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春アニメここまでの感想(2)

楽しみにしている作品ほど見始めるのが怖くないですか? もったいない、とも思うし、片手間に見るのが申し訳ないからちゃんと時間確保しようとして逆になかなか手がつけられないとか。

今週は仕事の谷間だったので、ようやく溜めてたものに手をつけられました。

『オッドタクシー』

なんというか、思ってたのとだいぶ違いました。もうちょっとコミカルでシニカルでゆるい感じというか… いや、シニカルだしゆるいっちゃゆるいんだけど、いきなりシリアス展開でビビりました。小戸川さん、トドなのに…(セイウチ?)。しかも41歳、タクシー運転手。こんな主人公初めて。

なんか喋り方も変じゃない? と思ってましたが、エンディングで二度見しましたよ、花江夏樹さん?! 話数を重ねてだんだんその世界に馴染んできたら、あの感情なさそうでありそうな音域が朴訥さに思えてきてよきです。あとお笑いの人らも割とシームレスで良い。

ストーリーのベースに事件の謎を敷きつつ、見えてくるのは各キャラの個人的な問題と彼ら彼女らの関係性。点描的に挿入されるお笑い芸人のラジオ番組とかアイドルの歌とか、時系列の見せ方とか、ちょっとずつ見えてくるキャラの裏側とか… 説明的では全然ないんだけどセンス良く的確で、ぐいぐい引き込まれるっていう勢いではないんだけど、気付いたら包囲されてた、みたいな、そんな展開が心地いいです。海外ドラマっぽくもあり。でも実写だと生々しすぎて見ていられなかったかも。アニメ、人外って、人間じゃできないことができていいな(コンプラ的な意味で)。

現在3話まで視聴。キャラの顔見せと事件との関連とが徐々に浮き彫りになってきたあたりですかね。浮き彫りというより、同じくらいのサイズにそろえたエピソードを石垣を組むように丁寧に積み上げている段階、という感じかも。積み上げる過程もまた面白く、全体像がいつ見えてくるのか、楽しみになってきました。

『スーパーカブ』

女子高生がキャッキャウフフしてる作品だったらどうしよう、と思ってましたが、真逆でした。彩度の低い画面とドビュッシーのピアノ曲に導かれ、ほとんどしゃべらない主人公、残酷なほど丁寧に描く生活描写から、ひしひしと伝わる孤独。

それが、バイク屋でカブにまたがった瞬間にぐわっと彩度が上がり、違う世界の存在を予見させてくれるという。そこへ至るまでの積み上げに、こんだけ時間使うんか、こんだけ風景見せ続けるのか、と。きちんと見せたい世界観があるのだと、見せつけてくれました。

全体的には本当に淡々としていて、免許を取りナンバーをもらい、バイク屋から初めて道路へ走り出す、そんな節目のシーンすら余計な演出はなく。だからこそ小さなワクワクや道路を走る怖さや、夜中に走り出しちゃうような嬉しさが、じわじわと積み重なっていく様子が、我がことのようにうれしいです。

自分も以前、スーパーカブと同じエンジンを積んだBenly CLという原付に乗っていたので、走り出したい嬉しさとか、エンジンがかからない不安とか、ここにメット掛けられるんだとか、そんな小さな経験がどんどんバイクを好きにさせていく、アナログな乗り物ならではの魅力を思い出しました。

カブのエンジンは恐ろしいほど燃費が良くて、50km/Lくらい走るんです。Benlyは満タンで埼玉(当時住んでた)から伊豆あたりまで行けました。原付、50cc、小さなエンジンなんですけど、すごく頼りになる相棒だと感じてました。

「どこへでも行けるわよ、カブなんだから」

礼子さん、それや。

多分、何か、すごく制限された中で自分を生かしてきた主人公が、自分の力でどこか遠くへ行けるんだ、行ってもいいんだと。カブに乗ってそれに気付いて、そのことでどれだけ自分を自由にできるか。そのあたりが最初の見所になってきそうな気がします。カブならどこまでだって心の自由に付き合ってくれますから。

あの1万円のスーパーカブがどんないわくを背負っているのか… は、まだ先かな。でもその設定わかってて協力してくれたホンダ、ありがたや。

『NOMAD メガロボクス2』

たまらんです。

ジョーさん、昭和の男の色気がたまらんです。ダメになってしまいたいのに、どうしても捨てられない何かがある感じ。現実にいたらめんどくさそうですけど、でもそう生きてみたいと憧れを誘う何かがあります。文学的な語り口を感じます。

そしてより泥臭く。まあ飲んだくれて薬キメてトイレで吐いてるんだから物理的に泥臭いんだけど、前作の方がまだOPとかでスタイリッシュ的な何かを足そうとしてた気がする。今回はより振り切った感じ。でもそうじゃなきゃ表現できないものだし、それでもファンがついてくる確信が前作でできたのかも。

…ファンが求めてるもの、じゃいかんのだよね。ファンがついてくるもの。作品の方が先を行っててくれないと、追いかけがいがないですから。

あとなんといっても細谷さんがたまらんです。こんなハマり役ある?!

一方で新キャラのチーフさんも多分に文学的。弾き語りしてた曲、エンディングで見たら歌詞がすごいっすよね。あのごついおっさんがなんでハチドリなのかとか、キャラ造形に掘り下げがいがあって旨味がすごいです。

最近はベクターで引いたような細〜く整理された線で描かれた作品も見かけますけど、この作品は対極ですね。鉛筆のタッチを感じるほど。どうやって仕上げてるんだろ。あの黒味、重みは、手書きの良さだなあと思います。絵が、心にどっしり残ります。

世界観はますます無国籍になってきましたね。前作はギリギリ日本でも通用しそうでしたけど、どっかで南米とつながってるぽい。だけど地上げ屋は完全にジャパニーズヤクザだし…。どこでもない、だからどこだってあり得る。そういう普遍性も魅力です。10年前でも10年後でも通用する作品だと思う。

ストーリー的には前作から7年も経ってるということで、そこは追い追い語られていったりするんでしょうけど。この作品についてはもう、来るもの全て受け止めて、味わい尽くすのみです。正座待機。

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