![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/126346137/rectangle_large_type_2_98f96bedcc1fbfb3a7964c18203de9b6.png?width=800)
Photo by
yokoichi
戯画
公園で団子のように転がりながら遊ぶ子供たち、川辺でびしょ濡れになる若者の集団、おどけてそれらを動画に収める高校生たち。
そんな人々を横目に電車に乗りこんだ男は、スマホの画面を眺めた。とあるニュースサイトで目についたのは、こんな見出しだった。
「20XX年、今年の流行語大賞は【鳥獣戯画ノリ】に決定」
聞けば、自然の中で楽しむ遊びが若者の間で再流行しているらしい。確かに、泥や水に塗れて愉快に転がり回る彼らの姿は、あの絵に似ているかもしれない。
流行だかなんだか知らないが、俺はあんなに泥や水に塗れるのはごめんだな。
何が楽しいのかサッパリだ。
男はもう一度、スマホに目を落とした。
***
27XX年、「新・鳥獣戯画」と題された作品が発表された。
そこには、片手に持った四角い箱に目を落としたまま動き回る、無数の生物が描かれていたという。
それを見た生物は泥に塗れて言った。
「四角い箱ばかり見ているとは。何が楽しいのかサッパリだ。」と。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?