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HIGHSPEED Étoileの最終話放送直前ですが勝手に反省会をする話

はじめに

初めまして。あるいはどこかで会った方、お久しぶりです。結城永和です。
恐れ多くもnote初投稿です。今日日個人ブログは見に来る人が限られているし、X(旧twitter)のようなミニブログ形式のSNSでは駄文を書き散らかすには文字数制限が厳しすぎる…(今は課金すれば140文字以上使えるけどね)
ということでnoteを使わせていただくことになった次第。よろしくお願いいたします。

みなさんHIGHSPEED Étoile(以下ハイスピ)はご覧になられていますか。
そうです。2022年夏に発表され、今年4月から放送開始、
発表時のビジュアル等から「サイバーフォーミュラの再来」「美少女サイバーフォーミュラ」として一部界隈で期待を集めていたあのアニメ。
昨年秋はアニメ「MFゴースト」「オーバーテイク!」と良質なモータースポーツもの(レースもの)アニメが2本も放送され、
熱が高まる中でのこの春ハイスピも始まりまして。
私も放送が始まってから毎週見てきました。

……で、何故か身内discordで毎週ハイスピの放送後に感想を語りながら視聴者間で反省会が行われるという怪現象が発生しまして。
ハイスピという作品の内容がいかにダメなのか、不満点は他の視聴者の方が書き連ねられている内容と一致している部分が大半なうえ、
各話ごとに気になった部分を並べていくとキリが無くなってしまうので
ざっくりとまとめて(別の記事で後で書くかもしれませんが)
この記事では「じゃあなんでそうなってしまったのか」を推測していくのが主題になります。
製造業の方には「なぜなぜ」をやるというとピンと来るかもしれません。
…なんでそんなことをやるのかって?この胸の内に渦巻く悔しさと虚無感とがっかりが入り混じった感情を吐き出したかったからです。
駄目なところだらけの中で、微かに「ああ、これは今風にアレンジしたサイバーフォーミュラみたいなことをやりたかったのだろう。上手く料理されていれば、名作になったはずなのに……」と感じる部分があるからこそ、
悔しいのです。
当然ながらネタバレを含むので、そこは注意してください。

ざっくりと、ハイスピの駄目なところ。

世界観やキャラクターの背景が曖昧なまま、補足されることがない

近未来の架空の競技がモチーフで、登場人物が多いとなれば
背景設定をしっかり作り込んだ上で、物語の中で必要な情報を適時提示していかないといけないのですが、まったくそれができていない。
真面目に見て、内容を理解しようとして「なぜ?どうして?」と思ったところの解答が得られないのでストレスたまるたまる……
作中用語は公式サイトやSNSで説明されているのですが、
作中本編におけるあらゆる描写の薄さと相まって、
「なんで作中で解説入れないんだ?」となるのです。
このアニメのレース中の実況解説、淡々と状況を説明するだけで、実況解説として機能していないのです。無音にしないために中身のない内容をしゃべらせてるだけ、みたいな状態
実際のモータースポーツの実況解説では、合間合間にマシンやドライバー、各チームの歴史やスポンサーについても解説や紹介があるものなので、レース映像を長尺で流すならそういった形でもいいので世界観補足が欲しかったところ。

明らかに自動車競技に興味のない人間が、
近未来の架空のレースだからリアルに寄せなくてもいい、と
ろくに調べもせず雰囲気だけでテキトーに雑に作った
のなら仕方ないかなという気もするのですが、
スーパーフォーミュラと日本レースプロモーションから協力を受けていることを発表しておきながら、そんなことある…?

制作課程に置いて、内容の整理や確認が行われていないと感じる

たびたび専門用語の用法やセリフ回しが怪しい部分があり、
場面間の繋がりに関しても、コンテや脚本が仕上がった上で映像が制作されたのではなく、
あらかじめ出来上がっている映像素材をパズルのように組み合わせることでなんとかして場面を繋げて映像として成立させているような印象を受けました。全部が全部そういった内容というわけではないのですが、
出来の悪い回では殊更そのような悪印象が強い。
しかし繋げてはいるものの明らかに不自然な部分やミスが散見されるため、修正を忘れているどころか確認すらできてないのではと思うほど。

主人公に魅力が無さすぎる

  • 輪堂 凛(Rindo Rin)

  • CV.和泉風花

  • かつてバレエダンサーを夢見ていたが、故障により挫折。
    以降、祖母の家でニートでゲーマーな生活を送っていたところ、
    突然レースの世界に放り込まれてしまう。

(公式サイトより抜粋)

設定だけ見れば
夢への挫折から、新たな世界での可能性を見出され、
最終的に才能を花開かせる主人公のように思えるのですが
徹頭徹尾オツムが足りないキャラクターとして描かれてしまったために
まともにレースのルールも、基礎的な技術も理解しないまま親族のコネで最高峰のレースに出場させられ、
実況には本選最下位が定位置扱いされる上、予選落ちやリタイヤも多く
シーズン最終戦を前にして一度5位入賞した以外は予選落ちか(ほぼ)最下位かリタイヤか失格

という、レースものにあるまじきとんでもない主人公です。
あの……こいつ……話の展開を転がすためにレース展開ぶっ壊すサブキャラとかなのでは……?
そんなやつが何で最低限走れて、偶に入賞できたりするのかというと

主人公のマシンだけチーム独自の高性能なナビゲーションAIが積まれていて、それを活用できているときは速いが、普段はAIと噛み合わないので成績が悪い
のです。
そもそもレースに出ることになったのは「祖母の古い友人がチームオーナーで、即席の弱小チームに無名の新人が乗っても勝てるマシンを用意し、絶対的王者を倒して技術力を示したいから」とのこと。
あの、これ、主人公が頑張ったり成長する必要あるんですか…?根本的なところで間違えてません?
南雲さん、アルザード持ってきて

まともに掘り下げられないせいで、ライバルにもなれない同期


作中で個別にフィーチャーされるエピソードが存在したキャラクターはともかく(それでも足りてない感じはありますが)、
主人公と同期デビューで、コミカライズによればスクールの同期でもある
浅河カナタと小町永遠の背景を掘り下げる描写があまりにも足りなさすぎる。この二人、カナタはコミカライズの主人公に抜擢され、
永遠は凛とともに(中の人が)ラジオのパーソナリティを務めている
のですが、本編での扱いがちょっと扱いのいいモブ。
カナタはクイーンに憧れてNEX Raceの世界に飛び込むも苦戦続きで最終戦までノーポイント、
永遠は両親の英才教育を受けて育ったけどコミュ障気味で、
何度か入賞してポイント獲得しているもののランキング下位に甘んじている
というキャラクター紹介やコミカライズから読み取れる背景と、
本編最終戦に至るまでの経過があるわけですが
レース中にコンビネーションを活かすシーンこそあれど、
低迷する成績に焦りや不安を募らせたり奮い立つ描写は無いんですよね……
レース前に遊んでるか、オフにつるんで遊んでる描写の印象の方が強いせいで、
「こいつら真面目にレースやってないんじゃないか?」という不安の方が勝ってしまう。

他にもいろいろ気になるところはありますが、特にストーリーやレース描写の問題点なんて真面目に考え出すとキリが無いくらい出てくるので、これくらいにしておきましょう。

前置きが長くなってしまいましたが、以下からが本題。
じゃあなぜハイスピはこんなダメダメな出来で世に出てしまったのか、
という推測になります。
ソースの不透明な情報や想像により、ほとんど被害妄想みたいな部分も多いのでマジメに読む必要は無いと思いますが、我慢できなかったんや……。

なぜハイスピはこんなダメダメな出来で世に出てしまったのか

企画進行から制作、完パケ納品までの間で企画が複雑骨折するような何かが起こっていた?

ハイスピは完パケ(=全話完成後)納品で作られた作品ということなので、
2022年夏の企画発表以前から企画が進行しており、2024年4月時点で全話の制作が完了していたことになります。
他の「発表時は期待されていたのに、放送されると出来が悪かった」アニメの事例も考えると、
企画発表から放送までの間に諸々の問題が発生していたが、放送を中止するわけにはいかず、結果としてあの出来で世に出てしまったのではないか、と。

早い段階でキャラクターデザイン原案やキャストは発表されていたものの、
肝心のアニメ制作スタッフが放送直前まで発表されなかった
という事があったため、どうにも邪推してしまいます。

時間的制約

制作途中でスタッフの座組の大幅変更など、
完パケ納品の〆切が決まっているにも関わらず
何らかの理由で制作がストップして空白期間が発生し、
結果として実質的な制作期間が極端に短く、時間をかけて作り込んで品質を確保するどころか、
制作物の確認、修正する時間が無かった可能性

金銭的な制約

あれだけ大々的にスポンサー企業を並べて掲げておきながら
お金が無かったので人材も設備も確保できず、十分な品質の作品が作れませんでした……というのは疑問に思うところはありますが、
ハイスピの制作元請としてクレジットされているA-CATは比較的規模の小さいアニメ制作会社。
企画の根っこに近い部分にいるであろうキングレコードやYostarが本気で大作を作ろうとしていたなら、
もっと規模が大きくて実力も実績もある制作会社に元請を依頼していたはず、
というのはちょっと願望が入ってますが、
「他の会社に断られ続けて、最終的にA-CATで制作することになった」のか、
このアニメ、企業コラボやタイアップには力が入っているため
「広告等に制作費の大半を充てたため、肝心のアニメの制作予算が十分とはいえず、弱小制作会社で作るのが精いっぱいだった」
のか、あるいは他の理由があるのかは関係者のみぞ知るところで、
内情暴露が行われない限りは真相は闇のままでしょう。

時間とカネの問題が複合的に発生していた?

上述の推測される問題のどちらかだけではなく、両方を抱えていた可能性。

SNSや匿名掲示板などから漏れ聞こえてきた話によると

  • 複数話を並行して同時制作という変則的な形で制作していた

  • 放送1年前にアフレコは完了していた(これはトークイベントかラジオが情報ソース?)

ということらしいので、
納期が短く予算も少ない前提での制作となったため、
早い段階で脚本・構成・コンテが完成しており、
ごく短期間で土台部分が作られた後、残り時間で映像のクオリティアップを図る調整作業を行ったものの、
根本的な部分が全然詰め切れていないにも関わらず
脚本修正・変更による作り直しやそれに伴う新規カット制作がないまま
あらかじめ作ると決めていたものだけで完成させたのではないかという疑念が。
まあ事実はわからないんですけれども。
(2024/6/25追記)

推測を踏まえた上で、事実としてわかっていること


ティザーPVでできていたことが、本編でできていない

  • ピットクルーの描写
    ティザーPVでは走行前のマシンを取り囲んで何か作業をしているピットクルーの描写がありますが、
    本編ではレース中のピット作業も自動化されたピットボックスで行われるという設定になっており、
    ピットクルーらしき人達は時折現れたりいなくなったりして、何をしているのかよく分からない人たちになってしまいました。
    タイヤ交換や給油を行うアニメーションが作れなかった(作らなかった)んでしょうか…?

  • コクピット周りのデザイン変更
    ティザーPVではステアリングの液晶部分にエンジン回転数と速度計と思しきインジケータが存在し、実車のフォーミュラカーに近いデザインなのですが、本編では謎のエンブレムが画面中央に主張し、ギアの段数が表示されるであろう部分には"DRIVING-MODE"なる謎の表示。リボルバースト解禁時などに表示が変わっているみたいですが…
    男の子はね、メーターの数字が目まぐるしく動くだけで興奮する生き物なんですよ。作り込む必要ないって判断したんでしょうけれど。
    ※補足 第2話のamiちゃん起動時のカットでもちゃんとインジケータが表示された液晶画面が使われているようです

  • ネオ富士スピードウェイのコースモデル変更
    1話放送後に散々つっこまれてたポイントのひとつですが、
    ティザーPVの時点ではバンクに設置されていたフェンスが本編では撤去されています。コースの安全性を考察していないからこうなったのでしょうが、
    本編の視聴を進めていくとそれどころではない問題を抱えたコースも……

プロデューサーは実績がない若手

ハイスピの原案を手掛け、プロデューサーとして企画の中心にいたであろう佐々木裕路(ゆうろ)氏は、調べてみたところ、過去のアニメ関係の仕事歴が虚構推理のアシスタントプロデューサーくらいしか出てきませんでした。
(私の調べ方が悪かったのかもしれませんが)
他のプロデューサーも
ミス・モノクロームや少年ハリウッドなどで実績がある林玄規氏を除いて
ここ2,3年のキングレコード関連のアニメのプロデューサー、アシスタントプロデューサー以外の仕事歴が見つからない人ばかり。
若手中心の布陣をベテラン1人が支える、という目論見だったのかもしれませんが、どうやら駄目だったみたいですね。

放送前に発表されていた作中のレーススケジュールとコースレイアウトが放送中に変更、差し替えされている

制作中に何か問題が起こってたんじゃないかと思わせる主要因のひとつ。

放送直前、2024年3月18日に各話のレーススケジュールと舞台となるコースのレイアウト図が発表されていたのですが、
2024年4月22日、第3話放送後に差し替えが告知されました。


差し替え前のスケジュール

https://x.com/HSE_Project_PR/status/1782227826227212563

元々発表されていたレイアウト図は実在のサーキットのレイアウトそのまんまのもので、
許諾が取れていない場合は権利関係の問題が発生しそうだったんですが、
やはりというか、差し替えになったわけです。

とはいえこれも制作に事情に詳しい人間がいれば回避できたはずの問題であり、
またよりにもよって放送中の発表であったということが、意図的に告知を遅らせて視聴者を騙そうとしていたのではないか?と悪い方向に捉えられかねない事態。

コース図変更のどさくさに紛れて第4話のレースが「無くなっている」のも気になるところ。
実際に放送された第4話では主人公が予選落ちで本番を走れなかった、という理由でレースがカットされました。

最後に

ハイスピにとってあまりにも偉大過ぎる大先輩であると言えなくもない、
新世紀GPXサイバーフォーミュラ」は、
1990年代のF1ブームに乗っかってレースものアニメとして制作され、人気を博したことで続編となるOVAシリーズも長年に渡って展開された作品であり、
現在もなおグッズ展開が続いているほど根強い人気のある、
ストーリーやキャラクターも魅力に溢れた伝説的な作品です

一方でハイスピは、一説では観戦客でもっとも割合が多いのが40代男性とも言われる、高齢化著しい日本のモータースポーツ業界に若い人を呼び込みたい、と必死の思いで自動車業界とモータースポーツ業界が協力して制作されたものの、送り出されたものはそんな思いなど露知らず、とにかく企画倒れによる放送中止さえ回避できればよかったでも言うような非常に残念な出来の作品になってしまいました。
この記事を書いている時点でまだ最終話は放送されていませんが、
ここから挽回することはGT-R LM NISMOがル・マンで優勝するくらい難しいでしょう。

ハイスピ見て冷えた心をサイバーフォーミュラ見て熱くして、
ハイスピとサイバーを交互に見ることでサウナのように「ととのう」ことで出来上がったのがこの怪文書になります
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


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