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帰国子女の中学受験(2022年)その⑥受験本番

帰国生の中学受験は、11月上旬から2月上旬にかけて行われる。一般受験と比べ、長丁場だ。受けようと思えば、かなりの数を受けることも可能だし、多少失敗しても、志望校を再考し、挽回することも可能だ。しかしながら、長期戦となった場合、モチベーションを維持させることが難しい。受験本番に向けて、本人に受験スケジュールを意識させ、試験日に向け集中力を高めていくように日常をコントロールしていくことが大事となる。

前に述べたとおり、我が家の本番は、11月3日の広尾小石川からスタートした。受験本番はさぞかし緊張しただろうと思っていたが、娘に聞くと、筆記試験はあまり緊張しなかったらしい。試験会場には、帰国子女アカデミーの仲間や、時にはロンドンの現地校の同級生がいたことで、緊張感が和らいだようだ。また、志望校を選定する際に、合格見込みがあるところだけを対象としたこともプラスに作用したと思う。帰国子女アカデミーが行うKAATテストのスコアは、学校別に過去の合格者平均と比較することできる。我が家は、このスコアが過去の合格者平均を上回っているところから、志望校を選んだ。一か八かのチャレンジ(我が家で言えば、渋渋や渋幕)を見送ったことで、過度なプレッシャーはかからなかった。平常心を保つには何か根拠のある「自信」を持って、試験の臨むことが重要であろう。

一方で、面接はかなり緊張したようだ。娘によれば、初戦の広尾小石川では面接が大失敗だったらしい。入室とともに、面接官から言葉をかけられた際に、マスク越しで聞き取れなかったらしく、ここからパニックに陥ってしまった。また不運にも、面接官との相性も悪く、事前に準備したQ&Aとは違う質問が多かったようだ。この失敗により、娘は面接に苦手意識を持ってしまった。帰国子女アカデミーの面接対策講座も受講し、それなりの準備はしていたものの、自信を回復するには実際に合格する以外にない。不合格の後、併願校にて筆記試験及び面接を受け、無事に合格したことで、徐々に自信を持つようになった。我が家の経験からは、面接に関してはある程度の場数が必要と言える。

受験本番の際、親ができることは受験校に引率することぐらいだ。どんな声掛けをしても、本番直前の娘には届かない。電車の中でいろいろとアドバイスしようすると、「今、頭の中で面接のシミュレーションをしてるから、話せない。」と言われ、黙ったこともあった。受験当日については、会場で教室に向かう娘の後ろ姿だけが記憶に残っている。

受験を終えて


教育ジャーナリストのおおた氏は著書で一般生の中学受験を「現代社会の大冒険」と表現していたが、帰国生の中学受験も大冒険と呼ぶにふさわしいものであったと思う。主役は娘であるが、親が舵取りを誤るとどこに漂流するかわからない怖さがある。情報も不足しており、相談できる人も限られるため、自分たちで試行錯誤して進まないといけない。中学受験は家族一丸となって取組む一大プロジェクトだと言える。

この時期にドラマの「二月の勝者」が話題となった。個人的には、中学受験に目的を見出した加藤匠くんのような形が理想的だと思っている。一方、島津家や今川家で描かれていた親のエゴは、けっして他人事ではなく、自分の心の奥底にもひそんでいることを認めざるを得ない。受験に関わる親のエゴをどう排除するか、それは自分にとっては想像以上に難しく、眠れない日もあった。自分に内在する古臭い価値観をそぎ落とすためには、①娘にとって何がいいのかを考え抜くこと、②教育に関する有識者の意見を学ぶことの2つが有効であったと思う。とりわけ、以下の著作は大変参考になったし、GLICCという学習塾のYouTubeでは、将来の教育に関するディスカッションを見ることができる。自分なりに教育について学び、少しづつではあるが、古臭い価値観をアップデートすることができたように思う。


4月から娘は中高一貫校に通うことになる。今、娘は、長い受験勉強から解放され、中学入学後の新生活を楽しみにしている様子だ。自分が娘に期待するのは、自分の価値観に基づいて自分で人生を切り開ける人間になって欲しいということ。中学受験はまさにその第一歩となる。
中・高の6年間では、自分にとって楽しいこと、好きなことをたくさん見つけて欲しい。そして、それがどう世の中の役に立つのかを考えて欲しい。そうして人生の強みや生きる力を身につけていくのだと思う。
一大プロジェクトであった中学受験も、1つの通過点に過ぎない。どこに受かったかということよりも、ここまで頑張ってきたプロセスに自信を持って、新生活に入ってほしいと思う。


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