歴史の大局を見渡す(ウィル・デュラント著)

<著者>ウィル・デュラント:アメリカ合衆国マサチューセッツ州出身の著作家、歴史家、哲学者である。妻のアリエル・ダラントと共同で著し、1935年から1975年に出版した11巻本、『文明の話』でよく知られている。それ以前の1924年に出版した『哲学の話』でも知られており、「哲学を大衆化することに貢献した画期的な作品」だと言われた。

<本書の要約>ピューリッツァー賞受賞の思想家2人が贈る5000年の歴史をおさめた珠玉のエッセイ集。著者たちの名声を確固たるものにした超大作“The Story of Civilization”(文明の話)のあと、その既刊10巻のエッセンスを抽出して分析し、歴史から学べるレッスンという形でまとめている。文化や文明の発展、人間性の洞察、モラルと宗教、国家の行動、人類の進歩の方向性などを概説する書となった。彼らはライフワークを完成させるため、歴史についての思索を重ね、戦争や征服や創造を通して人類が歩んできた長い道のりの意味を探し求めた。13のエッセイを通して、人類の過去の体験を概観し、今を生きるヒントを得られる、秀逸な歴史書である。

<本書からの抜粋>

:未来は決して偶然起こるのではない。それは常につくられてきた。現在は過去の集積に他ならない。過去に目を向けることで現在を理解することが可能になる。 

:歴史の大半は推測であり、残りは偏見だ。歴史において重要なのは相対性であり、公式はどれも信用してはならない。

:歴史から得られる生物学的教訓は、①人生は競争、②人生は淘汰、③生き物は繁殖しなければならない。

:文明を創るのは人種でないが、人を創るのは文明である。

:(人の性質と歴史) 6つの本能 - 行動/休止、闘争/逃亡、獲得/回避、連携/単独、結婚/拒絶、子育て/親への依存

:(宗教と歴史) 宗教は社会の底辺にいる人々にも存在意義と尊厳を認め儀式を通じて人と神が契約を結び社会は安定した。宗教のおかげで富める者は貧しき者に殺されずに済む。宗教が衰退すると共産主義が台頭する。

:(社会主義と歴史) 富の集中と分散の歴史。資本かは想像的。自由競争や所有欲が生産性や創造性を刺激する。社会主義は資本主義への恐れから自由を拡大し、資本主義は社会主義への恐れから平等をめざしている。

:(政治と歴史) 無制限の自由は混乱の中で死ぬ。自由に制限が必要。政府の第一の務めは秩序。力は自然と中央に集まる。政体を歴史における普及の度合いと存続期間で評価するなら君主制に勝るものは無い。政体は、君主制、貴族政、民主制、独裁制の順で移り変わる(プラトン) 先生と隷属の極みは自由の極みから生まれる。経済が複雑化するにつれ能力の優劣が鮮明となり友と責任と政治的権力の集中が一段と進む。

:(歴史と戦争)戦争は繰り返し起きていて、文明が発展しても民主政治がおこなわれても戦争は減らない。記録に残る過去3,421年のうち戦争が無かったのはわずか268年だけ。戦争が人類の競争と自然淘汰の究極の形であり、アイデア・発明・制度・国家などあらゆるものを生んだ。世界秩序は紳士協定から生まれたりしない。平和が広がるのは不自然で例外的だ。

:(発展と衰退) 文明とは、習慣・モラル・法によって守られる政治的秩序、生産と交換の継続によって保たれる経済的秩序、そしてアイデア・文学・様式・芸術の創作・表現・実験・結実のための自由と便宜による文化的創造でもある。苦労して築き上げても壊れるのも早い。建設(有機的時代)と破壊(批判的時代)の繰り返し。経済が拡大すると不平等が深刻化。教育が広まると宗教への信頼が薄れる。国は滅びるが文明は滅びない。文明は何世紀にもわたって受け継がれてきた民族の魂である。人類の遺産。

:(進歩は本物か)文明が成し遂げた偉業は国の興亡に関わらず今日まで残っている。家族や民族の知恵を次世代に伝える。教育が文明を伝える力であるなら私たちは間違いなく進歩している。文明は継承すればよいのでなく次世代がそれを学び自分のものにしなければならない。歴史とは遺産の創造とその記録と言える。新ポト派豊かな遺産を築いて守り伝え使う事である。


自分の人生を意味あるものにしよう。歴史家が人間の存在意義を乱すことが出来なくても嘆かない。なぜなら彼らにとって大切なのは人が何をしているかである。

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