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歴史・人・旅に学ぶ

還暦からの底力―歴史・人・旅に学ぶ生き方 (講談社現代新書)      著:出口 治明

同じ業界の大先輩の著書にはいつも励まされる。自分は特にこれといった思いもなく、就職ランキングを意識しながら金融業界を中心に就職活動し、たまたま縁があった生命保険会社に入社した。その後は、同期との競争、定期的に訪れる人事異動に一喜一憂しながらも、なんとかここまでやってきた。しかしながら、入社して既に20年が経過し、ここから先をどうするか、若い頃とは違い、自分の思うようにならないことが増えてきたと思い悩んでいる自分に、出口さんは明快な事実を提示してくれる。

  そもそも 働くということは、昔、何をやっていたのか、 何ができたのかは関係がなく、現在の能力と意欲、体力に応じてそれにふさわしい仕事をするというのが世界の常識です。日本もそういう当たり前の世界を目指すべきです。高齢者のなかには「 昔は大会社の役員だった」などと過去の栄光にすがったり、「 昔の部下に使わ れたくない」と不満を漏らしたりする人が います が、 こうした歪んだ敬老精神はなくしていかなければなりません。

自分は現在40代後半だが、この先5年、10年と何も考えずに会社の仕事を続けていると、過去の栄光にすがり、不満を漏らす将来の自分が容易に想像できる。最近、同期との間では、50歳半ばで強制的にステップダウンされる役職定年制度がよく話題になる。今まさに、大量採用世代の先輩たちがその年齢に差し掛かろうとしている。これまで一心不乱に働いてきた自分たちが、思い通りにならない事実に直面するのだ。ただ、これも会社としては組織をフレッシュに保つために必要な制度であり、仕方がないもの。出口さんが著書で指摘するように、「仕事」の位置づけを再認識(人生の全てではない)し、何歳になろうが自分がやれること、やりたいことをやる。そういうマインドセットが必要なのだろう。 

そもそも、一 冊か二冊偉人の伝記を読んでみれば、みんな失敗だらけの人生だったのだということがわかり ます。何かやってもうまくいかないことが多いのは、世の中の当たり前です。つまり失敗が怖いという人は、勉強や 考える力が足りないのです。「仕事を頑張ったけれど出世できなかった」「 実績十分 なのに運が悪くて左遷さ れ てしまっ た」 と 嘆いたり落ち込んだりしているビジネスパーソンも、やはり勉強や考える力が 足りない人です。大 企業であれば、 毎年200人くらいの大卒社員を採用しています。 一方、 新しい社長が出るのは5年に1回くらいのペースです。そう考えると、社長は1000人の中から1人が選ばれるという確率だとわかります。 つまり、その 会社で社長になれる確率はわずか0・1%に過ぎ ませ ん。  一方、社長になれ なかった残りの999人は、どこ かの段階で全員左遷さ れることになり ます。 数字でみれ ば999人の中に入る確率のほうがはるかに高いわけです。それなのに「出世でき なかった俺は不運だ」と嘆く必要がどこにあるのでしょうか。こんな計算は小学生でもできるはずですが、 いい年をした大企業勤めのおじさんがそんなこともわからない。それは現実 を見る力に乏しく、なぜか「俺だけは 出世する」と自己中心的に思い込んでいるからです。見方を変えれば、ちゃんと現実を見ることができて論理的 に 考える力があれば、本来はどうでもいいことで落ち込んだり不満を抱え たりせずに済む ということです。

また、出口さんはこれまで複数の書籍で、「ほとんどが人はいつか左遷される」と言っている。これも考えてみれば当たり前だが、友人や家族も含め、皆、なかなか触れることのない話だ。これまでも自分は複数の人事異動や昇格を経験してきたが、年齢とともにポジションは減り、いつしか「これはひょっとして」という配置換えが行われるだろう。その時に取り乱したり、夜も寝れないぐらい考え込んでしまうようなことは避けたい。早いうちから当たり前の事実を受け入れておいた方がいいだろう。

社会の変化するスピードが早くなったのだから、それに追いつくためにも仕事 一辺倒の「 飯・風呂・寝る」の生活から今すぐ 脱却し、 勉強しなけれ ばならない。 勉強するのは 子供や学生だけではなく、大人になっても一生 学び続けなけれ ばいけない。知は力であり、その力は「 人・本・旅」で勉強しなければ身に付かない
メリットとデメリットがはっきりしていたら、 人は選択に迷いません。 迷うということ は、どちらもよいところがあり、悪いところがあるから迷うの です。 そういうときにいくら時間をかけて考えても、答えはでてきません。 ただ時間が過ぎていくだけです。答えがでないのに迷うのは時間の無駄だから、「 迷ったらやる。迷ったら買う。迷ったら行く」 ですぐ行動したほう がずっと いい の です。

これまで自分は会社の仕事を軸に据え、法律・経済・英語等々、学生時代とは比較にならないぐらい多くのことを学んできた。それはそれで自分にとってはよかったし、全く後悔はない。しかし、会社の仕事が永遠でないことを意識するにつれ、学ぶ意欲が減退していくことを感じる。しかし、出口さんが言うように、豊かな人生を長く続けていくためには、学び続ける必要がある。会社生活が終盤に差し掛かろうとする今こそ、この本に書かれていることが自分事として染み込んでくる。迷っている暇はない。今すぐに行動すべきなのだ。

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