『流れとかたち―万物のデザインを決める新たな物理法則』 (エイドリアン・ベジャン/著)

著者:1948年ルーマニア生まれ。デューク大学教授。24冊の専門書と540以上の論文を発表。世界で最も論文が引用されている工学系の学者100名に入る。

<総括> 

「コンストラクタル法則(constructal law)」という新しい物理法則が説かれた一冊。自然界のデザインから文明、人間、生命まで、多くの示唆がある良書。この法則は、ビジネスモデルから人間関係まで紐解くことが出来る壮大な理論。学術書だがマクロな視野と哲学的ともいえる思考を与えてくれる内容。

<本からの抜粋>

:自然界のデザインを科学の一分野として扱う。コンストラクタル法則はデザインと進化の物理法則

:「生物・無生物の別なく、動くものはすべて流動系である。流動系はみな、抵抗(たとえば摩擦)に満ちた地表を通過するこの動きを促進するために、時とともに形と構造を生み出す」。そしてそれは自然に自発的に現れる。なぜならばそのデザインが、時とともに流れを良くするからだ。

:すべては流れをよくするために進化する。流動系には2つの基本的な特徴がある。”流れているもの”と”流れが通過する道筋のデザイン” 

:樹状パターン(分岐構造)が自然界のいたるところで現れるのは一点から一領域、もしくはその反対の流れを促進するための効果的なデザインだから。

:世界を動かすのは愛やお金でなく、”流れ”と”デザイン”である。デザインはパターンとして自然に現れる現象であり人工的でない。

:人間社会の組織もこの物理の原理に支配されている。すなわち階層制だ。社会における人・富・知識・教育の分配も含めてた他の流動系が多くのスケールを持つ自らの流路の間の適切な均衡を保たなければならない。

:河川流域、流れる溶岩、最近集落は一見無縁なデザインだが、有効エネルギーの単位当たりでより早く遠くまで動ける道筋を生み出したり探したりするだろうとの結びつきで進化する。生物も無生物のデザインもまるで知性があるかのように進化する。

: 動力を使う科学技術は効率を高め、より少なくではなく、より多くの動力を生産して消費する方向に進化し続けるだろう。高い効率を追い求めても、燃料消費の低下にはつながらない。より広い領域で、より多くの動力が生み出され、個々の人が使う動力も増え続ける。したがって、地球規模でのエネルギーの持続可能性や、環境に優しい風力発電などへの関心の高まりは、新しい思考様式ではなく、地球上で「より少なく」ではなく、「より多く」の質量を動かすためのデザインの進化にすぎないのだ。


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