水に塗れて愉快に転がり回る彼らの姿は、あの絵に似ているかもしれない。

流行だかなんだか知らないが、俺はあんなに泥や水に塗れるのはごめんだな。
何が楽しいのかサッパリだ。

男はもう一度、スマホに目を落とした。

***

27XX年、「新・鳥獣戯画」と題された作品が発表された。
そこには、片手に持った四角い箱に目を落としたまま動き回る、無数の生物が描かれていたという。

それを見た生物は泥に塗れて言った。

「四角い箱ばかり見ているとは。何が楽しいのかサッパリだ。」と。

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