ブラームス交響曲第4番

この曲には長らくの親しみがある。普通の人とは全く違うファーストコンタクトだった。オーディオマニアというかファンだった大学時代の私は、レコード屋で音質がよいことで有名な「テラーク」当レーベルの中古盤を見つけた。当時は音楽より機械としてのオーディオのご執心だったので、高音質で有名なレーベルのCDを安価に変えたことが妙に嬉しかった。

それがプレヴィン指揮のブラームス交響曲第4番だった。少ないマイクで残響毎シンプルに録音するのがこのレーベルの特徴。一聴して茫洋とした音の洪水に飲まれた。四畳半のリスニングルームにプレヴィンのブラ4が溢れた。

今あらためて聴いても「茫洋とした」というクラシック演奏において褒め言葉かどうか怪しい怪演である。ただ大きな空気の塊がロマンチックに振動する感じが気に入って繰り返し聴いた。

ロック小僧の当時、ブラームス交響曲の真価なんかわからなかったわけだが、繰り返し聴いて身体化する内に、このジャンルの音楽の懐の深さと滋味深さに次第に惹かれるようになった。

この曲が気に入って、他の演奏も聴いてみたら、ずっとクッキリと目鼻立ちがクッキリした演奏の方が多かった。

それでも、この曲の真価は大きな空気が波打つように漂うような演奏が、究極なのでは・・ 斯様に最初に聴いた音源の影響は大きいのである。

今の愛聴盤は80年代のヴァント盤とザンテルリング盤である。後者の黄昏れた雰囲気が特に好きだ。

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